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第40話

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「セレス姉様。その……私がヴィアルスに対し行ったことについては…」


私はあえて遠回りな言い方ではなく、率直かつ恐る恐る聞いてみた。素直に聞いた理由は、こちらに嘘をつくつもりは無いという誠意を示すためだ。それはセレス姉様も理解してくれた様子。


「……やり過ぎでは?と思うけれど、シアが私の為にしてくれたことだから、こちらから何かを言うつもりは無いわ。」
「……。」
「私はね、正直に言うと嬉しいの。」
「えっ…。」


セレス姉様の予想外の言葉に、思わず声が出てしまった。
心優しく、誰かが傷付くのを何よりも嫌う姉様が、私が行ったことに対し『嬉しい』と言ってくれるなんて…。
しかし何故そう思ってくれているのだろうか…。その答えは、続く姉様の言葉で理解出来た。


「誰かに復讐するとか、やり返したいって気持ちが私には持てない。甘いって言われるかもしれないけれど、怒ったりも出来ないわ…。」
「それは…どうしてなのですか?」
「……もし私が復讐したら、この人はどんな気持ちになるのだろうか…と考えてしまうのよ……。」
「…つまりされた側に同情してしまうのですね…。」


相手に同情するなど、実に姉様らしいと思った。私は、復讐されるならばそれほどの理由があると考えるので、されても仕方がないと思う。
だが姉様は違った。いや、違うと分かってはいたが、改めて姉様自身の言葉で心の内を知ることが出来た。
……本物の善人だ。


「そんな私の代わりに怒り、行動を起こしてくれて嬉しかったの。私が持っていない部分を持っているシアを、好ましくあり、羨ましいとも思っているわ…。」
「セレス姉様……。」
「でも無理は駄目よ?私の為に動いた結果、貴女が傷付く方が私は嫌なの。だから今後私の身に何があろうとも、シアが気にする必要は無いわ。自分の身を第一に、ね?」


本当…、人の心配ばかりして…。しかし、だからこそそんな姉様が私は好きだ。守ってあげたくなってしまう。
藤の花のような優しい瞳。さらに風に靡く白銀の髪が、姉様の笑顔と相まってより美しさを際立たせている。
このような身も心も素晴らしい人が、あの元王子の所為で薄暗い牢に入れられたなど……。
今後は絶対に5年前のようなことが起きないようにしなければ。


「分かりました。ですが何かあれば、遠慮なく仰ってください。何時でも私は姉様の味方ですからっ。」
「シアはまるで私の従者ね……。でもありがとう。」


微笑んでお礼を言う姉様。
もし私が長女ではなかったならば本当に侍女などの従者になっても良かった。しかし姉様は冗談と親しみを込めて言ってくれただけなので、本気にすれば困らせてしまいそうだ。
それにお義父様にも養子にしてもらったという借りがある。ヘクト義兄さんの手伝いだけでは返せないだろう。

その後、私とセレス姉様は久しぶりの会話を楽しんだ。

明日はヴィアルスとミフェラの牢に行くつもりだ。
どんな反応を見せるのだろうか……、楽しみだ。
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