転生魔法伝記〜魔法を極めたいと思いますが、それを邪魔する者は排除しておきます〜

凛 伊緒

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5章 王都上空決戦

第68話 精霊

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「あ、あれは何だ!?」


進んでいる途中、急に驚いた声を出すガイジス。
彼が指の指す方を見ると、女の人の様なものがこちらに向かって進んで来ている。


「人…?」

「こんな場所に人なんざ居るわけねぇだろ!」

「それはそうだけれど……。もしかしてギルマスは…、幽霊が怖いの?」

「ゆーれい?ゆーれいってなんだ?!」

「ああ、この世界ではレイスだったわね。魔物の一種とされている……だったかしら?」


人型の魔物『レイス』。
物理攻撃が一切通じない、不気味と気味悪がられる魔物である。
と言っても前世での『幽霊』と同じような存在だ。 
生きていた頃の未練や後悔が強ければ強いほど、その存在は可視化される。
前世の幽霊と違う点は、『誰にでも見える』というところだろう。
その辺は魔物だと思える部分でもある。


「怖いってわけじゃないが、あ、あいつには物理攻撃が効かないだろ…?」

「別に強がらなくてもいいと思うわよ?」

「つ、強がってねぇよ!」


急に子供のように見えてきた……。
口調もいつもより威厳がない。人が変わったようだ…。
私も初めて見た時は驚き怖かったが、レイスは物理攻撃が一切効かない代わりに魔法に弱い。
神官が使う神聖魔法と呼ばれる魔法で攻撃しなくとも、炎属性などの普通の魔法で倒せるのだ。
つまり魔法に対してはとてつもなく弱いのである。


「はぁ……。ギルマス、いつものように剣に魔法を付与して切ればいいのよ。」

「だが物理攻撃は効かないんだぞ!?」

「剣に何を付与しているの。」

「あっ…。」

「それだって付与魔法の一種、つまりは立派な魔法なのよ?レイスに効かないわけがないと思うけれど。」


今まで怖がってばかりで、ガイジスの攻撃が効かないと思ってきたのだろう。
間抜けな一面もあるものだ。
強面なはずなのに、ただのおっさんにしか見えなくなってくる…。


「リアラ、ちょっと待て。」

「どうしたの?」


そう言うと、ミアスはレイスを指差した。


「あれ、レイスじゃないと思うぞ。」

「えっ?」


よく見ると、確かにレイスにしては不審な点があった。
実態があるのだ。
木々をすり抜けるレイスと違い、木々を避けて進んで来ている。
だが人にしては明らかに様子が変だ。
さらには少し浮いている。


「まさか……精霊とか言わないわよね…。」

「そのまさかだろうな…。だが精霊が何故こんな所にいるんだ?」


『精霊族』、その種族は自然を好み、人が寄り付かないような森の秘境で暮らしている種族だ。
魔力とも密接な関係にあり、全ての魔法を詠唱せず使用することが出来る。
私にとっては最も生まれたかった種族とも言えた。
しかし精霊は、木々を伐採し自然を破壊していると言っても過言では無い人間族を嫌っている。
滅多に姿を現さないので、存在自体が怪しまれていたのだ。
さらに死魔の森では、多すぎる魔力が原因で木々が変な方向に曲がったりしている。
故に精霊が寄り付かない場所とされていた。


「たとえ精霊だとしても、様子がおかしいわよ。」

「ここの魔力に侵されてるんじゃないか?」

「澄んだ魔力を扱う精霊にとって、魔物を生み出すこの魔力は毒になるでしょうね。」

「お、おい!2人で話を進めないでくれ…。」

「それはごめんなさい。でも状況が状況だから、無理にでも話についてきてほしいわ。」


ガイジスは難しそうな顔をしていたが、声はかけたのでとりあえず放置である。
様子のおかしい精霊をこのままにしておくのは良くないだろう。
それに何故この場所に居たのかを確かめなければいけない。
魔力を感じ取りやすい彼らのことだ、きっと理由があってここに来たに違いない。


「ミアス、頼めるかしら。」

「了解。」


私の言葉に、ミアスはすぐさま魔法にて精霊を拘束した。
だが流石は精霊といったところで、ミアスの魔法は長くは持たないようだ。
私はすかさず精霊に手を翳し、彼女を取り囲んでいる淀んだ魔力を跳ね除ける。
すると精霊は気を失ってその場に倒れてしまった。


「仕方がないわ。今日はここに結界を張って、彼女の目が覚めるのを待ちましょう。」


ガイジスとミアスも賛成し、精霊が目覚めるまで休憩することにしたのだった。
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