【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒

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王城では--(王子視点)

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ヴァリフィアが魔道具を製作している頃--


「さて、今から行こうか。」

「殿下、どちらへ?」

「昨日話したと思うけど、城内散策だよ。」

「左様ですか。行ってらっしゃいませ。」

「ああ。行ってくるよ。」


ディルジアは、誰も付いてきていないことを確認し、目的の部屋へと向かう。
金銭関係の報告資料が保管されている場所だ。


(よし、誰も居ないな…っと。)


資料が保管されている部屋は、警備が厳しくない。
理由は簡単で、重要資料は別の部屋に厳重に保管されているからだ。
この資料保管室には、それほど重要な資料はないということになる。
しかし今回の件に関しては、重要な資料と化す。

ディルジアは資料を見つけ出し、1枚ずつ《撮影魔道具マジックカメラ》に収める。


「穴から覗いて、枠内に入るように……これでボタンを押すんだったね。」


「パシャッ!」というカメラ特有の音はしなかった。
ヴァリフィアが邪魔になると考え、イメージしなかったからだ。


「うん、上手く撮れた。良い感じだね。早く終わらせて、部屋に戻らないと。」


かかった時間は5分程度。
誰にも気付かれることなく、ディルジアは第2王子の部屋へと戻る。
部屋の入口付近で、ディルジア付きの侍女に会った。


「殿下、お早いお帰りで。何かありましたか?」

「何も無いさ。イユ姉上が中庭にいたから、少し早く戻ってきただけ。」

「殿下は第1王女であらせられる、シュイルユ王女殿下が苦手でしたね。」

「ああ。捕まったら時間の無駄になってしまうよ……。」


第1王女シュイルユ・ツィレイルは、姉弟達を猫可愛がりしている。
捕まると1時間は抜け出せないというのが、王子や王女達の中で言われていた。
使用人達も知っている事実だ。

シュイルユがいたのは本当なので、嘘はついていない。


「そうそう。」

「どうかなさいましたか?」

「明日はラーノンス侯爵家へと出向くよ。」

「承知致しました。そのように手配しておきます。」

「頼むよ。」


ディルジアは少しにやける。
明日が楽しみだからだ。


(僕は君の頼みを果たしたよ。さて、次は何を見せてくれるかな?ふふふ……楽しみだ。)


侍女は、上機嫌なディルジアに構わなかった。
ヴァリフィアと出会ってからは、よくある事だからだ。


(退屈そうだった殿下が、ヴァリフィア様と出会われてから、本当に変わりました。それはもう、毎日が楽しのそうで……。)


侍女はまだヴァリフィアに会ったことがなかった。
王城でディルジアの世話をするだけだからだ。
故に、侍女は思う。


(1度で良いから、ヴァリフィア様にお会いしたいものですね。)
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