【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒

文字の大きさ
上 下
125 / 255

お話しましょう

しおりを挟む
「ご機嫌よう。何をなさっているので?」


私とディルジア、エフェンの3人を見て驚き固まる令嬢達。


「ヴァリフィア…様……。」

「ディルジア殿下に…エフェン様まで…。」

「え、えと、…ご機嫌麗しゅう。ヴァリフィア様こそ、何用でしょうか…。」

「先に質問をしたのは私ですわよ?貴女達は分をわきまえなさい。」

「「「ひっ……。」」」


私が睨むと、令嬢達は後ずさった。
何故か、隣でディルジアも顔をひきつらせている。
それほど怖かったのだろうか。
私にはどうでもいい事なのだが。


「もう一度聞くわ。何をしているのかしら?手に持っているのは、教科書のようだけれど。」

「え、えぇと……その……。」

「あ…あの!私の教科書が、メイナという人によって隠されたのです!ここに埋まっていると笑いながら言われ……探しに来ていたのですわ!」

「埋まっている……ね。」

「はい。酷いですわよね!」

「そうよねぇ!」

「全くだわ!」


これみよがしに、他2人の令嬢も口々に言い出した。
そんなことを、メイナがするはずはない。
念の為にエフェンを見たが、首を振った。
ならば話は早い。
追い詰めよう。


「そうなのね。では何故、その教科書はとても綺麗なのかしら?土も付いていないようだけれど。」

「そ、それは……深く埋まっていなかったのですわ!手ではらうと綺麗に落ちましたの。」

「そう。不幸中の幸いね。」

「その通りですわ!本当にメイナは酷いのですから……。」

「その教科書、見せていただけるかしら?私なら、魔法でもっと綺麗に出来るわよ。」

「いえ、ヴァリフィア様のお手を煩わせるなど…!」

「遠慮なさらないで。私が綺麗にして差し上げたいだけだから。ご迷惑かしら?」

「えっと……その……。」


(普通なら、これ以上遠慮することは失礼となる。まぁ分かっていて、言っているんだけどね……。)


エフェンは私の狙いを分かっているようで、口元が少し笑っている。
前世の記憶があるだけに、こういった場面は定番だ。
次に私が言う言葉は決まっている。


「それとも……何か見せられない理由でもあるのかしら?先程から、名前を書いているはずの場所を隠しているようだけれど。」

「っ…!」

「「……。」」

「はぁ……もう分かっているの。メイナへの嫌がらせ、全て貴女達がしたのでしょう?」

「そ、そんなこと……」

「ないとでも?貴女達がした事……私達にばれないとお思いで?…もう正直に言いなさいな。」

「っ……。」

「も…申し訳……ありません…。」

「……。」


令嬢3人は、誤魔化すのを諦めたようだ。
自分達の非を認めた。
エフェンが一歩前に出る。


「この学園に在籍している間は、貴族だ平民だなど関係ない。等しく学園生だ。それも、メイナは同じクラスメイト。こんな事をしていると他の生徒達が知れば、君達の評判は家名と共に落ちるだろうね。」

「「「……。」」」

「敬語や気を遣えと言っている訳では無い。あくまでクラスメイトとして、友人として、接すれば良い。」

「平民と過ごすなど、気分が悪くならないのですか?!」


その言葉に、私は意味が分からないと思った。
少し腹が立った。


「まずはその考え方から改めることね。私は平民がどうとか思ったことはないわよ。」

「何故ですか!?」

「生まれが私達とは違うだけで、同じ世界に生きている。もし私が平民だった場合、貴女はメイナと同じように扱うでしょう?」

「それは……。」

「ともかく、メイナは私達の友人よ。これ以上、言わなくても分かるでしょう?」

「「「はい…。」」」

「次、またメイナに何かあった場合は……ね?」

「「「も、もうしません!お許しを!」」」

「ええ。くれぐれも、頼むわよ。」


笑顔でそう言い残す。
私達の友人ということは、メイナに何かあった場合、私達にも無礼を働いたことになる。
令嬢達はそれをよく理解したようだ。
私は身を翻しその場を去る。
勿論、エフェンとディルジアもついてきている。


「素敵な笑顔だったよ。令嬢達の顔が青ざめていた。ディルも固まっていたな。くくくっ。」

「それ、褒めてないよね?」

「さぁ?」

「エフェン?君、今かなり失礼なこと言ったけど?」

「あはは、気のせいさ。さて戻ろう。これで彼女が嫌がらせをされることはなくなったんだからさ。」

「ええ。一安心ね。」


そうして、私達はホームルーム前に、クラスルームへと戻ったのだった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

もしも生まれ変わるなら……〜今度こそは幸せな一生を〜

こひな
恋愛
生まれ変われたら…転生できたら…。 なんて思ったりもしていました…あの頃は。 まさかこんな人生終盤で前世を思い出すなんて!

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。 夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。 自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。 すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。 訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。 円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・ しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・ はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世
恋愛
 異世界転生キタコレー! と、テンションアゲアゲのリアーヌだったが、なんとその世界は乙女ゲームの舞台となった世界だった⁉︎  えっあの『ギフト』⁉︎  えっ物語のスタートは来年⁉︎  ……ってことはつまり、攻略対象たちと同じ学園ライフを送れる……⁉︎  これも全て、ある日突然、貴族になってくれた両親のおかげねっ!  ーー……でもあのゲームに『リアーヌ・ボスハウト』なんてキャラが出てた記憶ないから……きっとキャラデザも無いようなモブ令嬢なんだろうな……  これは、ある日突然、貴族の仲間入りを果たしてしまった元日本人が、大好きなゲームの世界で元日本人かつ庶民ムーブをぶちかまし、知らず知らずのうちに周りの人間も巻き込んで騒動を起こしていく物語であるーー  果たしてリアーヌはこの世界で幸せになれるのか?  周りの人間たちは無事でいられるのかーー⁉︎

悪役令嬢はSランク冒険者の弟子になりヒロインから逃げ切りたい

恋愛
王太子の婚約者として、常に控えめに振る舞ってきたロッテルマリア。 尽くしていたにも関わらず、悪役令嬢として婚約者破棄、国外追放の憂き目に合う。 でも、実は転生者であるロッテルマリアはチートな魔法を武器に、ギルドに登録して旅に出掛けた。 新米冒険者として日々奮闘中。 のんびり冒険をしていたいのに、ヒロインは私を逃がしてくれない。 自身の目的のためにロッテルマリアを狙ってくる。 王太子はあげるから、私をほっといて~ (旧)悪役令嬢は年下Sランク冒険者の弟子になるを手直ししました。 26話で完結 後日談も書いてます。

強すぎる力を隠し苦悩していた令嬢に転生したので、その力を使ってやり返します

天宮有
恋愛
 私は魔法が使える世界に転生して、伯爵令嬢のシンディ・リーイスになっていた。  その際にシンディの記憶が全て入ってきて、彼女が苦悩していたことを知る。  シンディは強すぎる魔力を持っていて、危険過ぎるからとその力を隠して生きてきた。  その結果、婚約者のオリドスに婚約破棄を言い渡されて、友人のヨハンに迷惑がかかると考えたようだ。  それなら――この強すぎる力で、全て解決すればいいだけだ。  私は今まで酷い扱いをシンディにしてきた元婚約者オリドスにやり返し、ヨハンを守ろうと決意していた。

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました

宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。 しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。 断罪まであと一年と少し。 だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。 と意気込んだはいいけど あれ? 婚約者様の様子がおかしいのだけど… ※ 4/26 内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。

処理中です...