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第12話
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「……もう一度、お聞きしてもよろしいでしょうか…?」
「ええ。レイシアさんを、私の養子として迎えます。つまりは義娘になるということですね。」
「……。」
「レイシアさん?」
「っも、申し訳ありません…。あまりにも信じ難い内容でしたので……。」
思わず放心状態になってしまった。侯爵令嬢だったとはいえ、今は平民のこの私を養子に?ルーズフィルト公爵様は、時々大胆なことをなさる…。
現在の私の社交界での地位は低い。情報収集すらあまり出来ない存在だろう。そんな私を、ただ役に立つからという理由だけで養子にするわけがない。きっと他にも理由があるはずだ。
「ここにサインをしてください。拒否権は無しですよ?」
「準備が良いのですね…。お断りするつもりはありませんよ。公爵様には敵いませんから。」
「嬉しいことを言ってくれますが、レイシアさんほど恐ろしい方はいないかと。」
私は公爵様への返しに困りつつも、サインをして誤魔化した。これで正式にルーズフィルト公爵様の義娘になった。
一応私は、元父であるユシェナート侯爵から渡された追放の書類を見せた。
「珍しいですね…。追放する際は、大体がこのような書類を書かせません。すぐにでも出て行かせるものですから。それにユシェナート侯がというのも考えられません。」
「私も同じ考えです。ですのでこれはミフェラが用意し、侯爵に頼んでいたのではないでしょうか。」
「なるほど…、一理あります。ミフェラさんは、レイシアさんを確実に平民にさせたかったのでしょうね。」
公爵様の言葉通りだと思う。ミフェラは、私に散々嫌がらせをしてきた。恨まれて当然だと理解しているのだろう。しかし私が平民となれば、貴族たるミフェラには仕返しも何も出来ない。それを分かっていて、平民にさせようとユシェナート侯爵に頼んだ…。どこまでも人間として腐っている、そう思わずにはいられない。
しかし私が公爵令嬢とは…。侯爵家を追放されたというのに、1つ上の位になってしまった。まぁミフェラに嫌味を言われることはないだろう。自分より上位の貴族、それも国王陛下が最も信頼を寄せるルーズフィルト公爵様の義娘なのだ。下手なことはしないはず。
「ゼム、入ってもいいかしら。」
「構いませんよ。」
扉の外から女性の声が聞こえた。何度か聞いたことのある声だ。
公爵様が許可をしたと同時に、入ってきたのは……
「今日来ると聞いていたから楽しみにしていたのよ。……やっぱり可愛いわぁ。」
「ええ。レイシアさんを、私の養子として迎えます。つまりは義娘になるということですね。」
「……。」
「レイシアさん?」
「っも、申し訳ありません…。あまりにも信じ難い内容でしたので……。」
思わず放心状態になってしまった。侯爵令嬢だったとはいえ、今は平民のこの私を養子に?ルーズフィルト公爵様は、時々大胆なことをなさる…。
現在の私の社交界での地位は低い。情報収集すらあまり出来ない存在だろう。そんな私を、ただ役に立つからという理由だけで養子にするわけがない。きっと他にも理由があるはずだ。
「ここにサインをしてください。拒否権は無しですよ?」
「準備が良いのですね…。お断りするつもりはありませんよ。公爵様には敵いませんから。」
「嬉しいことを言ってくれますが、レイシアさんほど恐ろしい方はいないかと。」
私は公爵様への返しに困りつつも、サインをして誤魔化した。これで正式にルーズフィルト公爵様の義娘になった。
一応私は、元父であるユシェナート侯爵から渡された追放の書類を見せた。
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「私も同じ考えです。ですのでこれはミフェラが用意し、侯爵に頼んでいたのではないでしょうか。」
「なるほど…、一理あります。ミフェラさんは、レイシアさんを確実に平民にさせたかったのでしょうね。」
公爵様の言葉通りだと思う。ミフェラは、私に散々嫌がらせをしてきた。恨まれて当然だと理解しているのだろう。しかし私が平民となれば、貴族たるミフェラには仕返しも何も出来ない。それを分かっていて、平民にさせようとユシェナート侯爵に頼んだ…。どこまでも人間として腐っている、そう思わずにはいられない。
しかし私が公爵令嬢とは…。侯爵家を追放されたというのに、1つ上の位になってしまった。まぁミフェラに嫌味を言われることはないだろう。自分より上位の貴族、それも国王陛下が最も信頼を寄せるルーズフィルト公爵様の義娘なのだ。下手なことはしないはず。
「ゼム、入ってもいいかしら。」
「構いませんよ。」
扉の外から女性の声が聞こえた。何度か聞いたことのある声だ。
公爵様が許可をしたと同時に、入ってきたのは……
「今日来ると聞いていたから楽しみにしていたのよ。……やっぱり可愛いわぁ。」
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