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第34話

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「あ、お姉様っ!」
「……。」


私の名を呼んだのはミフェラだ。地下牢を出ようと歩いていたところを呼び止められた。
特に話す気にもなれないのだが…。


「お姉様、あの時乱暴なことをしてごめんなさい。それに私の仕事も任せてしまいましたわ…。でもそれも全部、お姉様の為だったのです。私は──」


急に話しかけてきたと思ったら、一方的に話し出すミフェラ。同情を誘おうとしてきたのだ。だがそんな手に乗るはずがない。
私はつらつらと嘘を並べていくミフェラを、黙って横目で見ていた。
彼女の言い分はこうだ。
婚約破棄され、落ち込んでいたところに追い打ちをかけるように侯爵家を追放されたを、ずっと心配していた。そんな時、ヴィアルスからあることを提案された。それは姉を王城で匿い、その対価として仕事をさせてはというものだった。
提案に乗ったミフェラは、ヴィアルスと共にすぐにでも動き、後のことは知っての通りだ。


「──だから私とヴィアルス様は、無理矢理にでもお姉様を連れて帰ろうとしましたの。手荒な手段になってしまったことは本当に申し訳ありませんわ…。」


頭だけを下に向け、ミフェラはそう言った。
ミフェラの場合は後悔のようだ。ヴィアルス同様、私に対する謝罪の意は微塵も無い。だが他にも方法があったのではないか、という顔をしている。
誰にも気付かれないように私を利用する方法を考え直しているのだろう。既に捕まっているのだから、どれだけ考えても徒労に終わるというのに。


「…ミフェラ。あなたが殿下の行いに反対していれば、少し見直したのだけれどね。」
「え……そ、それはどういう意味ですの?」


絶対に有り得ることではなかったが、ミフェラがヴィアルスの暴挙を止める可能性もあった。そうなれば私達の計画は御破算だ。
そしてこの場合、最終的にミフェラが失墜した際に慈悲を与えようとも思っていた。
だがそもそもヴィアルスを止めることなど絶対にないので、計画が変わることはなかったが…。


「あなたが知る必要は無いわ。そこで反省していなさい。」
「ちょ、ちょっと!お姉様!?」


ミフェラに『お姉様』と呼ばれるだけで虫唾が走る。
この後ヴィアルスとミフェラは国王陛下に謁見し、侯爵家以上の貴族達の前で判決を言い渡される。
私とお義父様の想像通りの結果になるだろう。
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