転生魔法伝記〜魔法を極めたいと思いますが、それを邪魔する者は排除しておきます〜

凛 伊緒

文字の大きさ
上 下
84 / 94
5章 王都上空決戦

第82話 吸収結界

しおりを挟む
「──っ!」


眠りについていた私は、王都上空に突然現れた巨大な魔力反応を感知し、飛び起きるように目を覚ました。
常時発動させている《魔力感知ディテクション》は、ある一定以上の魔力を自身を中心とする半径1km以内に感知した場合、自動で知らせてくるようにしているのだ。


「リアラ!」


どうやらミアスも気付いていた様子。
流石は私の側近だ。
…と、感心している場合ではなかった。
魔法で着替えを一瞬の内に終わらせ、私とミアスは直ぐさま王城の外へと出た。


「なっ……。」


空を見上げ、言葉を失った。

上空を飛行していたもの、それは倒したはずのドラゴンだったのだ。
しかし倒したドラゴンが復活しているはずはない。
さらには魔力量が強化され、身体も巨大になっているのだ。
ジルディガーにかけた魔法が解けた反応や、ドラゴンから発せられている魔力が彼の魔力と酷似しているということもない。
ならば何故…。


「でかい反応が急に現れたかと思えば…。」


誰かが転移してきた反応を感知したかと思えば、宙に浮く私の隣にレイが現れた。
国家存亡の危機だというのに、涼しい顔をしている。
だがそれは私も同じだった。
なので彼女に何も言えやしない。


「レイさ……ファルさん。」

「呼び捨てで良いって。まぁ基本的にはファルと呼んでくれ。ついでに敬語禁止だ。」

「……なら遠慮なく…っと。」


会話中にこちらに向けて放たれたブレスを、難なく結界にて防ぐ。
防ぐと言うよりは、魔力に変換して吸収したと言った方が正しいだろう。

ブレスはドラゴンが扱う特殊な魔法。
魔法であるならば、元を辿れば魔力だ。
ジルディガーとの戦いの後、ブレスのような広範囲の魔法に対処する方法を、何をしている時も考えていた。
そうして出した結論が、『当たる前に魔力に戻してしまえばいい』ということだった。
変還され魔法が魔力に戻った後、それらは私の生み出した異空間に自動的に転送する。
自分の魔力が尽きたことは無いが、もしもの為の保険として貯めておくのだ。

魔力に戻す為にも魔法を用いているので、魔力を消費する。
しかし結界で防ぐよりも効率的かつ弾かれた魔法による周囲への被害も無い。
極めつきは魔力を吸収できる。
まさに一石三鳥な魔法を生み出したのだ。
名は《吸収結界》といい、そのままだ。

レイやミアスは隣にいたが為に、私の吸収結界で無事だった。


「ほう、やはり流石だな。手を貸した方が良いかと思ったんだが…。」

「私が防げると分かっていて隣に近寄って来たでしょう…。」

「それは『気のせい』というやつだ。」


にやつきながら私にそう言ったレイ。
彼女は中々良い性格をしているようだ……。


「にしても、魔法を魔力に変還して吸収か…。凄い魔法を生み出したものだ。」


流石は賢者だと思った。
一度見ただけで魔法の効果を正確に読み解いている。
ミアスには軽く話していたが、何も知らない者がこの魔法を見て理解できるのは、賞賛に値するのだ。


「使ったのは今が初めてだけれどね。」

「そうか……って、え、え?…はぁ!?」


爆弾発言をした私に対し、全力で驚くレイの姿が面白かったのは内緒である。
事実、魔法陣を完成させてはいたが、その魔法が本当に思い通りの効果を発揮するのかどうかは分からなかった。
もし失敗していたとしても結界を張っていたので、死ぬことはなかったが。


「ちょ、おま……ま、本気マジで言ってるのか…?!」

「マジよ。元々ブレスのような広範囲魔法に対抗する結界魔法として生み出したから、実験も出来て丁度良かったのよ。」

「……。」


口を開けて固まっているレイ。
思わず笑ってしまった。


「…全く、命知らずのガキだな…。」

「ガキとは心外ね。私はもう15歳、この国では大人よ。」

「アタシからすれば誰だってガキさ。15歳なんてまだまだだろう。」

「まぁファルは見た目とは違ってご老体……。」

「んー?」

「一応気にしてるのね…。あ、それはそうと、何故ジルディガーが召喚したドラゴンが攻めてきた時、対応しなかったの?」


率直な疑問をぶつけてみた。
私は死魔の森に居たので、王都の状況に気付くのが遅れてしまった。
だがレイが居たのならば、被害など微塵も出なかったはずだ。

因みにこうして会話をしている今も、ドラゴンはブレスを放ち続けている。
それらは全て常時展開させた吸収結界で防いでいるので、意味を成していないが…。


「あの時、アタシは隣国に居たからな。各ギルド支部を、年に1回ずつ直に見に行っているのさ。現在はリアラが張った結界があるから、アタシは王都や王城に結界を張っていなかった。だから気付かなかったんだ。ガイジスから《連絡蝶フーライ》を受け取った時は、そりゃ驚いたさ。」

「なるほどね…。」


これもジルディガーの策だったのだろう。
Sランク冒険者すらいない状況を狙った、つまりはそういうことだ。


『ガアァァァアァ!』

「おっ…と、そろそろ倒さないといけないようだな。」

「せっかくだからミアス、倒して良いわよ。」

「そう言ってくれるのはありがたいが、リアラも魔法を試したいんじゃないのか?」

「試したい魔法はもう試したわ。次はミアスがファルに実力を証明する番なのよ。」

「了解。」


そう言うと、ミアスはドラゴンを引き付けて私とレイから離れた。
ミアスに任せたのは、決して倒すのが面倒だったからという理由ではない。
…決して。
王都上空の広範囲に吸収結界を平たく発動させておいたので、ドラゴンがブレスを放ったとしても王都に被害はない。
これでミアスも心置きなく戦えるだろう。
そう思っていると、レイが少し心配そうな声で聞いてきた。


「…正直言って、ミアスには荷が重くないか?」

「そうかしら?」

「彼の魔力総量、リアラの10分の3程度か?」

「…まぁそのくらいね。」

「なら手こずりそうだな。寧ろ1人では厳しい可能性もある。」


現在、本当は10分の1にも満たないほどの差がある。
だが賢者ですら気付けないように、完璧に魔力制御をして偽っていた。
とはいえ……


「ファル、ミアスを舐めすぎよ。」


私がそう言った瞬間、ミアスは剣でドラゴンの急所である首を斬った──
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革

うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。 優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。 家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。 主人公は、魔法・知識チートは持っていません。 加筆修正しました。 お手に取って頂けたら嬉しいです。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜

EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」 優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。 傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。 そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。 次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。 最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。 しかし、運命がそれを許さない。 一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか? ※他サイトにも掲載中

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *無断転載、無断翻訳を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

処理中です...