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6章 始まりの魔法
第86話 模擬戦
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一瞬で間合いを詰め、レイに斬りかかったミアス。
対するレイは、《飛行》を使い距離を取った。
「恐ろしいな。初手で終わらせる気だっただろう?」
「そんなつもりはない。賢者なら、あの程度は避けられて当然だろ?」
「っははは!言ってくれるじゃないか。そういう奴は嫌いじゃない!」
ミアスの挑発を、レイは笑って流した。
そして今度は《火球》や《炎槍》を大量に放ち始める。
次から次へと魔法を発動させ、常に10を超える魔法を同時に操っていた。
この世界では、5つの魔法を同時に扱うことが出来れば、十分上位魔法使いに入る。
私は試していないので、現在どの程度魔法を同時に発動出来るのかは不明だが、レイも本気ではないだろう。
そしてそれらの魔法を軽々と避けているミアスだが、ある一点に誘導されているように思える。
ミアスもその事に気付いており、避けるだけではなく反撃に出た。
「《隔絶する暗黒》。」
そうミアスが唱えた瞬間、レイを結界ごと球形の闇が包み込んだ。
内部は真っ暗だろう。
視界を奪い、魔法を撃たせないのが目的と考えられる。
それに一時的にだが、行動も制限出来る。
しかしレイは直ぐに結界を破った。
「アタシを捕らえたつもりかい?あの程度──っ!?」
レイが結界に閉じ込められている間に、ミアスは一気に距離を詰めていた。
ほんの数秒の間に…。
真後ろから、気配なく剣が振り下ろされる。
反応が遅れたレイは、自身に張ってあった結界をミアスによって割られた。
だがすぐさま距離を取り、剣の直撃を避けた。
それでもかすり傷は与えられたようで、回復魔法を使用している。
「……《隔絶する暗黒》は破られることを想定した、ただの時間稼ぎだったというわけか…。」
「本気を出さないと負けてしまうぜ?」
「…生意気だな。大言壮語……というわけではないのが残念だ。ならば少し、本気を出すとしよう。」
抑えていた魔力を放ち、レイの溢れる魔力が増大した。
目に見えて分かる強者感。
相手を威圧する為にあえて可視化した魔力を放っている。
ミアスもさすがに怖気付いて……はいなかった。
私も動じていないのだが。
「ほう?この魔力を見ても怖気付かないか。」
「もっと怖い主がいるんでな。」
「まぁ、この程度ならそうだろうな。だが──《氷剣の嵐》。」
レイがそう唱えると氷でできた無数の剣が出現し、ミアスを取り囲むように渦を巻き始めた。
さらに竜巻のように上に伸びて行き、徐々に収束していく。
逃げ場を無くして対象を確実に死に至らしめる魔法だ。
確か《氷剣の嵐》は、禁忌書庫にあった著者不明の本に書かれていた。
伝説級に近い超級魔法であり、魔力も相当必要だ。
まさかあの本の著者がレイだったとは驚きだ。
やはり氷の魔法は美しい。
「幻想的ね…。」
「側近が瀕死だというのに、呑気だな。」
「瀕死?見えてもいないのによく言うわね。この程度で死ぬような鍛え方はしていないわ。本気で殺す気がなかったとはいえ、彼を舐めすぎよ。」
剣が空を斬る音が聞こえたかと思えば、《氷剣の嵐》が左右に割れた後に消えていき、中からミアスが無傷で現れた。
思い通り、心配は無用だった様子。
ミアスは《魔法吸収》でレイの魔法を吸収し、無力化したのだ。
そして剣に魔法を付与したらしく、見た目は普通の剣のはずが、今は氷剣になっていた。
「…っはは!いいねぇ、そうこなくてはな!」
レイはあらゆる魔法を放つが、ミアスはそれらを《魔法吸収》の後に剣に付与しては、2、3回重ねがけしたタイミングで振り下ろしている。
「《魔法吸収》に魔法の威力は関係ないのか…?それならばこれは相性が悪い。ここは……。」
派手に広範囲魔法を連発し始めたレイ。
攻撃範囲と手数の多さで押し切ろうという腹積もりだろう。
それでもミアスは涼しい顔で《魔法吸収》を駆使しながら戦っている。
途中、一点集中の攻撃魔法を広範囲魔法に忍ばせて放っていたことから、派手な魔法は本命を隠すための囮に過ぎないのだと察した。
「だとしてもこれは…。」
ミアスの実力、ひいてはレイの賢者としての実力を測るためとはいえ、やり過ぎだ。
目の前が炎魔法の煙や土魔法の土煙やらで散々になっている。
「剣への付与は3回が限界か?もっと見せてくれ!!」
レイは知っていて知らない振りをし、ミアスの実力を限界まで引き出そうとしている。
私から見ればいい迷惑だ。
これ以上の模擬戦は必要ないと判断した私は、レイが発動させようとしていた魔法陣を、《魔刃眼》を発動させた状態で睨んだ。
パリイィィン という大きい音とともに、両者は驚いて動きを止めた。
「さて、レイ。これ以上続ける必要があるのかしら。」
「必要だと判断したからこそ、こうして戦っているのだろう。というか、魔法陣をどうやって割った?」
「タネを明かす訳ないわ。そもそも話を逸らさないで欲しいわね。ミアスの実力証明は十分でしょう。冒険者は、いざという時の為に実力を隠すものよね。」
「まぁそうだな。すまなかった。つい楽しくなってな。」
「はぁ…。それに……。」
「それに、何だ?」
「……剣への付与は無制限。知っているでょう?」
私はレイを睨みつつそう言った。
顔色を変えるレイ。
さらには睨み返してきた。
しかし視線を逸らし、負けたと言わんばかりに溜息を吐く。
「やはり無理だったか…。」
対するレイは、《飛行》を使い距離を取った。
「恐ろしいな。初手で終わらせる気だっただろう?」
「そんなつもりはない。賢者なら、あの程度は避けられて当然だろ?」
「っははは!言ってくれるじゃないか。そういう奴は嫌いじゃない!」
ミアスの挑発を、レイは笑って流した。
そして今度は《火球》や《炎槍》を大量に放ち始める。
次から次へと魔法を発動させ、常に10を超える魔法を同時に操っていた。
この世界では、5つの魔法を同時に扱うことが出来れば、十分上位魔法使いに入る。
私は試していないので、現在どの程度魔法を同時に発動出来るのかは不明だが、レイも本気ではないだろう。
そしてそれらの魔法を軽々と避けているミアスだが、ある一点に誘導されているように思える。
ミアスもその事に気付いており、避けるだけではなく反撃に出た。
「《隔絶する暗黒》。」
そうミアスが唱えた瞬間、レイを結界ごと球形の闇が包み込んだ。
内部は真っ暗だろう。
視界を奪い、魔法を撃たせないのが目的と考えられる。
それに一時的にだが、行動も制限出来る。
しかしレイは直ぐに結界を破った。
「アタシを捕らえたつもりかい?あの程度──っ!?」
レイが結界に閉じ込められている間に、ミアスは一気に距離を詰めていた。
ほんの数秒の間に…。
真後ろから、気配なく剣が振り下ろされる。
反応が遅れたレイは、自身に張ってあった結界をミアスによって割られた。
だがすぐさま距離を取り、剣の直撃を避けた。
それでもかすり傷は与えられたようで、回復魔法を使用している。
「……《隔絶する暗黒》は破られることを想定した、ただの時間稼ぎだったというわけか…。」
「本気を出さないと負けてしまうぜ?」
「…生意気だな。大言壮語……というわけではないのが残念だ。ならば少し、本気を出すとしよう。」
抑えていた魔力を放ち、レイの溢れる魔力が増大した。
目に見えて分かる強者感。
相手を威圧する為にあえて可視化した魔力を放っている。
ミアスもさすがに怖気付いて……はいなかった。
私も動じていないのだが。
「ほう?この魔力を見ても怖気付かないか。」
「もっと怖い主がいるんでな。」
「まぁ、この程度ならそうだろうな。だが──《氷剣の嵐》。」
レイがそう唱えると氷でできた無数の剣が出現し、ミアスを取り囲むように渦を巻き始めた。
さらに竜巻のように上に伸びて行き、徐々に収束していく。
逃げ場を無くして対象を確実に死に至らしめる魔法だ。
確か《氷剣の嵐》は、禁忌書庫にあった著者不明の本に書かれていた。
伝説級に近い超級魔法であり、魔力も相当必要だ。
まさかあの本の著者がレイだったとは驚きだ。
やはり氷の魔法は美しい。
「幻想的ね…。」
「側近が瀕死だというのに、呑気だな。」
「瀕死?見えてもいないのによく言うわね。この程度で死ぬような鍛え方はしていないわ。本気で殺す気がなかったとはいえ、彼を舐めすぎよ。」
剣が空を斬る音が聞こえたかと思えば、《氷剣の嵐》が左右に割れた後に消えていき、中からミアスが無傷で現れた。
思い通り、心配は無用だった様子。
ミアスは《魔法吸収》でレイの魔法を吸収し、無力化したのだ。
そして剣に魔法を付与したらしく、見た目は普通の剣のはずが、今は氷剣になっていた。
「…っはは!いいねぇ、そうこなくてはな!」
レイはあらゆる魔法を放つが、ミアスはそれらを《魔法吸収》の後に剣に付与しては、2、3回重ねがけしたタイミングで振り下ろしている。
「《魔法吸収》に魔法の威力は関係ないのか…?それならばこれは相性が悪い。ここは……。」
派手に広範囲魔法を連発し始めたレイ。
攻撃範囲と手数の多さで押し切ろうという腹積もりだろう。
それでもミアスは涼しい顔で《魔法吸収》を駆使しながら戦っている。
途中、一点集中の攻撃魔法を広範囲魔法に忍ばせて放っていたことから、派手な魔法は本命を隠すための囮に過ぎないのだと察した。
「だとしてもこれは…。」
ミアスの実力、ひいてはレイの賢者としての実力を測るためとはいえ、やり過ぎだ。
目の前が炎魔法の煙や土魔法の土煙やらで散々になっている。
「剣への付与は3回が限界か?もっと見せてくれ!!」
レイは知っていて知らない振りをし、ミアスの実力を限界まで引き出そうとしている。
私から見ればいい迷惑だ。
これ以上の模擬戦は必要ないと判断した私は、レイが発動させようとしていた魔法陣を、《魔刃眼》を発動させた状態で睨んだ。
パリイィィン という大きい音とともに、両者は驚いて動きを止めた。
「さて、レイ。これ以上続ける必要があるのかしら。」
「必要だと判断したからこそ、こうして戦っているのだろう。というか、魔法陣をどうやって割った?」
「タネを明かす訳ないわ。そもそも話を逸らさないで欲しいわね。ミアスの実力証明は十分でしょう。冒険者は、いざという時の為に実力を隠すものよね。」
「まぁそうだな。すまなかった。つい楽しくなってな。」
「はぁ…。それに……。」
「それに、何だ?」
「……剣への付与は無制限。知っているでょう?」
私はレイを睨みつつそう言った。
顔色を変えるレイ。
さらには睨み返してきた。
しかし視線を逸らし、負けたと言わんばかりに溜息を吐く。
「やはり無理だったか…。」
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