【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒

文字の大きさ
上 下
97 / 255

上手く説明をしましょう

しおりを挟む
「任務内容は、書類にまとめておいた。読んでくれ。」

「ありがとうございます。」

「拝見しよう。」


そこに記されていたのは、とある貴族に仕えている者からの、密告内容だった。
私はエフェンと顔を見合わせる。
この書類から、大体の予想がつくからだ。


「この密告内容は、事実なのでしょうか。」

「それを確かめる為に、密告者に扮して情報を集める。」

「つまり、その貴族に仕えている者に成り代わり、潜入調査する…という事だね。」

「その通り。そして潜入役をエフェンに、ヴァリフィアも別の手段で邸を調査してもらいたい。」

「承知致しました。」「分かったよ。」


私はどのような役回りかと身構えていたが、証拠集めという事は、以前と同じ方法だろうと考える。
そしてその予想は当たりだった。


「私はどのように動けば良いのでしょう?」

「ヴァリフィアには、不可視化の魔法を使い、邸内にあるであろう証拠資料を、以前使った魔道具で記録してほしい。」

「一つ、よろしいでしょうか。」

「何だい?」

「普通に、不法侵入では…?」

「そんな事、今更じゃないか。」

「そうそう。ディルの言う通りだと思うよ。それに、ばれなければ問題はないだろう?くくくっ。」

「えぇ……。」


(軽いなぁ。エフェン彩菜なんて笑ってるし…。まぁ2人の言うことも、間違ってはいない……のかな?)


しかし、不可視化の状態で特定の物を探し出すのは、場所が分かっていないと危険だ。
気付かれる可能性がある。
そこで頼み事をした。


「エフェン。潜入調査の際に邸内を調べ、フロアマップ化してもらえるかしら?」

「了解だ。特に、執務室の場所とかかな?」

「ええ。記録が保管された部屋でも構わない。」

「分かった。任せてくれ。」

「フロアマップ化…とは?」


聞き馴染みの無い言葉に、ディルジアが反応する。
それは何だという疑問の顔だ。


「ええ…と、フロアマップとは…。」

「私がご説明させていただきます。……フロアマップとは、建物内の各部屋の場所を記した地図の事です。」

「おぉ、流石は『賢華』ヴァリフィアだね。説明が上手いよ。」

「エフェンがお困りのようだったので。」

「そう睨まなくても良いじゃないか。」


ディルジアは「成程…。」と頷いている。
しかし、顔を上げると笑顔で問いかけてきた。


「ちなみに、リフィとエフェンはどこでその言葉を?」

「それは…。」

「他国の地で書かれたという書物に、記されておりました。「建物内の地図」などという呼び方は、長くて面倒だと思ったので、違う言葉はないかと探した事があるのです。」

「そうなのか。」

「つい口にしてしまったのですが、まさかエフェンに伝わるとは思っていませんでした。」


(彩菜は、嘘をついたり説明をするのが苦手なんだね……。これからも友達として、フォローしてあげないと!)


「元日本人どうし」としての仲間意識が高い、ヴァリフィアである--
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。 夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。 自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。 すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。 訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。 円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・ しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・ はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

成り上がり令嬢暴走日記!

笹乃笹世
恋愛
 異世界転生キタコレー! と、テンションアゲアゲのリアーヌだったが、なんとその世界は乙女ゲームの舞台となった世界だった⁉︎  えっあの『ギフト』⁉︎  えっ物語のスタートは来年⁉︎  ……ってことはつまり、攻略対象たちと同じ学園ライフを送れる……⁉︎  これも全て、ある日突然、貴族になってくれた両親のおかげねっ!  ーー……でもあのゲームに『リアーヌ・ボスハウト』なんてキャラが出てた記憶ないから……きっとキャラデザも無いようなモブ令嬢なんだろうな……  これは、ある日突然、貴族の仲間入りを果たしてしまった元日本人が、大好きなゲームの世界で元日本人かつ庶民ムーブをぶちかまし、知らず知らずのうちに周りの人間も巻き込んで騒動を起こしていく物語であるーー  果たしてリアーヌはこの世界で幸せになれるのか?  周りの人間たちは無事でいられるのかーー⁉︎

悪役令嬢はSランク冒険者の弟子になりヒロインから逃げ切りたい

恋愛
王太子の婚約者として、常に控えめに振る舞ってきたロッテルマリア。 尽くしていたにも関わらず、悪役令嬢として婚約者破棄、国外追放の憂き目に合う。 でも、実は転生者であるロッテルマリアはチートな魔法を武器に、ギルドに登録して旅に出掛けた。 新米冒険者として日々奮闘中。 のんびり冒険をしていたいのに、ヒロインは私を逃がしてくれない。 自身の目的のためにロッテルマリアを狙ってくる。 王太子はあげるから、私をほっといて~ (旧)悪役令嬢は年下Sランク冒険者の弟子になるを手直ししました。 26話で完結 後日談も書いてます。

【完結】氷の令嬢は王子様の熱で溶かされる

花草青依
恋愛
"氷の令嬢"と揶揄されているイザベラは学園の卒業パーティで婚約者から婚約破棄を言い渡された。それを受け入れて帰ろうとした矢先、エドワード王太子からの求婚を受ける。エドワードに対して関心を持っていなかったイザベラだが、彼の恋人として振る舞ううちに、イザベラは少しずつ変わっていく。/拙作『捨てられた悪役令嬢は大公殿下との新たな恋に夢を見る』と同じ世界の話ですが、続編ではないです。王道の恋愛物(のつもり)/第17回恋愛小説大賞にエントリーしています/番外編連載中

強すぎる力を隠し苦悩していた令嬢に転生したので、その力を使ってやり返します

天宮有
恋愛
 私は魔法が使える世界に転生して、伯爵令嬢のシンディ・リーイスになっていた。  その際にシンディの記憶が全て入ってきて、彼女が苦悩していたことを知る。  シンディは強すぎる魔力を持っていて、危険過ぎるからとその力を隠して生きてきた。  その結果、婚約者のオリドスに婚約破棄を言い渡されて、友人のヨハンに迷惑がかかると考えたようだ。  それなら――この強すぎる力で、全て解決すればいいだけだ。  私は今まで酷い扱いをシンディにしてきた元婚約者オリドスにやり返し、ヨハンを守ろうと決意していた。

婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました

宵闇 月
恋愛
異世界に転生したらスマホゲームの悪役令嬢でした。 しかも前世の推し且つ今世の婚約者は既にヒロインに攻略された後でした。 断罪まであと一年と少し。 だったら断罪回避より今から全力で奪い返してみせますわ。 と意気込んだはいいけど あれ? 婚約者様の様子がおかしいのだけど… ※ 4/26 内容とタイトルが合ってないない気がするのでタイトル変更しました。

処理中です...