74 / 94
5章 王都上空決戦
第72話 異変の元凶
しおりを挟む
『死魔の森』中心近くに置かれていたのは、禍々しい魔力を放つ装置。
周囲の凍った木々を見ると、装置に影響されて枯れている。
装置のように見える『ソレ』は、巨大なキューブに複数の魔法陣が描かれた魔法具だった。
少し調べて分かったのは、中は空洞になっており、魔物の核となる『魔石』が動力源として大量に入れられているということ。
数年間は軽く持つだろう。
「……この魔法具は、《魔物化》と《狂乱化》の魔法がかかった魔力を、半径約500mまで放つことが出来るようね。」
「その2つって……。」
「はい。世界で禁忌魔法に指定されている、黒魔法です。」
「禍々しいわけね…。」
誰がどう見ても人工的な魔法具だ。
そんなことを考えつつ見ていると、上空に鳥が飛んで行った。
しかしその様子はみるみるおかしくなっていく。
小鳥が苦しんだかと思うと巨大化し、目が赤くなって魔物と化したのだ。
そして、こちらにかなりのスピードで突っ込んできた。
それを易々とガイジスが叩き切る。
「これは魔物が増えるわけだな。」
死魔の森の異変とは、魔物の急激な増加並びに一部の木々が枯れていること。
さらには元々魔力の濃い森がより密度を増しているなど、複数の異常が見つけられたのだ。
その全ての元凶がこの魔法具だろう。
「ギルマス、魔法具を破壊しても?」
「勿論いいぞ。というか早くやってくれ。」
「了解したわ。──《氷嵐華》。」
私は『魔刃眼』にて魔法陣を破壊してから、キューブ型魔法具に向かって魔法を放つ。
氷の花びらが渦を巻き、魔法具を傷付けていく。
そして最後に魔法具の真下の地面から巨大な氷の薔薇が咲いて、破壊した。
「「「うわぁ…。」」」
3人はまたしても立ち尽くしている。
《旋風氷河》の範囲一点集中のような魔法で、威力を強めただけなのだが…。
すると、ミアスがふと聞いてきた。
「リアラ、氷魔法が多いのは何故なんだ?」
「見栄えが綺麗で、扱いやすいからよ。殺傷能力が高いという所もあるわね。」
氷というのは形次第で幻想的になり綺麗なのだ。
そして尖らせると威力もかなり増す。
これほど使い勝手の良い魔法はないと思えるほどに、重宝していた。
「さて、破壊したこの魔法具だけれど……、持って帰ってもいいかしら?」
「王女でありAランク冒険者でもあるリアラなら反論は無い……が、報告はしてくれよ。」
「当たり前よ。隅々まで調べ尽くすわ…。」
「顔が怖いぞ……。」
ギルドマスターたるガイジスから許可も得た事だし、今すぐにでもこの魔法具を調べたいところだが、先ずは出来る限り魔物を減らしてこの森を出なければならない。
ここはまたもや大規模魔法の出番だろう。
しかし森を壊すことは自然破壊と同義なのでしてはいけない。
精霊であるリーゼに喧嘩を売ることになってしまうからだ。
木々を凍らせただけでも、少しムッとした表情になっていたので、気を付けなければならない…。
とりあえず……
「──解除。」
私がそう言うと、一瞬にして氷河が魔物ごと粉々に砕け散った。
氷と魔物のみなので、木々は問題なく生えている。
「「「……。」」」
「《旋風氷河》は解除したわ。」
「解除……出来たんだな…。」
「しかも綺麗に木々だけ残しているわね…。」
今日は何故か驚かれることが多い。
3人の反応をいちいち気にしてはいられないので、話を進めようと思う。
「あの魔法具の所為で、魔力が乱されて魔物が大量に発生しているわ。出来る限り数を減らしながら帰る、という事でいいのよね?」
「あ、ああ。」
魔物とは本来、自然発生するもの。
魔力の流れが普通ではない、溜まり場のような場所で発生するのだ。
突然魔力が渦を巻き始め、魔石を持った様々な姿をした魔物が現れる。
強さはその場の魔力密度や量に左右され、過去にはドラゴンのような姿をした巨大な魔物が生まれたのだとか。
そして今、100m先に魔物が大量発生しており、この場所もいつ現れてもおかしくない状況だった。
先ず私は周囲の魔力を出来る限り安定化させる。
この作業はかなり集中力を使ったが、リーゼが手伝ってくれたのでまだ楽だった。
ありがたいことだ。
「魔物がすぐそこまで来ているぞ。」
「リアラ、ここは俺とガイジスで殲滅してこよう。リーゼ様と少し休憩していてくれ。」
「分かったわ。ありがと…う………っ!?」
走り去って行く2人を他所に、脳内に走った衝撃。
これが何を意味するのか、直ぐに理解した。
最も起きて欲しくない事が起こったのだと…。
「リアラ、顔色が悪いわよ?」
ミアスとガイジスは迫って来ている魔物を殲滅していく一方、リーゼが私を心配するように顔を覗き込んできた。
私は驚きのあまり、ただ一言だけ呟いた。
「割れた──
周囲の凍った木々を見ると、装置に影響されて枯れている。
装置のように見える『ソレ』は、巨大なキューブに複数の魔法陣が描かれた魔法具だった。
少し調べて分かったのは、中は空洞になっており、魔物の核となる『魔石』が動力源として大量に入れられているということ。
数年間は軽く持つだろう。
「……この魔法具は、《魔物化》と《狂乱化》の魔法がかかった魔力を、半径約500mまで放つことが出来るようね。」
「その2つって……。」
「はい。世界で禁忌魔法に指定されている、黒魔法です。」
「禍々しいわけね…。」
誰がどう見ても人工的な魔法具だ。
そんなことを考えつつ見ていると、上空に鳥が飛んで行った。
しかしその様子はみるみるおかしくなっていく。
小鳥が苦しんだかと思うと巨大化し、目が赤くなって魔物と化したのだ。
そして、こちらにかなりのスピードで突っ込んできた。
それを易々とガイジスが叩き切る。
「これは魔物が増えるわけだな。」
死魔の森の異変とは、魔物の急激な増加並びに一部の木々が枯れていること。
さらには元々魔力の濃い森がより密度を増しているなど、複数の異常が見つけられたのだ。
その全ての元凶がこの魔法具だろう。
「ギルマス、魔法具を破壊しても?」
「勿論いいぞ。というか早くやってくれ。」
「了解したわ。──《氷嵐華》。」
私は『魔刃眼』にて魔法陣を破壊してから、キューブ型魔法具に向かって魔法を放つ。
氷の花びらが渦を巻き、魔法具を傷付けていく。
そして最後に魔法具の真下の地面から巨大な氷の薔薇が咲いて、破壊した。
「「「うわぁ…。」」」
3人はまたしても立ち尽くしている。
《旋風氷河》の範囲一点集中のような魔法で、威力を強めただけなのだが…。
すると、ミアスがふと聞いてきた。
「リアラ、氷魔法が多いのは何故なんだ?」
「見栄えが綺麗で、扱いやすいからよ。殺傷能力が高いという所もあるわね。」
氷というのは形次第で幻想的になり綺麗なのだ。
そして尖らせると威力もかなり増す。
これほど使い勝手の良い魔法はないと思えるほどに、重宝していた。
「さて、破壊したこの魔法具だけれど……、持って帰ってもいいかしら?」
「王女でありAランク冒険者でもあるリアラなら反論は無い……が、報告はしてくれよ。」
「当たり前よ。隅々まで調べ尽くすわ…。」
「顔が怖いぞ……。」
ギルドマスターたるガイジスから許可も得た事だし、今すぐにでもこの魔法具を調べたいところだが、先ずは出来る限り魔物を減らしてこの森を出なければならない。
ここはまたもや大規模魔法の出番だろう。
しかし森を壊すことは自然破壊と同義なのでしてはいけない。
精霊であるリーゼに喧嘩を売ることになってしまうからだ。
木々を凍らせただけでも、少しムッとした表情になっていたので、気を付けなければならない…。
とりあえず……
「──解除。」
私がそう言うと、一瞬にして氷河が魔物ごと粉々に砕け散った。
氷と魔物のみなので、木々は問題なく生えている。
「「「……。」」」
「《旋風氷河》は解除したわ。」
「解除……出来たんだな…。」
「しかも綺麗に木々だけ残しているわね…。」
今日は何故か驚かれることが多い。
3人の反応をいちいち気にしてはいられないので、話を進めようと思う。
「あの魔法具の所為で、魔力が乱されて魔物が大量に発生しているわ。出来る限り数を減らしながら帰る、という事でいいのよね?」
「あ、ああ。」
魔物とは本来、自然発生するもの。
魔力の流れが普通ではない、溜まり場のような場所で発生するのだ。
突然魔力が渦を巻き始め、魔石を持った様々な姿をした魔物が現れる。
強さはその場の魔力密度や量に左右され、過去にはドラゴンのような姿をした巨大な魔物が生まれたのだとか。
そして今、100m先に魔物が大量発生しており、この場所もいつ現れてもおかしくない状況だった。
先ず私は周囲の魔力を出来る限り安定化させる。
この作業はかなり集中力を使ったが、リーゼが手伝ってくれたのでまだ楽だった。
ありがたいことだ。
「魔物がすぐそこまで来ているぞ。」
「リアラ、ここは俺とガイジスで殲滅してこよう。リーゼ様と少し休憩していてくれ。」
「分かったわ。ありがと…う………っ!?」
走り去って行く2人を他所に、脳内に走った衝撃。
これが何を意味するのか、直ぐに理解した。
最も起きて欲しくない事が起こったのだと…。
「リアラ、顔色が悪いわよ?」
ミアスとガイジスは迫って来ている魔物を殲滅していく一方、リーゼが私を心配するように顔を覗き込んできた。
私は驚きのあまり、ただ一言だけ呟いた。
「割れた──
1
お気に入りに追加
212
あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

野草から始まる異世界スローライフ
深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。
私ーーエルバはスクスク育ち。
ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。
(このスキル使える)
エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。
エブリスタ様にて掲載中です。
表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。
プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。
物語は変わっておりません。
一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。
よろしくお願いします。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる