上 下
32 / 46

第31話

しおりを挟む
「牢に入れられた気持ちはどうですか、殿下?」


私が向かったのは地下牢だ。それもヴィアルスが投獄されている場所…。
近くにはミフェラも投獄されているが、私とヴィアルスの会話は聞こえない程度に離れている。


「…無能が何の用だ。」
「様子を見に来ただけですよ。」


ヴィアルスは大層機嫌が悪いと見て分かる表情をしていた。
それにまだ無能呼ばわり。余程、私のことを認めたくないのだろう。


「何故逃げたのですか?」
「……ミフェラに逃げた方が良いと言われた。私もそれに賛同したまでのこと。」
「つまり罪に問われ、牢に入れられるくらいならば逃げた方が良いと考えたのでしょうね。」
「……。」


やはりミフェラからだったようだ。想定外の事をされたので少し警戒していたが、私の言葉を否定しないということは推測が当たっている証拠だ。
罪を犯しておいて逃げようなどという狂言を発するとは…。しかしその程度の頭しか無いのだろう。
そして今度はヴィアルスが、話の流れを変えるかのように私に聞いてきた。


「ここに入れられる前にルーズフィルト公爵から聞いたが、彼の養子になったそうだな。」
「公爵様が話したのですね…。殿下の仰る通りです。今の私は、公爵家長女レイシア・ルーズフィルトとなっています。」
「……私は平民ではなく、貴族…、それも公爵の養女を誘拐したということになるのか。」
「ええ。公爵家を敵に回す行いですね。」
「チッ…。」


舌打ちをし、より不機嫌になるヴィアルス。
彼は既にエリーユア公爵家も敵に回している。公爵家は王国に3つしかなく、それぞれが王家に次ぐ力を有しているのだ。そんな公爵家の2つから敵視されては、もはや味方となる貴族はいないも同然だった。


「……貴様、まさか私をこのような目に遭わせる為に、あの時あまり抵抗しなかったというのか…?」


ヴィアルスが言っているのは、私を誘拐した時のことだろう。少しは頭が回るようだ。
だが今更気付いても遅い。それにまだ刑が確定していない時点で、答えを言うつもりもない。


「…何のことでしょう?ヴィアルス殿下が無理矢理私を連れ去ったのではありませんか。」
「……。」
「では私はもう行きますね。」


何か言いたげな顔をしていたが、言葉を発してくる前に私はその場を立ち去った。
ミフェラとヴィアルスの2人は、明日にも刑が確定するだろう。国王陛下が下すので、厳格な結果になるはずだ…。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】ブスと呼ばれるひっつめ髪の眼鏡令嬢は婚約破棄を望みます。

はゆりか
恋愛
幼き頃から決まった婚約者に言われた事を素直に従い、ひっつめ髪に顔が半分隠れた瓶底丸眼鏡を常に着けたアリーネ。 周りからは「ブス」と言われ、外見を笑われ、美しい婚約者とは並んで歩くのも忌わしいと言われていた。 婚約者のバロックはそれはもう見目の美しい青年。 ただ、美しいのはその見た目だけ。 心の汚い婚約者様にこの世の厳しさを教えてあげましょう。 本来の私の姿で…… 前編、中編、後編の短編です。

どうでもいいですけどね

志位斗 茂家波
恋愛
「ミラージュ令嬢!!貴女との婚約を破棄する!!」 ‥‥と、かつての婚約者に婚約破棄されてから数年が経ちました。 まぁ、あの方がどうなったのかは別にどうでもいいですけれどね。過去は過去ですから、変えようがないです。 思いついたよくある婚約破棄テンプレ(?)もの。気になる方は是非どうぞ。

誰にも信じてもらえなかった公爵令嬢は、もう誰も信じません。

salt
恋愛
王都で罪を犯した悪役令嬢との婚姻を結んだ、東の辺境伯地ディオグーン領を治める、フェイドリンド辺境伯子息、アルバスの懺悔と後悔の記録。 6000文字くらいで摂取するお手軽絶望バッドエンドです。 *なろう・pixivにも掲載しています。

皆さん勘違いなさっているようですが、この家の当主はわたしです。

和泉 凪紗
恋愛
侯爵家の後継者であるリアーネは父親に呼びされる。 「次期当主はエリザベスにしようと思う」 父親は腹違いの姉であるエリザベスを次期当主に指名してきた。理由はリアーネの婚約者であるリンハルトがエリザベスと結婚するから。 リンハルトは侯爵家に婿に入ることになっていた。 「エリザベスとリンハルト殿が一緒になりたいそうだ。エリザベスはちょうど適齢期だし、二人が思い合っているなら結婚させたい。急に婚約者がいなくなってリアーネも不安だろうが、適齢期までまだ時間はある。お前にふさわしい結婚相手を見つけるから安心しなさい。エリザベスの結婚が決まったのだ。こんなにめでたいことはないだろう?」 破談になってめでたいことなんてないと思いますけど?  婚約破棄になるのは構いませんが、この家を渡すつもりはありません。

婚約破棄されたから、とりあえず逃げた!

志位斗 茂家波
恋愛
「マテラ・ディア公爵令嬢!!この第1王子ヒース・カックの名において婚約破棄をここに宣言する!!」 私、マテラ・ディアはどうやら婚約破棄を言い渡されたようです。 見れば、王子の隣にいる方にいじめたとかで、冤罪なのに捕まえる気のようですが‥‥‥よし、とりあえず逃げますか。私、転生者でもありますのでこの際この知識も活かしますかね。 マイペースなマテラは国を見捨てて逃げた!! 思い付きであり、1日にまとめて5話だして終了です。テンプレのざまぁのような気もしますが、あっさりとした気持ちでどうぞ読んでみてください。 ちょっと書いてみたくなった婚約破棄物語である。 内容を進めることを重視。誤字指摘があれば報告してくださり次第修正いたします。どうぞ温かい目で見てください。(テンプレもあるけど、斜め上の事も入れてみたい)

婚約破棄で見限られたもの

志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。 すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥ よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。

許してもらえるだなんて本気で思っているのですか?

風見ゆうみ
恋愛
ネイロス伯爵家の次女であるわたしは、幼い頃から変わった子だと言われ続け、家族だけじゃなく、周りの貴族から馬鹿にされ続けてきた。 そんなわたしを公爵である伯父はとても可愛がってくれていた。 ある日、伯父がお医者様から余命を宣告される。 それを聞いたわたしの家族は、子供のいない伯父の財産が父に入ると考えて豪遊し始める。 わたしの婚約者も伯父の遺産を当てにして、姉に乗り換え、姉は姉で伯父が選んでくれた自分の婚約者をわたしに押し付けてきた。 伯父が亡くなったあと、遺言書が公開され、そこには「遺留分以外の財産全てをリウ・ネイロスに、家督はリウ・ネイロスの婚約者に譲る」と書かれていた。 そのことを知った家族たちはわたしのご機嫌伺いを始める。 え……、許してもらえるだなんて本気で思ってるんですか? ※独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

私が我慢する必要ありますか?【2024年12月25日電子書籍配信決定しました】

青太郎
恋愛
ある日前世の記憶が戻りました。 そして気付いてしまったのです。 私が我慢する必要ありますか? ※ 株式会社MARCOT様より電子書籍化決定! コミックシーモア様にて12/25より配信されます。 コミックシーモア様限定の短編もありますので興味のある方はぜひお手に取って頂けると嬉しいです。 リンク先 https://www.cmoa.jp/title/1101438094/vol/1/

処理中です...