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22話 噂と味方
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「「聞いた?あの噂。」」
「「「ええ。でも本当なのかしら…。」」」
「「本当らしいわよ?王女殿下の自室から、王太子殿下が出てこられたところを見た子がいたのよ。冒険者リエラの魔法によって拘束された状態で、部屋から強制的に追い出されてたって!」」
「「「あの方が魔法を使ってまで追い出したのなら、事実の可能性が高いわね…。」」」
翌朝。
使用人達が王城のいたる所で話をしていた。内容は昨日、ジルファーがゼーファ様の命を狙ったことについてだ。
勿論ゼーファ様自身が流した訳ではなく、ゼーファ様に味方する優秀な貴族によって広められている。
私はゼーファ様の部屋へと向かいつつ、城内の様子を窺った。
使用人達の話題は、『王太子殿下が王女殿下を殺害しようとした』という話で持ち切りだ。
この噂を聞き、ジルファーに付いていた一部の貴族は、中立になることを決めた。つまり、ジルファーに味方する貴族が少し減ったのだ。これはゼーファ様側にとっての朗報と言えよう。
当然こうなることを分かっていた上で噂を流したが、ここまで上手くいくとは思っていなかった。ジルファーが王になることに疑念を持つ貴族は、想定より多いということなのだろう。
「ゼーファ様。噂は順調に広まっているようね。」
「その事なのだが…。あの噂を聞き、妾の下に付きたいと言うものが増えたのじゃ。しかし妾も本当に味方にすべきかを、見極めなければならぬ。」
ゼーファ様の言うことは尤もだ。『ゼーファ殿下の下に付きたい』と嘘を吐き、こちらの内情を探らせる、或いはゼーファ様を油断させて暗殺するなど、ジルファーがこの機を狙い、刺客を送ってくる可能性も十分にある。どのような貴族であっても、警戒を絶やさないに越したことはないのだ。
「そこでじゃ。貴族達に会い、直接真意を確かめることにした。妾に付きたいと言ってきた貴族は、下級貴族を含め七家。妾が問題無いと判断したのは二家じゃ。残りの五家は、話をするまで信頼に足らぬ。」
そう言って私に見せてきたのは、その五家の名が書かれた一枚の紙だった。
貴族の名の中に、よく知る人物の名があった。
「……少なくともスレードル侯爵は、信頼に足ると思うわよ?」
「…何故そう思う?」
「私の取引相手だからよ。魔物の素材の買取や護衛依頼など、良い関係を築いているわ。」
「しかしそれは冒険者リエラが相手の場合であろう?妾相手ではどうなるか…。そもそもスレードル侯爵は、中立を守ってきた貴族じゃ。急に妾の味方をしようというのが引っかかる。」
ゼーファ様はスレードル侯爵の行動に違和感を覚えている様子。
だが私としては、侯爵が味方に付くのはかなり心強い。財力面でもそうだが、彼の商人としての知識・技量は、貴族相手にも通用する。彼ならば、必ずやこちらが有利な状況になるよう、物事を運んでくれるはずだ。
「そう難しく考える必要はないと思うわ。彼は自分に利がある方へと動く『商人』よ。ゼーファ様が王位継承争いに勝つと踏んだから、このタイミングで動いたのでしょう。」
「……。」
「ゼーファ様が気になるのなら、私はこれ以上何も言わないわ。自分の目で確かめてから判断するのも、大切なことだもの。」
「…そうじゃな。」
そうして数日おきに、五家の貴族と会うことになった。場所は新たに用意された、ゼーファ様の執務室だ。ジルファーの仕事を代わりに行うにあたり、執務室があった方が良いと、国王陛下が判断されたらしい。
「ふと思ったのだけれど、国王陛下からは何も無いの?」
「昨日手紙が届いた。内容は、『身体に異常はないか』『護衛を増やさなくて大丈夫か、』『無理をしていないか』などな。心配してくださっているようだが、決して王位継承争いから降りろとは書かれていなかった。」
「…ゼーファ様の意志を尊重してくださっているのね。」
「妾からは、感謝とともに問題は無いと返しておいた。勿論護衛の増員も必要無いとな。」
ふっ、とゼーファ様は私に笑いかけた。私が居れば護衛は必要無いと言いたいのだろう。それだけ私を信頼してくれているということだ。期待には応えなければ。
「手紙には、『困ったことがあれば何時でも協力する』とも書いてあった。父上には遠慮なく相談できそうじゃ。」
「陛下はゼーファ様に味方するようね。」
「国王という立場上公言はできぬが、手紙を読む限りそうなのであろうな…。ありがたいことじゃ。」
確定ではないとはいえ、国王陛下がゼーファ様を次期国王にと考えているとは…。
だが陛下ならば『次期国王をゼーファに』と考えるのも納得だ。
ゼーファ様と国王陛下のお考えを予想していた時、扉の外に居た護衛がノックをしてきた。
「ゼーファ様、お客様です。」
「「「ええ。でも本当なのかしら…。」」」
「「本当らしいわよ?王女殿下の自室から、王太子殿下が出てこられたところを見た子がいたのよ。冒険者リエラの魔法によって拘束された状態で、部屋から強制的に追い出されてたって!」」
「「「あの方が魔法を使ってまで追い出したのなら、事実の可能性が高いわね…。」」」
翌朝。
使用人達が王城のいたる所で話をしていた。内容は昨日、ジルファーがゼーファ様の命を狙ったことについてだ。
勿論ゼーファ様自身が流した訳ではなく、ゼーファ様に味方する優秀な貴族によって広められている。
私はゼーファ様の部屋へと向かいつつ、城内の様子を窺った。
使用人達の話題は、『王太子殿下が王女殿下を殺害しようとした』という話で持ち切りだ。
この噂を聞き、ジルファーに付いていた一部の貴族は、中立になることを決めた。つまり、ジルファーに味方する貴族が少し減ったのだ。これはゼーファ様側にとっての朗報と言えよう。
当然こうなることを分かっていた上で噂を流したが、ここまで上手くいくとは思っていなかった。ジルファーが王になることに疑念を持つ貴族は、想定より多いということなのだろう。
「ゼーファ様。噂は順調に広まっているようね。」
「その事なのだが…。あの噂を聞き、妾の下に付きたいと言うものが増えたのじゃ。しかし妾も本当に味方にすべきかを、見極めなければならぬ。」
ゼーファ様の言うことは尤もだ。『ゼーファ殿下の下に付きたい』と嘘を吐き、こちらの内情を探らせる、或いはゼーファ様を油断させて暗殺するなど、ジルファーがこの機を狙い、刺客を送ってくる可能性も十分にある。どのような貴族であっても、警戒を絶やさないに越したことはないのだ。
「そこでじゃ。貴族達に会い、直接真意を確かめることにした。妾に付きたいと言ってきた貴族は、下級貴族を含め七家。妾が問題無いと判断したのは二家じゃ。残りの五家は、話をするまで信頼に足らぬ。」
そう言って私に見せてきたのは、その五家の名が書かれた一枚の紙だった。
貴族の名の中に、よく知る人物の名があった。
「……少なくともスレードル侯爵は、信頼に足ると思うわよ?」
「…何故そう思う?」
「私の取引相手だからよ。魔物の素材の買取や護衛依頼など、良い関係を築いているわ。」
「しかしそれは冒険者リエラが相手の場合であろう?妾相手ではどうなるか…。そもそもスレードル侯爵は、中立を守ってきた貴族じゃ。急に妾の味方をしようというのが引っかかる。」
ゼーファ様はスレードル侯爵の行動に違和感を覚えている様子。
だが私としては、侯爵が味方に付くのはかなり心強い。財力面でもそうだが、彼の商人としての知識・技量は、貴族相手にも通用する。彼ならば、必ずやこちらが有利な状況になるよう、物事を運んでくれるはずだ。
「そう難しく考える必要はないと思うわ。彼は自分に利がある方へと動く『商人』よ。ゼーファ様が王位継承争いに勝つと踏んだから、このタイミングで動いたのでしょう。」
「……。」
「ゼーファ様が気になるのなら、私はこれ以上何も言わないわ。自分の目で確かめてから判断するのも、大切なことだもの。」
「…そうじゃな。」
そうして数日おきに、五家の貴族と会うことになった。場所は新たに用意された、ゼーファ様の執務室だ。ジルファーの仕事を代わりに行うにあたり、執務室があった方が良いと、国王陛下が判断されたらしい。
「ふと思ったのだけれど、国王陛下からは何も無いの?」
「昨日手紙が届いた。内容は、『身体に異常はないか』『護衛を増やさなくて大丈夫か、』『無理をしていないか』などな。心配してくださっているようだが、決して王位継承争いから降りろとは書かれていなかった。」
「…ゼーファ様の意志を尊重してくださっているのね。」
「妾からは、感謝とともに問題は無いと返しておいた。勿論護衛の増員も必要無いとな。」
ふっ、とゼーファ様は私に笑いかけた。私が居れば護衛は必要無いと言いたいのだろう。それだけ私を信頼してくれているということだ。期待には応えなければ。
「手紙には、『困ったことがあれば何時でも協力する』とも書いてあった。父上には遠慮なく相談できそうじゃ。」
「陛下はゼーファ様に味方するようね。」
「国王という立場上公言はできぬが、手紙を読む限りそうなのであろうな…。ありがたいことじゃ。」
確定ではないとはいえ、国王陛下がゼーファ様を次期国王にと考えているとは…。
だが陛下ならば『次期国王をゼーファに』と考えるのも納得だ。
ゼーファ様と国王陛下のお考えを予想していた時、扉の外に居た護衛がノックをしてきた。
「ゼーファ様、お客様です。」
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