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「ユイレ……よかったのか?」

「ええ…あれでいいのよ……。私達の姿が見えない以上、彼自身が手を出すことは出来ないのだからね。」

「それはそうだが…。」

「私の正体を知っているのは、精霊の仲間達と侯爵、そしてその側近のみ。私を殺せと命じても、誰か分からないわ。それに、そのようなことを命じればついていく者はいなくなるもの。」

「なるほど。分かった。ユイレがそれで良いのなら、私が口を出すことはしないでおこう。」


里の中心へと向かい、フィズと合流する。
ゼティスーアとフィズの二人は報告し合い、やがて話が終わると私とゼティスーアの二人きりとなった。


「ゼティスーア。その……ありがとう。」

「何のことだ?」

「私の為に、怒ってくれて。」

「怒って当然だ。奴はユイレを……」

「嬉しかったわ。」

「……。」

「私の為に怒ってくれた人は初めてよ…。唯一優しくしてくれていたお母様は、私が傷付けられると心配はしてくれたのだけれど、痛めつけた者を叱りはしなかったわ。だから嬉しかったの。」

「……私は何もしていない…。結局ユイレが話をつけたのだからな…。」

「そんなことはないわ。本当に……ありがとう。」


私は笑顔でそう言った。
本当に嬉しかったのだ。 
しかし、少し寂しくもあった。
親としての情があるのではと、ほんの少しだけ期待していたからだ。
期待するだけ無駄だった。
そもそも森に放置して殺そうとする者に、情などあるわけが無かったのだが。


「ユイレ、無理をしなくていい…。泣きたい時は泣け。強がる必要なんてない。」

「……!…っ……ごめんなさい…。」


ゼティスーアに言われた時、無意識に泣いてしまっていた。

昔から、私の世界は暗かった。
どんな立場の者であったとしても、私とは距離を置かれる。
友達などはおらず、唯一話してくれるのはお母様だけ。
それが私にとっての普通だと思っていた。
しかしそれは、『本当の私』の気持ちを置いていってしまっていたのだ。

寂しい。

そんな感情を、私は押し殺して生きてきた。
それにゼティスーアと出会い、精霊達と過ごす内にそんな思いも消えていた。
だがディガルザと再会し、お母様のことやこれまでの人生を思い出し、過去の感情が蘇ったのだ。

声を出して泣いてしまった。
ゼティスーアに心を読み取られているだろう。
少し恥ずかしかったが、すっきりとした気持ちだ。


「落ち着いたか?」

「ええ……恥ずかしい姿を見せたわね…。ありがとう、もう大丈夫よ。」

「そうか…。……ユイレ、伝えたい言葉がある。弱っている今の君に、卑怯なのかもしれないが…。」

「……?」

「私はユイレのことが……その…好きなんだ…。」

「!!」
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