【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒

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殿下が何かを心配しています…?

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日が沈む少し前、私は瞬間移動で寮の近くへと転移した。
数分歩くと寮が見えてきたのだが、入口の前によく知っている人物がいた。
ディルジアだ。
後ろにはサールズとエールズも控えている。


「ヴァ・リ・フィ・ア?」

「あら、殿下。こんにちは。こんなところで、どうなさったのですか?」

「貴女を待っていたのですよ…?」

「私を…?」


何故か少し怒りのこもった声で、しかし笑顔を向けてくるディルジア。
普通に謎だった。
何故怒っている声なのか、それなのに何故笑っているのか。


「ええ。貴女にスフレ先生が呼んでいたと伝えましたよね。」

「はい。」

「ですが、伝えた後に考えたのですよ。あれは本当にスフレ先生だったのか…と。」

「……?」

「いつもと雰囲気が少し違ったように思えたので、待ち合わせの場所でこっそり見ていると、2人が消えたのですよ。」

「はい……。」

「演習場近くでの待ち合わせにもかかわらず、中に入らない事に疑問を持ったので、よく考えてみたのです。
そして思い至った結論が、あれはスフレ先生ではなくエフェンなのではないか……と。」


ディルジアの予想は大当たりだった。
しかし、認めると婚約者がいるのにと面倒な事になりかねないので、適当に答えることにした。


「確かに、スフレ先生ではありませんでした。」

「やはり……。では誰だったのですか?」

「私に魔法の話を聞きたいと言う、学者を名乗る女性の方でしたね。怪しまれないように、スフレ先生に変身していたようです。」

「それは……ヴァリフィア独特の魔法を、その怪しげな女性学者に教えて良かったのですか?」

「問題はないと判断しております。与えても良い情報のみですし、意気投合して今まで話していたのですから。」

「貴女がそう言うなら、私は構いませんが……。」


(事実は違うけど、中身は女性だから完全な嘘というわけではないよね!)


ディルジアは、上手く騙されてくれたようだった。
スフレだったと言うと、本人に確認をされた場合、エフェンが変身魔法をかけた姿だったと認めることになる。
だからこそ、違う人だったと認めつつ、ディルジアが確認の取れない人物にする必要があった。
そこで、『魔法を研究している学者』という嘘の人物を伝えることにしたのだ。


「まさか、貴女ヴァリフィアが、他の男とこんな時間まで話し込んでいるわけがないですよね…?」

「勿論です。」

「なら良いのですよ。少し心配になっただけですから。」

「殿下、ヴァリフィア様にそのような心配は無用と、申したではありませんか。」

「そうですよ殿下。ヴァリフィア様は真面目な方なのですから!」

「エールズ、お前は黙っていろ。」

「酷いじゃないか、サールズ兄さん。」


相変わらず仲が良い双子だ。
この攻略対象である双子からは、『初めはラーノンス様』と呼ばれていたのだが、何回か会う内に『ヴァリフィア様』と呼ばれるようになった。
ディルジアと会う度に2人もいるので、あっている回数は多い。


「まぁ2人の言うことも、もっともだと思いますよ。ヴァリフィア、要件はそれだけです。では。」

「は、はい……失礼致します。」


(とりあえずエフェンだとばれなくて良かった…。)


ほっと胸を撫で下ろすヴァリフィアなのだった。
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