転生魔法伝記〜魔法を極めたいと思いますが、それを邪魔する者は排除しておきます〜

凛 伊緒

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5章 王都上空決戦

第66話 死魔の森

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「よく来たな、待ってたぜ。」


翌日の昼過ぎ、私とミアスはギルドマスターの部屋に来ていた。
ガイジスから『別件』とやらの内容を聞く為だ。


「それで?別件って何なのかしら、ギルマス。」

「俺達を呼び出す案件…。面倒なのはやめてほしいんだが。」

「ミアス、私達はまだAランクになったばかりよ。そもそも冒険者にすら昨日なったところ。そうギルマスに強く言えるような立場じゃないわ。」

「それはそうだが…。」


そうだ…。
私とミアスはまだ、冒険者になったばかり。
冒険者としての先輩は沢山いる。
ギルマスとなれば、なおさら私達は面倒だからと依頼を引き受けない選択肢はほぼない。
ある程度は我慢すべきだ。


「面倒なもんじゃないさ。2人の実力を見込んで、少し調査してほしい場所があってな。」

「調査?」

「ああ。『死魔の森』を調査してきてほしい。」

「……本気で言っているのかしら。」

「無論だ。」


『死魔の森』。
一度入れば終わりとも言われている、危険度の高い森である。
濃い魔力密度により、並の人間ならば立ち入るだけで身体が耐えきれずに死んでしまうのだ。
さらには出現する魔物も全てがBランク以上だ。
よって、森内部に入ることが許されるのはAランク以上の冒険者、またはギルド・国に認められた実力者のみとなっている。
そして死魔の森に入る際は、10人以上のパーティーを組む必要があった。


「王族を死魔の森に向かわせようとする人は、普通いないわよ。」

「それに、入るには10人以上いなければならない。今から人を集める必要も出てくるぞ。」

「その必要があるのか?2人は『禁忌術者デット・ザージュ』にも余裕で勝てる実力があるらしいじゃないか。」

「……なるほど、これは国王陛下からの依頼なのね。」

「そのようだな。」


私とミアスの反応に、ガイジスは驚き固まっている。
まさかこちらが驚くとでも思っているのだろうか。
魔物を一掃出来る実力があることは広く知られているが、『禁忌術者』ザージュと戦った事を知るのは国王並びに極わずかな人のみ。
ヴィライユが誰に教えたかも知っている。


「…何故分かったんだ?」

「ザージュとの事を知る者は、私も把握しているわ。ギルマスはその中に入っていなかった。そして私がザージュと戦ったことを話して良いのは、私か陛下だけよ。ならば答えは簡単でしょう。」

「リアラの言う通りだ…。俺は国王陛下に頼まれてたんだよ。もしリアラがギルドの冒険者となったら、死魔の森を調査するようギルマスから依頼してくれってな。」


ザージュはSランクに近いAランク相当の実力者とされていたのだ。
そんな者を圧倒出来るならば、Sランク以上の実力あると見ているのだろう。
Sランク冒険者であれば、死魔の森であっても3人で入ることが出来る。
国王が認め、ギルドとしても認められた私達と、ギルマスはSランク冒険者でもあるので、3人の条件はクリアされるということだ。
だが何故ヴィライユがギルマスにこの依頼をしたのか分からない。


「何故ギルマスにこんな依頼を?」

「俺はSランク冒険者だ。3人で森には入れる。リアラとミアスは国が認め、ギルドとして俺も認めているから問題は無い。だが国王が自らの子を死魔の森へと向かわせるというのは、外聞的に問題があるのだろう。いくら実力があるとはいえ、王族をとなれば貴族達も黙っていないだろうしな。」

「つまりは、極秘裏に調査をお願いしたいということね。だけど私とミアスの2人だけでは不安だから、ギルマスに共に行ってもらうよう依頼した…と。でも危険よね。」

「覚悟の上だ。調査内容の方が気になったからな。」


そう言ってガイジスが渡してきたのは、死魔の森での異変が詳細に書かれた書類だった。
おそらくはヴィライユが暗部を使って調べたものだろう。
だが暗部だけでは調査に限界があるので、こちらに依頼してきた。


「陛下は言ってたぜ。リアラは必ず冒険者ギルドに来るだろうってな。」

「……まぁそれ以外に選択肢がなかったもの。陛下に行動を読まれていても不思議じゃないわ。」

「そうか。貴族も大変だな。」

「他人事ね。しがらみが嫌いな冒険者らしいわ。」

「褒め言葉として受け取っておくさ。」


そう言って笑うガイジス。
本当に、冒険者が羨ましい。
危険は伴うが、依頼さえこなせばお金に困らず自由に暮らせる。
ガイジスを見ていると、王族の地位を捨てて冒険者に徹したいと思えてくる。
だが王族にしか出来ないこともある。
この立場を活かす場面は、これからきっとあるはずだ。

今回ヴィライユが王城で私達に調査してほしいと言わなかったのは、誰かに聞かれているかもしれないと思ったからだろう。
このギルマスの部屋ならば、仕掛けなど出来ないと考えた結果のはず。


「さて、陛下の依頼なら無視できないわ。」

「リアラがその気なら従うのが俺の存在意義だ。手伝うよ。」

「…本当にいいのか?」

「ええ。この異変はもの。」

「気になっていた…?」

「行くと決まれば準備が必要ね。ミアス、一度王城に戻るわよ。」

「了解だ。」

「ギルマス、何時向かうかは後ほど連絡するわ。こちらにも予定があるから。」

「あ、ああ…。」


私の言葉に疑問を覚えるガイジスを残し、私とミアスは王城に戻った。
そして死魔の森の調査に向けて、準備を始めるのだった。
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