【完結】私ですか？ただの令嬢です。

情報と情報(隣国・学園長視点)

「な……ぜ…。何故なのだ！？何故リゾン様が一瞬で負けるのだ！」

「落ち着いて下さい、学園長。」

「何か不正を行ったに違いない！ネイラ、今すぐフルシーネア学園の学園長の所に行くぞ！」

「落ち着いて下さい！彼女は不正などしておりませんよ！」

「何故分かる！？指を鳴らしただけで眠らせられるものか！リゾン様は常時、状態異常を無効化する結界を張っておられるのだぞ？！」

「それをも無詠唱で解除してのけたのです。まさか私も、国内2位の実力者を一瞬で倒されるとは、思ってもいませんでしたが。」

「くっ……それほどまでというのか、賢華ヴァリフィアは。」


隣国の学園教師達用の席で、交流試合を観戦していた。
国王陛下より、『賢華』ヴァリフィアの実力を確かめろとの命を受けたのだ。
交流会という形で試合をし、出来るだけ本気を出させる為に国内2位の実力者であるリゾン様に協力を要請した。
しかし目の前の彼女は、自身の予想を遥かに超える力を持っていた。


「彼女も、リゾン様が生徒ではないと気付いているでしょう。」


ふと、学園長補佐のネイラがそう言った。


「まさか。完璧に学生に扮しておられたではないか。」

「下をご覧下さい。」


そう言われ、代表生徒達の方を見ると、ヴァリフィアがこちらを向いていた。
我々を睨み、これ以上何もするなと忠告しているようだった。


「なっ……。」

「『賢華』の二つ名を持つだけのことはありますね。我々の狙いも知っているかと。情報屋と密かに呼ばれている、エフェンもいるのですから。」

「こちらの情報狙いは筒抜けだが、向こうの情報実力は全く分からない……か。」

「はい……。相手の方が、一枚上手だったようですね。ただ一つ、分かったことは……」
 
「何だ…？」

「彼女は、計り知れない強さを持っている……ということだけですね。」

「……その通りだな。陛下には、この国には絶対に手を出してはいけないと伝えよう。」

「それがよろしいかと。」


『計り知れない強さを持っている』、『この国に手出しをしてはいけない』と思わざる光景だった。
そしてそのことを国王陛下に伝えようと決める。
それがヴァリフィアの狙いだとは知らずに、彼らは動いてしまうのだった。