【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒

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エフェンは意地悪です…

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ディルジアと共に移動した先は、とある貴族領の近くに建つ小屋だった。


「前にある小屋は今、誰にも使われていない。この中で内容を話しましょう。」

「「分かりました。」」


私達は中へと入る。
今にも壊れそうな、古びた机と椅子があった。


「ええ……と、殿下…。」

「どうかしましたか?」

「この椅子に……?」

「そうですが、何か問題でも?」

「いえ……、一言申し上げると、その椅子に座ると壊れますよ。」


(一国の王子が、何の迷いもなくボロボロの椅子に平然と座ろうとするなんて…。他のご令嬢達に見られでもしたら、どんな反応をされるか。)


そう思いながら、隣を見ると……


「っくくく…。」


エフェンが必死に笑いを堪えている……否、少し声が漏れ出ていた。
こんな行動をする王子など、普通はいないからだ。
乙女ゲームの時の彼を知っているが故に、さらに笑えてくるのだろう。


「エフェン様、どうなされたのですか?」


笑っている理由を分かった上で、笑顔で問いかける。


「っくく……い、いえ。何も。それで殿下。本当に座るのですか?」

(私の質問を流した…!)

「そうですね……流石に壊れると困りますね。」

「では、ヴァリフィア令嬢に直してもらうのはどうでしょう。時戻しを使えば、新品同様になるかと。残念ながら、私は使えませんがね。はははっ。」

「確かに、エフェンは専門外でしょうね。ヴァリフィア、頼めますか?」

「殿下は人使いが荒いですね…。」

「まぁ、そう言わずに。座れないのは困るでしょう?」


エフェンがにやりと笑いながらこちらを見てくる。
私も恨めしそうにエフェンを見た。


(話を流された挙句、私に椅子を直させるようディルジアを誘導したよぉ……。)


仕方ないと割り切り、私は机と椅子の両方に『時戻し』をかけた。
すると綺麗な木製の家具へと戻っ変化した。


「助かりました、ヴァリフィア。」

「ありがとう。」

「いえ、お構いなく。」

「殿下、今は殿下を除くと我々2人のみです。普通のディルジア殿下でも構いません。ねぇ、ヴァリフィア令嬢?」

「ええ。私も問題ありません。」

「じゃあそうさせてもらおうかな。」


ディルジアが砕けた感じになる。
エフェンといる時も、私と同じ対応だったようだ。
エフェンもディルジアに対し、接し方を変えているようだ。

「エフェン様。」

「何かな?」

「私の事はどうか呼び捨てで、お願い致します。貴族位は私の方が下ですから。」

「じゃあ、私の事も呼び捨てで構わない。」

「それは…。」

「勿論、他の方がいない時のみでだ。敬語も不要だぞ。」

「……分かりました。…そうさせてもらうわ。」

「エフェンには、すんなりと従うんだな…。」

「殿下と我々では格が違うのですから、言われてもお断りするのは当然かと。」

「…そういうことにしておこう。」


それぞれの呼び方・接し方が確立した。
そして、私達は先程魔法をかけた椅子へと座る。


「さて、本題に入りましょうか。」

「はい。」「ええ。」


重要な任務内容の話が、開始される--
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