上 下
28 / 46

第27話

しおりを挟む
「あ、あの……、何処に向かっているのですか…?」
「ヴィアルス殿下の所です。……っと、行かなくても向こうから来てくれたようですが…。」


前から歩いて来たのは、他でもないヴィアルスだった。


「ミフェラ!」
「ヴィアルス様…!」
「戻って来るのが遅いと思ったから、何かあったのかと思ったんだが…。」


彼は私が軟禁されていた部屋に向かうところだったのだろう。ミフェラが居ることに笑顔を見せつつも、私とお義父様を見て顔つきが変わった。
ポーカーフェイスという言葉を知らない、子供のように次々と変わる表情。見ていて面白い…。


「……どういうことだ?何故レイシアとルーズフィルト公爵が一緒に居る?」
「聞いてくださいヴィアルス様ぁ!公爵様がレイシアを軟禁していた部屋を開けろと言ってきて、さらにはレイシアのことを愛称で呼んでいたんですわ!」
「な、何だと?!それは本当なのか?」


私とお義父様は顔を見合せ、察した。この流れでいけば……


「事実ですわ…!これでは私達の計画が台無しになってしまいます!まだ1日しか経っていないので、私達の評価は下がったまま…。一体これからどうすれば良いのですか!」
「ミ、ミフェラ……、落ち着いてくれ…。」


何も考えていないミフェラが全て話してくれた。慌ててヴィアルスが声をかけるが、もう遅い。本人の言葉だ、言い逃れは出来ない。
それにしても、実の妹がここまで馬鹿だったとは…。いくら焦っているとはいえ、自ら暴露するとは思ってもみなかった。
だがこちらとしてはその方が有り難かった。進めやすくなるからだ。


「つまり……お2人はレイシアを連れ去り、先程の部屋にて軟禁していた。そして自分達の仕事を代わりに行わせ、それを自らがしたように見せかけて周囲の信頼回復に利用しようと考えた……、違いますか?」
「「……。」」
「黙っていても何も分かりませんよ?……とにかく、一緒に来てもらいましょうか。」


抵抗するかと思っていたが、あっさりとお義父様について行くヴィアルスとミフェラ。
王族だから罰など受けないと思っているのか…。当然そんなはずはないし、然るべき罰は受けてもらう。その罰によってヴィアルスの地位も下がるだろうが…。

その後、事情を聞くために部屋を移ったが、2人は黙秘を貫いて何も話さなかった。
だがお義父様が公爵として、調査結果を全て国王陛下に報告した。ヴィアルスが私を誘拐する場面は多くの人々が目にしており、目撃証言が多数用意されている。さらには王城の使用人達も、2人が誰かを軟禁していると気付いていた。
国王陛下の計らいで、明日にも陛下、ヴィアルス、ミフェラ、そしてお義父様と私の5人での事情聴取話し合いの場が設けられる事となった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】ブスと呼ばれるひっつめ髪の眼鏡令嬢は婚約破棄を望みます。

はゆりか
恋愛
幼き頃から決まった婚約者に言われた事を素直に従い、ひっつめ髪に顔が半分隠れた瓶底丸眼鏡を常に着けたアリーネ。 周りからは「ブス」と言われ、外見を笑われ、美しい婚約者とは並んで歩くのも忌わしいと言われていた。 婚約者のバロックはそれはもう見目の美しい青年。 ただ、美しいのはその見た目だけ。 心の汚い婚約者様にこの世の厳しさを教えてあげましょう。 本来の私の姿で…… 前編、中編、後編の短編です。

どうでもいいですけどね

志位斗 茂家波
恋愛
「ミラージュ令嬢!!貴女との婚約を破棄する!!」 ‥‥と、かつての婚約者に婚約破棄されてから数年が経ちました。 まぁ、あの方がどうなったのかは別にどうでもいいですけれどね。過去は過去ですから、変えようがないです。 思いついたよくある婚約破棄テンプレ(?)もの。気になる方は是非どうぞ。

誰にも信じてもらえなかった公爵令嬢は、もう誰も信じません。

salt
恋愛
王都で罪を犯した悪役令嬢との婚姻を結んだ、東の辺境伯地ディオグーン領を治める、フェイドリンド辺境伯子息、アルバスの懺悔と後悔の記録。 6000文字くらいで摂取するお手軽絶望バッドエンドです。 *なろう・pixivにも掲載しています。

皆さん勘違いなさっているようですが、この家の当主はわたしです。

和泉 凪紗
恋愛
侯爵家の後継者であるリアーネは父親に呼びされる。 「次期当主はエリザベスにしようと思う」 父親は腹違いの姉であるエリザベスを次期当主に指名してきた。理由はリアーネの婚約者であるリンハルトがエリザベスと結婚するから。 リンハルトは侯爵家に婿に入ることになっていた。 「エリザベスとリンハルト殿が一緒になりたいそうだ。エリザベスはちょうど適齢期だし、二人が思い合っているなら結婚させたい。急に婚約者がいなくなってリアーネも不安だろうが、適齢期までまだ時間はある。お前にふさわしい結婚相手を見つけるから安心しなさい。エリザベスの結婚が決まったのだ。こんなにめでたいことはないだろう?」 破談になってめでたいことなんてないと思いますけど?  婚約破棄になるのは構いませんが、この家を渡すつもりはありません。

婚約破棄されたから、とりあえず逃げた!

志位斗 茂家波
恋愛
「マテラ・ディア公爵令嬢!!この第1王子ヒース・カックの名において婚約破棄をここに宣言する!!」 私、マテラ・ディアはどうやら婚約破棄を言い渡されたようです。 見れば、王子の隣にいる方にいじめたとかで、冤罪なのに捕まえる気のようですが‥‥‥よし、とりあえず逃げますか。私、転生者でもありますのでこの際この知識も活かしますかね。 マイペースなマテラは国を見捨てて逃げた!! 思い付きであり、1日にまとめて5話だして終了です。テンプレのざまぁのような気もしますが、あっさりとした気持ちでどうぞ読んでみてください。 ちょっと書いてみたくなった婚約破棄物語である。 内容を進めることを重視。誤字指摘があれば報告してくださり次第修正いたします。どうぞ温かい目で見てください。(テンプレもあるけど、斜め上の事も入れてみたい)

婚約破棄で見限られたもの

志位斗 茂家波
恋愛
‥‥‥ミアス・フォン・レーラ侯爵令嬢は、パスタリアン王国の王子から婚約破棄を言い渡され、ありもしない冤罪を言われ、彼女は国外へ追放されてしまう。 すでにその国を見限っていた彼女は、これ幸いとばかりに別の国でやりたかったことを始めるのだが‥‥‥ よくある婚約破棄ざまぁもの?思い付きと勢いだけでなぜか出来上がってしまった。

許してもらえるだなんて本気で思っているのですか?

風見ゆうみ
恋愛
ネイロス伯爵家の次女であるわたしは、幼い頃から変わった子だと言われ続け、家族だけじゃなく、周りの貴族から馬鹿にされ続けてきた。 そんなわたしを公爵である伯父はとても可愛がってくれていた。 ある日、伯父がお医者様から余命を宣告される。 それを聞いたわたしの家族は、子供のいない伯父の財産が父に入ると考えて豪遊し始める。 わたしの婚約者も伯父の遺産を当てにして、姉に乗り換え、姉は姉で伯父が選んでくれた自分の婚約者をわたしに押し付けてきた。 伯父が亡くなったあと、遺言書が公開され、そこには「遺留分以外の財産全てをリウ・ネイロスに、家督はリウ・ネイロスの婚約者に譲る」と書かれていた。 そのことを知った家族たちはわたしのご機嫌伺いを始める。 え……、許してもらえるだなんて本気で思ってるんですか? ※独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

私が我慢する必要ありますか?【2024年12月25日電子書籍配信決定しました】

青太郎
恋愛
ある日前世の記憶が戻りました。 そして気付いてしまったのです。 私が我慢する必要ありますか? ※ 株式会社MARCOT様より電子書籍化決定! コミックシーモア様にて12/25より配信されます。 コミックシーモア様限定の短編もありますので興味のある方はぜひお手に取って頂けると嬉しいです。 リンク先 https://www.cmoa.jp/title/1101438094/vol/1/

処理中です...