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1話 茶番
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…何故こうなったのだろう……違う、初めから分かっていたことだ…。
「ラリエット・ゼンキースア!貴様との婚約を破棄する!」
王城にて開かれたパーティーの場で声高らかにそう宣言したのは、私の婚約者である王太子ジルファー・アンドレイズ殿下だ。金髪碧眼の容姿はまさに『王子様』と言えよう。しかし好きという訳ではく、寧ろ嫌いだった。
それでも次期王妃として、現国王陛下のご期待に応えられるよう全力を尽くしてきたはずだ。
2年間の厳しい王妃教育を乗り切り、ジルファー殿下の支えとなれるよう尽くした。それがこのような形で裏切られるとは……。
「貴様は次期王妃の座を守るという口実で、罪のない貴族を陥れようとしていた!」
「…殿下。証拠もないのに、そのようなことを仰るのはお止め下さいませんか。」
「証人ならいるぞ!」
ジルファー殿下が手を叩くと、貴族令嬢が三名、前に出てきた。
彼女達は次々にされてもいないことを証言し、私が『悪』だと言う。
常に冷静沈着な国王陛下がいらっしゃれば良かったのだが、丁度隣国へ会談に赴かれており、殿下はあえてこの日を狙ったのだろう。陛下がパーティーにご出席されていれば、必ず婚約破棄に反対すると分かっていた様子。そういうところは知恵が働くようだ。
「皆も分かっただろう。ラリエットは王妃に相応しくないと!」
ざわつき始める貴族達。私が『闇魔法』の使い手だからだろうか。殿下の言葉に反論する者などいなかった。それほどに、闇魔法は恐れられ嫌われているのだ。
いくら国王陛下が『悪しき魔法では無い』と宣言されようと、闇魔法に対する印象まで変えられる訳ではない。物事を理性的に見ることが出来るほんの一握りの貴族だけが、私を信用してくれていた。私も良い付き合いをするべき貴族が見分け易かったので、闇魔法使いであるということを利用していたのだが。
何はともあれ、虚言を弄するこの貴族令嬢達には、いつか必ず後悔してもらうとしよう。殿下に命令され仕方なくなのかもしれないと思ったが、彼女達の表情を見れば、嬉々として私を陥れようとしているのだと分かる。
一先ず私自身の名誉の為にも、この虚言について否定しておかなくては。
「殿下、証言があっても証拠にはなり得ませんよ。彼女達が真実を語っているとは限らないのですから。」
「何だと?貴様はこの私が証人として認めた者が、噓を吐いているとでも言いたいのか?」
「…事実、全て嘘ですからね…。私は彼女達が言っていた行いなど、何一つとして行ってはいません。」
「はっ!貴様が何と言おうが、婚約破棄は決定事項だ!王妃に相応しくないと、この場にいる全員が思っているのだ!」
はぁ…。馬鹿の相手をするのは面倒だ。この場にいる貴族達は、闇魔法をよく思っていない者達ばかり。私が信頼している貴族は招待されていない様子。
「……茶番ね…。」
正直言って、私は王妃の座などどうでも良かった。婚約者ではあるがジルファー殿下が好きという訳でもない。それでも努力し続けた理由は、ずっと闇魔法使いたる私を擁護して下さっていた国王陛下のご期待に応える為だ。
陛下は私がパーティー会場で不遇な扱いを受けないよう、護衛を付けて下さったこともあった。おかげで表立って何かをしてくることはなかったが、陛下のお気遣いが令嬢達の嫉妬心へと繋がったのだろう。『何故闇魔法使いが優遇されているのか』…と。
そうして不満が溜まっていき、現在に至るという訳だ。陛下の計らいを無下にするようなこの令嬢達には、きっと陛下ご自身も良い印象は抱かないだろう。
「婚約破棄は受け入れましょう。ですが、私はそこに居る彼女達を陥れることは勿論、貶めるようなこともしていません。それだけははっきり言っておきます。では失礼致します。」
私は身を翻し、パーティー会場を去った。
ゼンキースア公爵家に戻る道中、馬車の中でこれからの事を考える。
おそらく私を嫌っていたお父様は、直ぐにでも追放するだろう。王太子の婚約者ではなくなった私など、公爵家に置いておく価値がないからだ。
公爵家を追放されようと、困ることはない。その為に今まで色々と準備してきたのだから。それにジルファーとあの令嬢達を後悔させると決めた。野垂れ死ぬつもりは毛頭ない。
いつかはこうなると、私はあの時から分かっていた。
そう、私が『私』であると気付いた時から──
「ラリエット・ゼンキースア!貴様との婚約を破棄する!」
王城にて開かれたパーティーの場で声高らかにそう宣言したのは、私の婚約者である王太子ジルファー・アンドレイズ殿下だ。金髪碧眼の容姿はまさに『王子様』と言えよう。しかし好きという訳ではく、寧ろ嫌いだった。
それでも次期王妃として、現国王陛下のご期待に応えられるよう全力を尽くしてきたはずだ。
2年間の厳しい王妃教育を乗り切り、ジルファー殿下の支えとなれるよう尽くした。それがこのような形で裏切られるとは……。
「貴様は次期王妃の座を守るという口実で、罪のない貴族を陥れようとしていた!」
「…殿下。証拠もないのに、そのようなことを仰るのはお止め下さいませんか。」
「証人ならいるぞ!」
ジルファー殿下が手を叩くと、貴族令嬢が三名、前に出てきた。
彼女達は次々にされてもいないことを証言し、私が『悪』だと言う。
常に冷静沈着な国王陛下がいらっしゃれば良かったのだが、丁度隣国へ会談に赴かれており、殿下はあえてこの日を狙ったのだろう。陛下がパーティーにご出席されていれば、必ず婚約破棄に反対すると分かっていた様子。そういうところは知恵が働くようだ。
「皆も分かっただろう。ラリエットは王妃に相応しくないと!」
ざわつき始める貴族達。私が『闇魔法』の使い手だからだろうか。殿下の言葉に反論する者などいなかった。それほどに、闇魔法は恐れられ嫌われているのだ。
いくら国王陛下が『悪しき魔法では無い』と宣言されようと、闇魔法に対する印象まで変えられる訳ではない。物事を理性的に見ることが出来るほんの一握りの貴族だけが、私を信用してくれていた。私も良い付き合いをするべき貴族が見分け易かったので、闇魔法使いであるということを利用していたのだが。
何はともあれ、虚言を弄するこの貴族令嬢達には、いつか必ず後悔してもらうとしよう。殿下に命令され仕方なくなのかもしれないと思ったが、彼女達の表情を見れば、嬉々として私を陥れようとしているのだと分かる。
一先ず私自身の名誉の為にも、この虚言について否定しておかなくては。
「殿下、証言があっても証拠にはなり得ませんよ。彼女達が真実を語っているとは限らないのですから。」
「何だと?貴様はこの私が証人として認めた者が、噓を吐いているとでも言いたいのか?」
「…事実、全て嘘ですからね…。私は彼女達が言っていた行いなど、何一つとして行ってはいません。」
「はっ!貴様が何と言おうが、婚約破棄は決定事項だ!王妃に相応しくないと、この場にいる全員が思っているのだ!」
はぁ…。馬鹿の相手をするのは面倒だ。この場にいる貴族達は、闇魔法をよく思っていない者達ばかり。私が信頼している貴族は招待されていない様子。
「……茶番ね…。」
正直言って、私は王妃の座などどうでも良かった。婚約者ではあるがジルファー殿下が好きという訳でもない。それでも努力し続けた理由は、ずっと闇魔法使いたる私を擁護して下さっていた国王陛下のご期待に応える為だ。
陛下は私がパーティー会場で不遇な扱いを受けないよう、護衛を付けて下さったこともあった。おかげで表立って何かをしてくることはなかったが、陛下のお気遣いが令嬢達の嫉妬心へと繋がったのだろう。『何故闇魔法使いが優遇されているのか』…と。
そうして不満が溜まっていき、現在に至るという訳だ。陛下の計らいを無下にするようなこの令嬢達には、きっと陛下ご自身も良い印象は抱かないだろう。
「婚約破棄は受け入れましょう。ですが、私はそこに居る彼女達を陥れることは勿論、貶めるようなこともしていません。それだけははっきり言っておきます。では失礼致します。」
私は身を翻し、パーティー会場を去った。
ゼンキースア公爵家に戻る道中、馬車の中でこれからの事を考える。
おそらく私を嫌っていたお父様は、直ぐにでも追放するだろう。王太子の婚約者ではなくなった私など、公爵家に置いておく価値がないからだ。
公爵家を追放されようと、困ることはない。その為に今まで色々と準備してきたのだから。それにジルファーとあの令嬢達を後悔させると決めた。野垂れ死ぬつもりは毛頭ない。
いつかはこうなると、私はあの時から分かっていた。
そう、私が『私』であると気付いた時から──
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