【完結】王位に拘る元婚約者様へ

凛 伊緒

文字の大きさ
上 下
27 / 34

27話 青

しおりを挟む
 ※ヴィーレ視点



「あ、いた。」



 主の影から魔力反応のあった場所の近くまで移動していたボクは、その魔力を放った者を見つけた。
 青髪の長髪を後ろで一つに結い、執事のような格好をしている。



「やっほー、久しぶり。」

「誰かと思えば、ヴィーレじゃないか。」

「ボクが来たって気付いてたクセに。」

「あれだけ分かり易い魔力を放たれてはな。俺にこの場から動くなと威圧していただろ?」

「まぁね。追いかけるの面倒だし。」



 ジルファーが集めた魔法使い達によって召喚されたのは、《悪魔族》だ。それも最上位、ボクと同格の存在が召喚された。…いや、彼自ら召喚に応じたという方が正しいだろうね。
 ボクらほどの《悪魔族》は、人間のみで召喚できない。圧倒的に魔力が足りないのだから。しかしボクら自身が足りない魔力を補い、この世界に顕現することはできる。つまりこの《悪魔族》も、ボクと同じように目的があって召喚に応じたって訳だ。



「それで、何で出て来たのさ。」

「お前が一人で楽しそうなことをやっていたからな。俺も混ぜてくれよ。」

「その為に来たんだ?」

「丁度良いタイミングで、召喚魔法の反応を感じたからな。お前の主のお望み通り、王国民は殺していないだろ?何なら魔法使い共も生かしておいた。」

「……ボクのお気に入りを横取りしようってワケ?」

「そんなつもりは毛頭ない。ただ俺もあの《異界魂》の一生を、近くで見てみたくなったんだよ。」



 《異界魂いかいこん》とは、この世界に存在しない魂、つまりは異世界の魂がこの世界に迷い込み、その魂を持って生まれた者のことを指す。感情を読み取るだけでなく、魂の色までも視ることができるボクらだからこそ、主が異世界からの転生者だと気付けたんだ。
 千年に一度あるかないか程度の確率で異世界の魂がこの世界に迷い込んで来るけど、今回は特殊だった。生前の記憶をはっきりと思い出すことができ、魔法適性は闇。ボクら《悪魔族》と最も相性の良い属性だね。

 《異界魂》の者は、殆どが光属性の魔法を操った。そして物語の主人公が如く、周囲にもてはやされていた。
 けれど主は真逆。一部の人間には認められているとはいえ、闇魔法使いを理由に婚約破棄され公爵家を追放され…。普通なら病んでいてもおかしくない状況で、特に気にすることもなく自分を貫いていた。本当に格好良いと思ったんだ。
 最初は興味本位で召喚に応じて従っていたけど、今では主として認めている。ボクの終わることのない一生に、ちょっとくらい誰かに従っていた時があってもいいよね。



「ボクは主に手を出したり主が困るようなことをしなければ、キミが傍に居てもいいと思うけど……。」

「本当か!?」

「主を守れる者が増えるのは、ボクも望むところだ。でも決めるのは主だよ。ボクに決定権は無い。主が拒否したのなら、直ぐに帰ってよね。あと、主をボクから奪おうとしたら、容赦しないから。」

「おぉ、怖い怖い。いいぜ、俺はあくまでも近くで一生を見届けたいだけだからな。付き従って命令を聞くさ。お前よりは前に出ないようにしてやるよ。」

「ふーん、ならいいけど。」



 こうして、ボクは『青』と一緒に主の元へ戻った。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

乙女ゲームの世界だと、いつから思い込んでいた?

シナココ
ファンタジー
母親違いの妹をいじめたというふわふわした冤罪で婚約破棄された上に、最北の辺境地に流された公爵令嬢ハイデマリー。勝ち誇る妹・ゲルダは転生者。この世界のヒロインだと豪語し、王太子妃に成り上がる。乙女ゲームのハッピーエンドの確定だ。 ……乙女ゲームが終わったら、戦争ストラテジーゲームが始まるのだ。

【完結24万pt感謝】子息の廃嫡? そんなことは家でやれ! 国には関係ないぞ!

宇水涼麻
ファンタジー
貴族達が会する場で、四人の青年が高らかに婚約解消を宣った。 そこに国王陛下が登場し、有無を言わさずそれを認めた。 慌てて否定した青年たちの親に、国王陛下は騒ぎを起こした責任として罰金を課した。その金額があまりに高額で、親たちは青年たちの廃嫡することで免れようとする。 貴族家として、これまで後継者として育ててきた者を廃嫡するのは大変な決断である。 しかし、国王陛下はそれを意味なしと袖にした。それは今回の集会に理由がある。 〰️ 〰️ 〰️ 中世ヨーロッパ風の婚約破棄物語です。 完結しました。いつもありがとうございます!

神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>

ラララキヲ
ファンタジー
 フライアルド聖国は『聖女に護られた国』だ。『神が自分の愛し子の為に作った』のがこの国がある大地(島)である為に、聖女は王族よりも大切に扱われてきた。  それに不満を持ったのが当然『王侯貴族』だった。  彼らは遂に神に盾突き「人の尊厳を守る為に!」と神の信者たちを追い出そうとした。去らねば罪人として捕まえると言って。  そしてフライアルド聖国の歴史は動く。  『神の作り出した世界』で馬鹿な人間は現実を知る……  神「プンスコ(`3´)」 !!注!! この話に出てくる“神”は実態の無い超常的な存在です。万能神、創造神の部類です。刃物で刺したら死ぬ様な“自称神”ではありません。人間が神を名乗ってる様な謎の宗教の話ではありませんし、そんな口先だけの神(笑)を容認するものでもありませんので誤解無きよう宜しくお願いします。!!注!! ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるかも。 ◇ちょっと【恋愛】もあるよ! ◇なろうにも上げてます。

いつだって二番目。こんな自分とさよならします!

椿蛍
恋愛
小説『二番目の姫』の中に転生した私。 ヒロインは第二王女として生まれ、いつも脇役の二番目にされてしまう運命にある。 ヒロインは婚約者から嫌われ、両親からは差別され、周囲も冷たい。 嫉妬したヒロインは暴走し、ラストは『お姉様……。私を救ってくれてありがとう』ガクッ……で終わるお話だ。  そんなヒロインはちょっとね……って、私が転生したのは二番目の姫!? 小説どおり、私はいつも『二番目』扱い。 いつも第一王女の姉が優先される日々。 そして、待ち受ける死。 ――この運命、私は変えられるの? ※表紙イラストは作成者様からお借りしてます。

ある王国の王室の物語

朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。 顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。 それから 「承知しました」とだけ言った。 ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。 それからバウンドケーキに手を伸ばした。 カクヨムで公開したものに手を入れたものです。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

処理中です...