転生魔法伝記〜魔法を極めたいと思いますが、それを邪魔する者は排除しておきます〜

凛 伊緒

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5章 王都上空決戦

第70話 魔力と監視

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「えぇっと……何故私達のことを…?」


私は恐る恐る聞いた。
いくら二つ名を持つ私達と言えど、人間を嫌っている精霊が知っているのは気にかかる。


「精霊族の誰もが知っているわ。理由はその魔力量よ。」

「魔力量?」

「たとえ隠していようと、精霊族にはその者が持つ魔力量を見抜くことが出来る眼を持っているの。そして個々それぞれに魔力の色というものもあるわ。そしてこの2つが、リアラの場合遠く離れていても感じるのよ。」


私とミアスは何となくだが理解が出来た。
しかしガイジスは話についてこられていないようだ。
それどころか、邪魔をしないようにと存在感を薄くしている。
分かっていないのであれば、正直に聞けば良いと思うのだが…。
仕方がないのでここは私が聞くことにした。
私としても『魔力の色』という言葉は気になるところだ。


「魔力の色というものは、属性魔法の得意不得意に関係するのですか?」

「ええそうよ。そもそも魔力を見るための眼を使うには、魔力が必要なの。でも今は魔力を消耗してしまっているから、リアラやミアスだと気付けなかったわ。周囲の魔力は感じることが出来るけれど、個人が持つ魔力はまた別物だもの。」


私も常に対面する者の魔力量を『魔刃眼ブレードアイ』にて見ている。
基本的には、対象が何者であったとしてもその者が持つ魔力の総量を知ることが出来る。
だが精霊のように制御が完璧では『精霊』ということ以外全く分からなかった。
私にとって魔力を見抜けない者は、自身より格上だと考えている。

しかし精霊族の眼は魔力を込めれば確実に見抜けるのだろう。
特別であり別格なのだと分かる。


「まぁ私達の眼も、同じ精霊族同士なら効きづらいけれど。」

「なるほど…。」

「話が逸れたわね。魔力の色というのは、その者が潜在的に持つ得意魔法の象徴の色が、魔力に現れるわ。得意魔法が火魔法であれば魔力が『赤色』で、水魔法なら『水色』といったように、纏っている魔力が色付いて見えるのよ。」


精霊は詳しく教えてくれた。
簡単に説明すると…、

火魔法が得意で水魔法が苦手な者がいたとする。
たとえ苦手でも、初級魔法程度であれば誰でも使えるというのがこの世界の常識だ。
この者の場合、精霊から見れば魔力の殆どが赤く見えるらしい。
極端に言うと、魔力の9割が赤、1割が青のような見え方となるよう。
それが私の場合だと、色が全体的に虹色というだけではなく魔力量もとてつもなく多く映るようだ。
ミアスも同様で、彼の場合だと身体強化魔法を表す無色の割合が大きいのだとか。


「リアラは生まれた時から、精霊私達にプレッシャーを与えるほどの魔力量を感じたわ。成長するにつれて、制御といった形で感知しづらくなってしまったけれど。」

「ミアスはどうなのですか?」

「彼は後天的に魔力が増えたわね。おそらくあなたと出会ってからではないかしら?」

「……言われてみればそうかもしれませんね…。」

「そんな訳だから、私達精霊は、2人を監視していたのよ。」


遠距離からでも魔力で人物を判断出来る精霊族ならではだと思った。
彼女曰く、危険という意味で私やミアスを遠距離から監視していたそう。
私達の2人の情報を常に集め、世界に害悪な存在とあらば消すことも考えていたとの事。
恐ろしい……。
精霊族とだけは敵対したくないものだ。
魔力で感知していた以上、一部の精霊以外は私とミアスの顔を知らなかったらしい。
逆に魔力を見れば分かるので、知っておこうとすらしなかったというのが正しいようだが…。


「世界に害悪な存在……。精霊族は、世界の管理者なのですか…?」


話を聞いていてそう思った。
世界にとって害を及ぼす存在を排除する…、これは正しく『管理者』のような行為だ。
もしかすると精霊は、戦争が起こらないように重要人物を見張るなどの行いをしてきたのかもしれない。


「さぁ。それに答える義理はないわね。この森を抜けるまでは守ってもらわないといけないから多少の情報は提供するけれど、何でも教えてあげるわけにはいかないわ。」

「そう……ですよね。…失礼しました。」

「でも一つだけ言えるのは、私達は住処を失わないように行動している……という事ね。」


この言葉で私は理解した。
国家間で戦争が起これば精霊の住処たる自然は破壊されていく。
おそらく精霊達はそうならないよう、時折国の重要人物を亡き者にし、世界の平和を保っているのだろう。
そう考えると、各国で稀に起こる貴族の不審死に納得がいく。
表向きには前世で言うところの心臓発作のような突然死ということにされているが、各国の王族を含めた上位貴族達は精霊の仕業だと分かっていて、あえて隠しているのだと思われる。
『戦争を起こそうとすれば精霊に殺される』、そう権力者に知らしめる意図もあるだろう。

人では精霊に敵わない。
だからこそ国も敵対しようとはせず、彼らの戦争阻止の行いを黙認している…。
中々に面白い関係性だ。


「……やはり管理者ね…。」

「今何か言ったかしら?」

「いいえ何も。情報ありがとうございます、精霊様。」

「……リーゼよ。精霊様なんて呼び方されたら、他の精霊と区別がつかないわ。」

「分かりました。では改めて、よろしくお願いしますね、リーゼ様。」

「ええ、こちらこそお願いするわ。」

「では先を急ぎましょうか。」


少しだけ信頼された気がした。
実際のところは、名前呼びでなければ呼ばれたとしても分かりにくいという理由だろう。
とはいえ精霊族と知り合えたのは大きい。
いずれは彼らの住処、『精霊の里』にも行ってみたいものだ。
『死魔の森』調査の間で、親交を深められると良いのだが……
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