【完結】王位に拘る元婚約者様へ

凛 伊緒

文字の大きさ
上 下
28 / 34

28話 仲間

しおりを挟む
「えぇっと…、ヴィーレ?彼は…?」



 あの後、ヴィーレが影から出て来て、《悪魔族》の件は無事に片付いたと聞いていた。しかしゼーファ様の影にヴィーレの配下を護衛として潜ませてから、私の自室へと戻った時、ヴィーレが窓を開けて誰かを招き入れた。
 長い青髪を一つに結い、執事のような服を着た美形の男性だ。攻撃しようと臨戦態勢を取ったが、一目見てそれをやめた。私が敵うような相手ではないと察したからだ。ならば彼の事を知っていそうなヴィーレに聞いた方が早いと判断した。



「彼は『ルーヴィル』。ボクと同格の存在だよ。」

「やはりそうよね…。なら召喚された《悪魔族》は彼だったの?」

「その通り。それで、主に頼みがあるんだって。」



 ヴィーレがそう言うと、ルーヴィルと呼ばれた《悪魔族》は一歩前へ出て来て、跪いた。



「リエラ様。俺…いや、私もヴィーレのように、貴方様に仕えたいのです。使い魔として、傍に置いてはくれないでしょうか。」

「……それは本音…?」

「紛れもない本音です。リエラ様の一生を、私も近くで見届けたく。」



 私は人よりも悪魔族に好かれやすいのだろうか…。そう思いつつ、ルーヴィルの目を見た。彼の言葉に偽りは無さそうだ。
 彼が仲間となったのならば、よりゼーファ様を護れるだろう。それだけではなく、有事の際に民達も護る余裕ができるはずだ。
 だが心配事もある。



「私が命令違反を行うことがないかご心配ならば、召喚魔法にも組み込まれている従属魔法を使用してください。」



 私の考えを読み取ってか、ルーヴィルは従属魔法を使用するように言ってきた。
 彼の言うように、従属魔法は召喚魔法にも組み込まれている。召喚されたものが、召喚主に危害を加えないようにするためだ。ヴィーレはこの従属魔法をそのままにしていた。



「あなたはそれでいいの?」

「構いません。」



 即答した為、私はルーヴィルと従属魔法にて主従関係を結んだ。これで彼は私の命令に逆らえなくなったという訳だ。



「ルーヴィル、これからよろしくね。」

「はい、よろしくお願い致します。」

「では先ず、その堅い話し方からね。私の呼び方は、変なものじゃない限り好きにしてくれたら言いけれど、話し方は普段通りでいいわ。ヴィーレもそうしているし。」

「しかし…。」

「ならこれは命令よ。ルーヴィルの一人称は『俺』のようだし、私の前で偽りの姿を見せることはしないように。ただし貴族も居る場所では、その畏まった態度を取って欲しいわ。」

「命令とあらば仕方がないな。了解だ。」



 その後、魔法使い達に姿を見られている為、変装した方が良いのではと提案したが、顕現してすぐは魔力が馴染んでおらず、髪色は真っ黒になっていたそう。さらに短髪で顔の形なども少し変わっていたらしい。
 悪魔族はこの世界に顕現する際、魔力で身体を再構築するという。精神体、つまりは魂だけにもなれる悪魔族だからこそ、この世界に居続けるには物質体たる身体を再構築する必要があるのだろう。
 どういう原理なのか詳しくは知らないが、悪魔族の住まう異界とこの世界では、身体の構成が少し変わってくるのかもしれない。

 そしてルーヴィルの話から察するに、身体を魔力で創っている時の姿を、魔法使い達に見られたのだろう。悪魔族であるということは分かったが、姿形が完全には定まっていない状態だったという訳だ。



「故に、変装は要らないだろう。」

「それなら、魔力の質を変えるだけで済みそうね。」



 こうしてルーヴィルが私の使い魔に加わり、仲間となった。人前で彼を呼ぶことはないだろうが、心強い味方が増えたのは良い事だ。



 ──翌日。
 玉座の間にて国王陛下より直々に、ジルファーへの処罰が言い渡される事となった。
 玉座に座る陛下から見て左隣には王妃陛下が、右隣にはゼーファ様が座っており、玉座の間での座る位置は以前と同じだ。
 違うのは、私がゼーファ様のすぐ後ろに控えており、ジルファーの惨めな姿を見下ろしているということ……。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

【完結24万pt感謝】子息の廃嫡? そんなことは家でやれ! 国には関係ないぞ!

宇水涼麻
ファンタジー
貴族達が会する場で、四人の青年が高らかに婚約解消を宣った。 そこに国王陛下が登場し、有無を言わさずそれを認めた。 慌てて否定した青年たちの親に、国王陛下は騒ぎを起こした責任として罰金を課した。その金額があまりに高額で、親たちは青年たちの廃嫡することで免れようとする。 貴族家として、これまで後継者として育ててきた者を廃嫡するのは大変な決断である。 しかし、国王陛下はそれを意味なしと袖にした。それは今回の集会に理由がある。 〰️ 〰️ 〰️ 中世ヨーロッパ風の婚約破棄物語です。 完結しました。いつもありがとうございます!

神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>

ラララキヲ
ファンタジー
 フライアルド聖国は『聖女に護られた国』だ。『神が自分の愛し子の為に作った』のがこの国がある大地(島)である為に、聖女は王族よりも大切に扱われてきた。  それに不満を持ったのが当然『王侯貴族』だった。  彼らは遂に神に盾突き「人の尊厳を守る為に!」と神の信者たちを追い出そうとした。去らねば罪人として捕まえると言って。  そしてフライアルド聖国の歴史は動く。  『神の作り出した世界』で馬鹿な人間は現実を知る……  神「プンスコ(`3´)」 !!注!! この話に出てくる“神”は実態の無い超常的な存在です。万能神、創造神の部類です。刃物で刺したら死ぬ様な“自称神”ではありません。人間が神を名乗ってる様な謎の宗教の話ではありませんし、そんな口先だけの神(笑)を容認するものでもありませんので誤解無きよう宜しくお願いします。!!注!! ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇ちょっと【恋愛】もあるよ! ◇なろうにも上げてます。

いつだって二番目。こんな自分とさよならします!

椿蛍
恋愛
小説『二番目の姫』の中に転生した私。 ヒロインは第二王女として生まれ、いつも脇役の二番目にされてしまう運命にある。 ヒロインは婚約者から嫌われ、両親からは差別され、周囲も冷たい。 嫉妬したヒロインは暴走し、ラストは『お姉様……。私を救ってくれてありがとう』ガクッ……で終わるお話だ。  そんなヒロインはちょっとね……って、私が転生したのは二番目の姫!? 小説どおり、私はいつも『二番目』扱い。 いつも第一王女の姉が優先される日々。 そして、待ち受ける死。 ――この運命、私は変えられるの? ※表紙イラストは作成者様からお借りしてます。

ある王国の王室の物語

朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。 顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。 それから 「承知しました」とだけ言った。 ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。 それからバウンドケーキに手を伸ばした。 カクヨムで公開したものに手を入れたものです。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

処理中です...