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5章 王都上空決戦
第67話 魔力密度と制御
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数日後、『死魔の森』から少し離れた街にてギルマスことガイジスと合流した私とミアス。
特に変装はしていないので、周囲から見られることもあったが気にしていなかった。
この街は死魔の森から1番近い。
少し離れているとはいえ魔物の襲撃もよくあるので、住人全てが戦える者達だ。
手練の元冒険者や騎士団、統治している侯爵家の兵などが毎日魔物を討伐している。
そうしてこの街の平和は守られているのだ。
「さてギルマス。私達は準備が完了しているわ。」
「俺も問題は無い。」
「なら瞬間移動で行きましょう。」
「……え?」
ガイジスの驚きの声と同時に、視界が光に包まれる。
次に周囲を見渡した時には既に死魔の森に入っていた。
「調査を開始しましょう。気を抜かないようにと言っても、ギルマスは私とミアスよりも経験豊富だから、心配は要らないと思うけれど。……ギルマス?」
「え、あ…、ああ。そうだな…。」
瞬間移動したことに驚いているのだろう。
この魔法を使える者自体がかなり少ない為、無詠唱で発動したことがよりガイジスを驚かせたようだ。
しかしすぐに周囲を警戒し始めたので、流石はSランク冒険者だと思った。
「……早速お出ましか…。」
熊型の魔物や虫の魔物など、様々な魔物が前方から向かって来ていた。
数は20程度だが全てBランク以上の魔物だ。
「ギルマス。ここは頼んでもいいかしら?」
「無論だ。」
初めのうちにガイジスの実力と戦術を見ておきたかった。
奥に行けば行くほど魔物は強くなるので、連携を取るためにも互いを知っておかなければならないのである。
それはガイジスも理解しているようで、私としては説明をしなくて良い為、楽だった。
彼の戦闘スタイルは独特だった。
武器は剣だが、近距離型というわけでもない。
剣に魔力や魔法を付与して戦っている。
風魔法を纏わせて遠くの魔物に攻撃をしたり、魔力を具現化させ刀身を伸ばし、大太刀のような武器に変化させたりもする。
1本の剣が、次々と姿を変えていく。
……見ていて面白い。真似をしたくなる。
「よっと……ふぅ。ざっと、こんなもんだな。」
「1人で殲滅しなくても、途中から手伝おうと思っていたのだけれど。」
「つい楽しくなってしまってな。」
「顔を見れば分かるわよ…。」
笑いながら攻撃していたガイジス。
気持ちは分からなくもないが、見ていてこちらが恐ろしいと思える表情だった。
「おかげさまで戦い方は分かったわ。次からは戦闘に参加するけれど、ギルマスの出番は減るでしょうね。」
「それならそれで構わないぞ。体力を温存するに越したことはないからな。」
その後も私達は奥へと進んでいき、道の途中では大量の魔物にも出くわした。
軽く200体以上倒しているだろう。
異常な数だが、私はこの森で気になることがあった。
中心近くから発せられている魔力反応。
それが何なのかを目視で確認したい。
だがその前に休息を取るべきだろう。
「この辺りで休憩しましょう。」
「死魔の森で休憩なんて出来やしないと思うが?」
「私とミアスは余裕があるから進んでも良いけれど、ギルマスは疲れているでしょう。」
「…お見通しか。」
ガイジスは疲れが見えていた。
理由はこの森が『死魔の森』と呼ばれる所以である、魔力密度のせいだろう。
常に魔力制御を意識しなければならないので、気力・集中力がすり減っていくのだ。
ガイジスのような戦い方をする者であれば特に疲れる。
「結界を張ったわ。隠蔽魔法もかけてあるから、魔物に見つかる心配もないわよ。」
「感謝するよ。それにしても、何故2人は平気なんだ?」
「何故って、……何故だろう?」
「はぁっ?!」
「あはは…。」
言われてみれば何故魔力制御が普通に行えているのか分からない。
いつもと同じように魔力を扱えている。
「俺が思うに、リアラは普段から膨大な魔力を制御してるからじゃないか?」
ミアスがそう言ってきた。
ガイジスもミアスの言葉に納得している様子だ。
私も改めて周囲の魔力を感じ取ってみる。
すると理由がすぐに分かった。
「なるほどね…。」
「どうしたんだ?」
「この死魔の森の魔力密度、私自身の魔力密度より低いわね。だから気にせずとも普通に扱えるのよ。」
「…そんな非常識な事が有り得るのか……?」
「事実だもの。森を進むにつれて魔力は濃くなっているけれど、問題は無いわ。」
魔力密度が濃くなるということは、それだけ多くの魔力が存在するという事。
影響を受けないようにするには、自身を含め半径1m以内の魔力を制御する必要がある。
人が暮らす街であれば密度が低い為、周囲の魔力を制御せずとも影響はないが、この森であれば例外だ。
常に意識しなければならない。
「リアラが平気な理由は分かったが、ミアスは何故だ?」
「俺も似たようなものだな。リアラほど魔力があるわけではないが、まだ余裕がある。」
「2人とも相変わらず規格外だな…。」
「ここから先は、私が周囲の魔力を制御しておくわ。2人が戦いに集中出来るようにね。」
「制御するって…、どのくらいの範囲だ?」
「半径200mくらいで十分かしら。1kmまで出来るけれど、さすがにそこまでは要らないでしょう?」
「「……。」」
私の言葉に、珍しくミアスも驚いている。
本当はもう少し先まで可能なのだが、それは秘密にしておこう。
その後30分ほど休み、私達はさらに奥まで進んで行った──
特に変装はしていないので、周囲から見られることもあったが気にしていなかった。
この街は死魔の森から1番近い。
少し離れているとはいえ魔物の襲撃もよくあるので、住人全てが戦える者達だ。
手練の元冒険者や騎士団、統治している侯爵家の兵などが毎日魔物を討伐している。
そうしてこの街の平和は守られているのだ。
「さてギルマス。私達は準備が完了しているわ。」
「俺も問題は無い。」
「なら瞬間移動で行きましょう。」
「……え?」
ガイジスの驚きの声と同時に、視界が光に包まれる。
次に周囲を見渡した時には既に死魔の森に入っていた。
「調査を開始しましょう。気を抜かないようにと言っても、ギルマスは私とミアスよりも経験豊富だから、心配は要らないと思うけれど。……ギルマス?」
「え、あ…、ああ。そうだな…。」
瞬間移動したことに驚いているのだろう。
この魔法を使える者自体がかなり少ない為、無詠唱で発動したことがよりガイジスを驚かせたようだ。
しかしすぐに周囲を警戒し始めたので、流石はSランク冒険者だと思った。
「……早速お出ましか…。」
熊型の魔物や虫の魔物など、様々な魔物が前方から向かって来ていた。
数は20程度だが全てBランク以上の魔物だ。
「ギルマス。ここは頼んでもいいかしら?」
「無論だ。」
初めのうちにガイジスの実力と戦術を見ておきたかった。
奥に行けば行くほど魔物は強くなるので、連携を取るためにも互いを知っておかなければならないのである。
それはガイジスも理解しているようで、私としては説明をしなくて良い為、楽だった。
彼の戦闘スタイルは独特だった。
武器は剣だが、近距離型というわけでもない。
剣に魔力や魔法を付与して戦っている。
風魔法を纏わせて遠くの魔物に攻撃をしたり、魔力を具現化させ刀身を伸ばし、大太刀のような武器に変化させたりもする。
1本の剣が、次々と姿を変えていく。
……見ていて面白い。真似をしたくなる。
「よっと……ふぅ。ざっと、こんなもんだな。」
「1人で殲滅しなくても、途中から手伝おうと思っていたのだけれど。」
「つい楽しくなってしまってな。」
「顔を見れば分かるわよ…。」
笑いながら攻撃していたガイジス。
気持ちは分からなくもないが、見ていてこちらが恐ろしいと思える表情だった。
「おかげさまで戦い方は分かったわ。次からは戦闘に参加するけれど、ギルマスの出番は減るでしょうね。」
「それならそれで構わないぞ。体力を温存するに越したことはないからな。」
その後も私達は奥へと進んでいき、道の途中では大量の魔物にも出くわした。
軽く200体以上倒しているだろう。
異常な数だが、私はこの森で気になることがあった。
中心近くから発せられている魔力反応。
それが何なのかを目視で確認したい。
だがその前に休息を取るべきだろう。
「この辺りで休憩しましょう。」
「死魔の森で休憩なんて出来やしないと思うが?」
「私とミアスは余裕があるから進んでも良いけれど、ギルマスは疲れているでしょう。」
「…お見通しか。」
ガイジスは疲れが見えていた。
理由はこの森が『死魔の森』と呼ばれる所以である、魔力密度のせいだろう。
常に魔力制御を意識しなければならないので、気力・集中力がすり減っていくのだ。
ガイジスのような戦い方をする者であれば特に疲れる。
「結界を張ったわ。隠蔽魔法もかけてあるから、魔物に見つかる心配もないわよ。」
「感謝するよ。それにしても、何故2人は平気なんだ?」
「何故って、……何故だろう?」
「はぁっ?!」
「あはは…。」
言われてみれば何故魔力制御が普通に行えているのか分からない。
いつもと同じように魔力を扱えている。
「俺が思うに、リアラは普段から膨大な魔力を制御してるからじゃないか?」
ミアスがそう言ってきた。
ガイジスもミアスの言葉に納得している様子だ。
私も改めて周囲の魔力を感じ取ってみる。
すると理由がすぐに分かった。
「なるほどね…。」
「どうしたんだ?」
「この死魔の森の魔力密度、私自身の魔力密度より低いわね。だから気にせずとも普通に扱えるのよ。」
「…そんな非常識な事が有り得るのか……?」
「事実だもの。森を進むにつれて魔力は濃くなっているけれど、問題は無いわ。」
魔力密度が濃くなるということは、それだけ多くの魔力が存在するという事。
影響を受けないようにするには、自身を含め半径1m以内の魔力を制御する必要がある。
人が暮らす街であれば密度が低い為、周囲の魔力を制御せずとも影響はないが、この森であれば例外だ。
常に意識しなければならない。
「リアラが平気な理由は分かったが、ミアスは何故だ?」
「俺も似たようなものだな。リアラほど魔力があるわけではないが、まだ余裕がある。」
「2人とも相変わらず規格外だな…。」
「ここから先は、私が周囲の魔力を制御しておくわ。2人が戦いに集中出来るようにね。」
「制御するって…、どのくらいの範囲だ?」
「半径200mくらいで十分かしら。1kmまで出来るけれど、さすがにそこまでは要らないでしょう?」
「「……。」」
私の言葉に、珍しくミアスも驚いている。
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