【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒

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鍛える、そして隠す(予定の)実力

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私が前世でプレイしていた、大好きな乙女ゲーム。
ここがその乙女ゲームの世界。
魔法ありのこの世界では、前世で暮らしていた世界とは全く違う。

ゲーム内キャラクター『ヴァリフィア』は、悪役令嬢でありヒロインを様々な方法で虐める。
それは5人の攻略対象の、全てのルートを通ってもヒロインを虐め、最後には「自殺」「処刑」「他殺」となる。
つまりは死ぬ運命しかない、という事だ。

そもそも攻略対象に会わず、ヒロインにも嫌がらせをしなければバッドエンドは回避出来ると考えた私。
しかし貴族という立場にいる以上、攻略対象に会うのは必然であった。
更にはその攻略対象と婚約が内定してしまった……。

第2王子ディルジアとの婚約が内定した日の夜。
私は屋敷をこっそりと窓から抜け出していた。


(こうなればもう、悪役令嬢のステータスを使って、何時でも逃げれるようにしといてやる!)


悪役令嬢は身体能力が高く魔力が多い為、魔法もかなり強いものが扱える、という設定だ。
それが故に、危険視され処刑されてしまうのだが。

屋敷にあった魔法書を読み、種類を理解する。
攻撃魔法に防御魔法、浮遊魔法や身体強化魔法など、イメージ次第で魔法が発動できるため、次々と習得ができた。
前世の知識も役に立った。


(魔法書には詠唱とイメージが大切とあったけれど、イメージがはっきりしていれば、簡単に魔法が使える。詠唱なんて必要ない。魔力が足りなければ発動しないけれど、幸い悪役令嬢ヴァリフィアには膨大な魔力がある。魔力の枯渇を心配する必要がないっ!)


貴族には魔力を持つ者が多く、その量次第でどれだけの魔法が使えるかが決まる。
逆に平民からは魔力を持って産まれるものが居なかった。
ヴァリフィアには魔力量が多いと言うだけで、特別記憶力が良い訳でもない。


(ヴァリフィアは、ヒロインに嫌がらせをする為だけに、魔法の詠唱文を覚えたのよねぇ……。どれだけ嫉妬したんだか。まったく、能力の無駄使いよね。)


そんな事を思いながら、難しい魔法も難なく使う事が出来た。

「様々な魔法を使える事」、これは私だけの秘密にしようと考えた。
初級魔法しか使えない令嬢を装うつもりだ。

しかし、そう上手くは行かないのがヴァリフィアの人生だ。
そして、これからヴァリフィアは「ただの令嬢です。」、と言わざるを得なくなる状況が増えていく---
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