【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒

文字の大きさ
上 下
229 / 255

戦争?絶対にさせません!

しおりを挟む
私は今、馬車に揺られていた。
目の前には、ケルレーム公爵とアースが座らされている。
魔光縛を解いてはいないが、一応の監視役である。
2人は俯いているが、時折私を目だけで見ては、歯を食いしばっていた。
その視線に少し苛ついてきていたので、こちらから問うことにした。


「お2人とも、先程から私を見てきますが……何か?」

「いや、何もない……と言えば嘘になるな。いくつか質問がある。」

「どうぞ。」

「何時から我々の事を?」

「貴方のご子息が、『魔石の木』周辺へと侵入してきてからです。」

「ではアーリグェー公の子息、エフェンと調べたのか?」

「ええ、その通りですね。」

「どうやってあの資料などを調べた?我が公爵家に保管していたものもあったが…。」

「そうですね……魔法を使って、色々と。」

「詳しく教えてくれたまえ。」

「残念ながら、それは出来ません。」

「何故だっ!」

「私とエフェン様以外が知る必要がないからです。……実のところは、対策を立てられては面倒だという事ですが。」

「ちっ……。」

「っ……。」


私の言葉の意図を、アースは正確に読み取った様子。
口を開け、驚き固まっている。
先程の言葉はつまり、『どのような対策を立てようとも突破する』と言っているのと同じだ。
面倒程度なのだと、アースは理解したのだ。


「それともう一つ。」

「何だ…?」

「自分の味方が無実を立証し、解放してくれると思っている様ですが、それは無理ですよ?」

「……。」

「私とエフェン様が直接動いたのです。貴方に逃げ道などありません。私に調査方法などを聞き出し、次の為に対策しようと考えていたのでしょうけれど、次なんてものはないのですから。サキューセズ伯爵も、エフェン様の付き添いのもと、捕らえられている頃ですから。」

「彼もまた、調査対象だったということか……。」


今度は絶望に満ちた顔をしていた。
実に情けない顔だ。


「もう終わりです。企みは何もかも全て、私達が潰してあげましょう。ツィレイル王国は終わらせません。」

「何故この国に肩入れする?婚約者である殿下がおられるからか?」

「それもありますが……この国の情報が漏れる、或いは力が弱まることが意味するのは…。」

「戦争であろう?この国と、国力のある帝国との…な。」

「いいえ、それは間違いです。二国での戦争というのならば、まだ良い方でしょう。しかしそうなるはずがありません。この国を狙うのは、帝国以外の他国も同じ。」

「まさかっ……!?」

「ご想像の通りです。この国の奪い合いをきっかけに、世界大戦が起こりうる可能性があるのです。母国を発端に世界で戦争が起こることは避けなければなりません。」

「ふっ……。一体どこまで先が見えているのか…。本当に、実力も何もかも…底が見えんな……。」

(考えれば誰でも分かるよね…?エフェンも予測出来ていたし、三国の間に挟まれているこの国の力が弱まれば、誰だって攻めようと思うもの。)


公爵は目を瞑り、そのまま考え事をしてしまった。
アースも馬車の窓から外を見て、一切こちらを振り向かない。


(あと少ししかない学園生活が、この一件の所為でさらに減ってしまったよ……。2日に1回は出席していたとは言え、あと2ヶ月……もないくらいだから、これからは楽しまなきゃね!)


そう思い、ひとまず公爵とアースを送り届けたのだった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

もしも生まれ変わるなら……〜今度こそは幸せな一生を〜

こひな
恋愛
生まれ変われたら…転生できたら…。 なんて思ったりもしていました…あの頃は。 まさかこんな人生終盤で前世を思い出すなんて!

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。 夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。 自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。 すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。 訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。 円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・ しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・ はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世
恋愛
 異世界転生キタコレー! と、テンションアゲアゲのリアーヌだったが、なんとその世界は乙女ゲームの舞台となった世界だった⁉︎  えっあの『ギフト』⁉︎  えっ物語のスタートは来年⁉︎  ……ってことはつまり、攻略対象たちと同じ学園ライフを送れる……⁉︎  これも全て、ある日突然、貴族になってくれた両親のおかげねっ!  ーー……でもあのゲームに『リアーヌ・ボスハウト』なんてキャラが出てた記憶ないから……きっとキャラデザも無いようなモブ令嬢なんだろうな……  これは、ある日突然、貴族の仲間入りを果たしてしまった元日本人が、大好きなゲームの世界で元日本人かつ庶民ムーブをぶちかまし、知らず知らずのうちに周りの人間も巻き込んで騒動を起こしていく物語であるーー  果たしてリアーヌはこの世界で幸せになれるのか?  周りの人間たちは無事でいられるのかーー⁉︎

悪役令嬢はSランク冒険者の弟子になりヒロインから逃げ切りたい

恋愛
王太子の婚約者として、常に控えめに振る舞ってきたロッテルマリア。 尽くしていたにも関わらず、悪役令嬢として婚約者破棄、国外追放の憂き目に合う。 でも、実は転生者であるロッテルマリアはチートな魔法を武器に、ギルドに登録して旅に出掛けた。 新米冒険者として日々奮闘中。 のんびり冒険をしていたいのに、ヒロインは私を逃がしてくれない。 自身の目的のためにロッテルマリアを狙ってくる。 王太子はあげるから、私をほっといて~ (旧)悪役令嬢は年下Sランク冒険者の弟子になるを手直ししました。 26話で完結 後日談も書いてます。

強すぎる力を隠し苦悩していた令嬢に転生したので、その力を使ってやり返します

天宮有
恋愛
 私は魔法が使える世界に転生して、伯爵令嬢のシンディ・リーイスになっていた。  その際にシンディの記憶が全て入ってきて、彼女が苦悩していたことを知る。  シンディは強すぎる魔力を持っていて、危険過ぎるからとその力を隠して生きてきた。  その結果、婚約者のオリドスに婚約破棄を言い渡されて、友人のヨハンに迷惑がかかると考えたようだ。  それなら――この強すぎる力で、全て解決すればいいだけだ。  私は今まで酷い扱いをシンディにしてきた元婚約者オリドスにやり返し、ヨハンを守ろうと決意していた。

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました

宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。 しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。 断罪まであと一年と少し。 だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。 と意気込んだはいいけど あれ? 婚約者様の様子がおかしいのだけど… ※ 4/26 内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。

処理中です...