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5章 王都上空決戦
第75話 《対》魔法
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戦闘を開始してから、数分が経った。
破壊行動を続けるドラゴンを倒すべく魔法を放つが、ジルディガーに妨害される。
それならばと、ドラゴンの近くに向かおうとするがそれすらも阻まれた。
「鬱陶しいわね…。」
「さて、そろそろ彼らには死んでもらおうか。」
「…彼ら?」
そう言うと、ジルディガーは何やら魔法で指示を出した。
するとドラゴンが王城に向かって飛んで行く。
まさか彼の狙いは……
「まさか結界を…!?」
「今頃、王城内部も大変なことになっているさ。」
「内部……?」
嫌な予感がして王城に《魔力感知》を発動させると、1つの強大な魔力が動き回っていた。
動き回ると言うより、暴れ回っていると言った方が良いだろう。
騎士達が応戦しているが、まるで歯が立っていない。
ミアスも異変には気が付いているはず。
しかし魔物の掃討に追われて、王城にまで向かう余裕はないだろう。
「……。」
「気付いたようだね。」
「…狙いは何?」
「狙っている場所の通りだ。」
王城……つまり狙いは国王ということになる。
或いは王族なのかもしれない。
「欲を言えば王城にいる者……、貴族のみならず一兵士に至るまで、全員に死んでもらいたくてね。」
「出来ないと分かっているじゃない。」
「そりゃそうさ。君がいる限り、現実的じゃない。だからドラゴンを従魔に出来たのは幸運だった。この8年、王国の者を皆殺しにするためにどれほど準備してきたことか。」
ジルディガーはかなりの恨みがある様子…。
王城で暴れている者は彼の妹のように思える。
魔力が酷似しているから分かったが、これはもはや彼の魔力では?
「王城に居るのは妹さんかしら。」
「……。」
「…あなたが王国に恨みを持つ理由が、何となく分かったわ。」
憶測でしかないが、ジルディガーの妹は王国兵、或いは貴族などの王国に順ずる者によって殺されたのだろう。
何故殺されてしまったのか、理由は当然分からない。
彼も話す気は無いようだ。
しかし私はバジュスの心を読んだ時、気になる部分があった。
「デルフィー大戦…。」
そう呟いた私に彼は反応した。
バジュスの記憶にあった、デルフィー大戦にて王国が隠滅した戦争犯罪と言える情報。
それらはジルディガーから聞いたものだったようだ。
今王城内で暴れ回っている彼女が、情報の中に出てくる『殺された妹』なのだろう。
名は確か『ディルナ』だったはず。
何故死んでいるはず彼女が生きているのか気になるところだが、黒魔法の儀式者ならば死体を操ることも可能なのかもしれない。
普通ならば死者を弄ぶような行為だが、相手が家族であるならば話は変わってくるだろう。
「……お前に何が分かる…。」
「……。」
「全てを奪っていったお前らに、何が分かるって言うんだ!」
「……。」
デルフィー大戦は約3年間も続き、終結したのは私が生まれる5年前の事。
私が生まれた年に新たな条約が結ばれたのだ。
大戦で戦地となった村の人々が追い出されたのが戦闘開始前だとすると、ジルディガーは現在30歳を超えているはず。
そして人生の半分以上、少なくとも23年間は王国を恨み続けてきたのだ。
そんな彼が、復讐のためにどれほど準備をしてきたのか想像もつかない。
バジュスすら利用するような相手なのだから、きっと私に対抗する為の手段も考えてきているのだろう。
「《魔法結界──対リアラ・フィールア》」
ジルディガーがそう唱えると、彼の周囲に結界が張られた。
魔法は効果を絞るほど強力になるというのが性質の1つだ。
つまり通常の防御結界より頑丈になっているのは確実。
「面倒ね。」
「余裕でいられるのも今のうちだ。」
「それはこちらの台詞よ。」
その時、ミアスからの《連絡蝶》が私の元に飛んできた。
内容は王城内の様子だった。
王族は全員無事であり、騎士達も負傷者は出ているが死者はいないとの事。
全て暗部おかげだったようで、今はミアスが少女を抑えているそうだ。
上手く誘導し、王城の外で戦っているという。
「なっ!?何故ディルナが外に…!」
「私の側近は優秀だからね。」
「…なるほど、瞬滅の仕業か。」
本当に優秀だ。
ある程度街の魔物を倒したところで、残りを冒険者達に任せたのだろう。
暗部が王族を守ってくれていると信用しているが故に、ベストなタイミングでディルナを抑えに向かったと考えられる。
だからと言って、悠長にしている暇は無い。
ドラゴンによって今にも王城の結界は破られようとしているのだ。
「……さて、あなたとあのドラゴンの実力は大体知ることが出来たわ。」
「まだ10分も経っていない状況でそう言われるのは癪だな。そういうことは、これから発動させる魔法を見てから言って欲しい……なっ!」
「…っ!?」
その瞬間、ジルディガーの前に巨大な魔法陣が浮かび上がった。
戦闘中に構築していたようだ。
魔法陣の大きさと、複数個重なっていることから大規模魔法だと分かる。
だがそれらに重なるもう1つの小さな魔法陣に、違和感を覚えた。
「一点集中の攻撃魔法陣…!」
「その通りだ。だけど気付いたところでもう何も出来ないさ。これには『リアラ・フィールア』に対して追尾する魔法陣も組み込んでいる。耐えられるものなら耐えてみろ!」
ジルディガーは自信満々で、勝ち誇ったような顔をしている。
残り5秒も待たずして魔法は発動するだろう。
広範囲に攻撃する大規模魔法を一点集中させているだけで威力がかなり上がる。
それが対『リアラ・フィールア』となれば、私に対してのみさらに威力が跳ね上がるのだ。
さすがの私でも、この攻撃に耐えられるかは分からない。
これだけ魔法を組み込むとは…。
面白いものを見せてもらったお返しは、きっちりしなくてはならない。
私は瞼を閉じ、ある魔法を発動させた状態で、今度はゆっくりと魔法陣に向かって瞼を開いた。
魔法陣の一角に、亀裂が生じる。
そして パリィン という音と同時に、魔法陣が砕け散った。
破壊行動を続けるドラゴンを倒すべく魔法を放つが、ジルディガーに妨害される。
それならばと、ドラゴンの近くに向かおうとするがそれすらも阻まれた。
「鬱陶しいわね…。」
「さて、そろそろ彼らには死んでもらおうか。」
「…彼ら?」
そう言うと、ジルディガーは何やら魔法で指示を出した。
するとドラゴンが王城に向かって飛んで行く。
まさか彼の狙いは……
「まさか結界を…!?」
「今頃、王城内部も大変なことになっているさ。」
「内部……?」
嫌な予感がして王城に《魔力感知》を発動させると、1つの強大な魔力が動き回っていた。
動き回ると言うより、暴れ回っていると言った方が良いだろう。
騎士達が応戦しているが、まるで歯が立っていない。
ミアスも異変には気が付いているはず。
しかし魔物の掃討に追われて、王城にまで向かう余裕はないだろう。
「……。」
「気付いたようだね。」
「…狙いは何?」
「狙っている場所の通りだ。」
王城……つまり狙いは国王ということになる。
或いは王族なのかもしれない。
「欲を言えば王城にいる者……、貴族のみならず一兵士に至るまで、全員に死んでもらいたくてね。」
「出来ないと分かっているじゃない。」
「そりゃそうさ。君がいる限り、現実的じゃない。だからドラゴンを従魔に出来たのは幸運だった。この8年、王国の者を皆殺しにするためにどれほど準備してきたことか。」
ジルディガーはかなりの恨みがある様子…。
王城で暴れている者は彼の妹のように思える。
魔力が酷似しているから分かったが、これはもはや彼の魔力では?
「王城に居るのは妹さんかしら。」
「……。」
「…あなたが王国に恨みを持つ理由が、何となく分かったわ。」
憶測でしかないが、ジルディガーの妹は王国兵、或いは貴族などの王国に順ずる者によって殺されたのだろう。
何故殺されてしまったのか、理由は当然分からない。
彼も話す気は無いようだ。
しかし私はバジュスの心を読んだ時、気になる部分があった。
「デルフィー大戦…。」
そう呟いた私に彼は反応した。
バジュスの記憶にあった、デルフィー大戦にて王国が隠滅した戦争犯罪と言える情報。
それらはジルディガーから聞いたものだったようだ。
今王城内で暴れ回っている彼女が、情報の中に出てくる『殺された妹』なのだろう。
名は確か『ディルナ』だったはず。
何故死んでいるはず彼女が生きているのか気になるところだが、黒魔法の儀式者ならば死体を操ることも可能なのかもしれない。
普通ならば死者を弄ぶような行為だが、相手が家族であるならば話は変わってくるだろう。
「……お前に何が分かる…。」
「……。」
「全てを奪っていったお前らに、何が分かるって言うんだ!」
「……。」
デルフィー大戦は約3年間も続き、終結したのは私が生まれる5年前の事。
私が生まれた年に新たな条約が結ばれたのだ。
大戦で戦地となった村の人々が追い出されたのが戦闘開始前だとすると、ジルディガーは現在30歳を超えているはず。
そして人生の半分以上、少なくとも23年間は王国を恨み続けてきたのだ。
そんな彼が、復讐のためにどれほど準備をしてきたのか想像もつかない。
バジュスすら利用するような相手なのだから、きっと私に対抗する為の手段も考えてきているのだろう。
「《魔法結界──対リアラ・フィールア》」
ジルディガーがそう唱えると、彼の周囲に結界が張られた。
魔法は効果を絞るほど強力になるというのが性質の1つだ。
つまり通常の防御結界より頑丈になっているのは確実。
「面倒ね。」
「余裕でいられるのも今のうちだ。」
「それはこちらの台詞よ。」
その時、ミアスからの《連絡蝶》が私の元に飛んできた。
内容は王城内の様子だった。
王族は全員無事であり、騎士達も負傷者は出ているが死者はいないとの事。
全て暗部おかげだったようで、今はミアスが少女を抑えているそうだ。
上手く誘導し、王城の外で戦っているという。
「なっ!?何故ディルナが外に…!」
「私の側近は優秀だからね。」
「…なるほど、瞬滅の仕業か。」
本当に優秀だ。
ある程度街の魔物を倒したところで、残りを冒険者達に任せたのだろう。
暗部が王族を守ってくれていると信用しているが故に、ベストなタイミングでディルナを抑えに向かったと考えられる。
だからと言って、悠長にしている暇は無い。
ドラゴンによって今にも王城の結界は破られようとしているのだ。
「……さて、あなたとあのドラゴンの実力は大体知ることが出来たわ。」
「まだ10分も経っていない状況でそう言われるのは癪だな。そういうことは、これから発動させる魔法を見てから言って欲しい……なっ!」
「…っ!?」
その瞬間、ジルディガーの前に巨大な魔法陣が浮かび上がった。
戦闘中に構築していたようだ。
魔法陣の大きさと、複数個重なっていることから大規模魔法だと分かる。
だがそれらに重なるもう1つの小さな魔法陣に、違和感を覚えた。
「一点集中の攻撃魔法陣…!」
「その通りだ。だけど気付いたところでもう何も出来ないさ。これには『リアラ・フィールア』に対して追尾する魔法陣も組み込んでいる。耐えられるものなら耐えてみろ!」
ジルディガーは自信満々で、勝ち誇ったような顔をしている。
残り5秒も待たずして魔法は発動するだろう。
広範囲に攻撃する大規模魔法を一点集中させているだけで威力がかなり上がる。
それが対『リアラ・フィールア』となれば、私に対してのみさらに威力が跳ね上がるのだ。
さすがの私でも、この攻撃に耐えられるかは分からない。
これだけ魔法を組み込むとは…。
面白いものを見せてもらったお返しは、きっちりしなくてはならない。
私は瞼を閉じ、ある魔法を発動させた状態で、今度はゆっくりと魔法陣に向かって瞼を開いた。
魔法陣の一角に、亀裂が生じる。
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