【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒

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会談②

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「『賢華』ヴァリフィアに、一つ問いたい。」


条約を締結した後の静まり返った室内で、コールシヤ帝国皇帝陛下はそう切り出した。
私は何を聞かれるのかと身構える。


「ヴァリフィアは、何故にそれだけの力を持った?強さを欲する者は大勢いる。しかし強すぎる力を持つ者は、時として人々を恐怖に陥れる。私は君が強さを求めた目的や理由が
知りたい。 」

(困った……非常に困った…。『自分が悪役令嬢だから、破滅しないよう力をつけました』とか、転生のことを話すわけにはいかないよね……。)


そう思い、隠しつつも納得出来るような理由を考える。


「そうですね……。私はずっと、夢中になれるものを探していました。本を読むことなどは夢中になれます。ですが私を満たしてくれるものではありませんでした。そんな時です。魔法というものに出会ったのは。
幸いにも、私の魔力量は多く、どれだけ魔法を練習しても魔力切れにはなりませんでした。それからは地道に魔力量を増やす特訓をしつつ、新しい魔法を創るなど、『魔法』というものに没頭したのです。気が付けば強くなっていましたが、今は大切な家族を守ることに使っています。」

「つまり、ヴァリフィアが強くなれたのは単に魔法が好きだったから……と?」

「おっしゃる通りです。」

「そしてその力を、今後とも家族のために使うというのか。」

「はい。」

「はははっ!」

「???」

「いや、君の意志を笑ったわけではない。ただ、好きでそこまで強くなれるとはな。何事も楽しむことが大切だと、知り合いも言っていた。まるでこの言葉の体現者だな。」


嘘はついていない。
楽しさのあまり、寝ても醒めても魔法の事しか考えなかった時もあった。
そして強くなり、家族……特にエイリジュを守るためにこの力を使おうと考えているのも事実だ。
とはいえ、卒業までは破滅しないよう動く。
動くとは言っても、悪さをしないというだけなのだが。
エフェンも私と似たようなものだ。
前世の記憶があるだけに、魔法は楽しさの塊。
さらに、ゲーム設定のおかげで最高のスペックがある。
利用しない手はないと思ったものだ。

国王陛下も皇帝陛下も納得したようだ。
事実とは言え思い付きの理由で、納得してくれて良かった。
深堀されることは最悪の事態なので、最終は脅そうかとも考えていたのだが。


「君の強さの理由は分かった。エフェンも似たようなものか?」

「ええ。強さの理由は同じです。付け加えるならば、『情報は武器』ということです。」

「なるほど。答えてくれたこと、感謝する。私からはその他に話すことはない。」

「余もないな。滞在期間は1週間もある。何かあれば言ってほしい。」

「承知した。」

「では……。二国会談を終了致します。カデリジア・ツィレイル国王陛下。そしてジエクア・フォン・コールシヤ皇帝陛下。夕食の準備が整っております。こちらへどうぞ。」


そうして、会談は終わったのだった。
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