【完結】私ですか？ただの令嬢です。

正体は……

「ヴァリフィアは覚悟が出来ていたんだな……。」


どこまで先を読んでいるのかと思うディルジア。
ヴァリフィアは引き締まった表情でいる。


「……。」

「……。」


「殿下、お話は以上でしょうか。」


沈黙を破るように、私は顔を緩めて聞いた。
ディルジアは頷き、部屋を出る為に扉へと向かう。
そして去り際に振り向いた。


「ヴァリフィア、伝えるのを忘れていたよ。」

「どうなさいましたか？」

「『明日の放課後、演習場の北側で待つ』と、スフレ先生が言っていたよ。」

「承知致しました。ありがとうございます。」

「ではまた明日、学園で。」

「はい。」


ディルジアを見送った後、私は自室へと戻った。


(スフレ先生、何の用事だろう？演習場ということは、また地下で何かするのかな。)


しかし、ヴァリフィアが考えていたようなことではなかった。


翌日の放課後、私は指定された『演習場の北側』へと向かった。
するとスフレが待っていた。


(学園が終わったのはほんの少し前だよね？それに、先生も午後のホームルーム中には居たし……。何でもうここに居るんだろう？)


ホームルーム終了後、教師は教員室へと戻る。
それから来たとしても、私より早いのはおかしいのだ。
瞬間移動ならば有り得なくもないが、わざわざ少しの距離に対して使うだろうか。
疑問を抱きつつ、声をかける。


「スフレ先生。」

「ああ、来たかヴァリフィア令嬢。」

「はい…。」

「場所を移そう。」

「どこに行くのですか？」


スフレは何も言わずに指を鳴らす。
すると私ごと学園の使われていない部屋へと、瞬間移動した。


「……貴方は誰でしょうか。スフレ先生ではありませんよね…？」


私は着いた途端にそう言った。
すると『スフレ？』が少し笑い、


「ふっ、気付いていたか。」

「ええ。どう考えても、先生がいる時間とは思えなかったので。」

「頭が回るというのは本当か。……では。」


その瞬間、スフレから姿が変わった。
どこかで見た事があるような顔だった。


「初めまして。私の名は『エフェン・アーリグェー』。アーリグェー公爵家の次男だ。」

「初めまして。知っているかと思いますが、私はヴァリフィア・ラーノンスと申します。ラーノン侯爵家の長女です。……？」

「どうかしたか？」


(エフェンって、攻略対象じゃん！変身魔法が得意で、様々な姿で潜入調査も得意のもの……っていう設定だったね。でも……ゲームの頃と少し性格が違うような？)


5人目の攻略対象が突然現れた。
しかし、どこか違和感を感じるのだった－－