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5章 王都上空決戦
第62話 規格外
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敏捷性とは素早さ・反応の速さなどのことであり、精神力とは状態異常系の魔法、つまり精神魔法などの抵抗力を示す。
その他は見ての通りだ。
「……。」
リリィは表示されたステータスを見て、驚きのあまり固まっていた。
私は面倒なことになりそうだと思い、ミアスを見た。
ミアスは苦笑いを返してきた。
「お疲れ様です」とでも言うような顔だ。
「えっと…リリィ?記録しなくて大丈夫なのかしら?」
「…っは!申し訳ございませんっ。」
我に返ったリリィは、慌てて記録用紙に書き始めた。
しかしすぐに困惑の表情となる。
「どうしたの?」
「その……魔力の場所が…。これは測定不能ということでしょうか……。どうすれば良いのかと…。」
確かに魔力の能力値が表示されるはずの場所がノイズのようになり、能力値が分からなくなっていた。
リリィが困るのも納得だ。
私もどういう意味なのか分からない。
「どうしたんだ?」
「あっ、ギルドマスター!」
測定の部屋へと入ってきた40代くらいの男性。
強そうな雰囲気を感じる。
リリィがギルドマスターと言っているので、おそらくこの支部のトップ、ギルドマスターなのだろう。
王都にはギルドが2つある。
今回の『王都支部』と、世界中の全てのギルドを統括している『ギルド本部』だ。
本部でも冒険者登録や依頼を受けることが出来るが、『本部』とだけあって人もかなり多い。
「リアラ王女様とミアス様がいらしたと冒険者達が騒いでいたから来てみたが……リリィ、何を慌てている?」
「あの、えぇっと……これを…。」
「なっ…!?……っと、申し遅れました。俺…私は王都支部のギルドマスター、ガイジスです。」
「フィールア王国第三王女、リアラ・フィールアです。こちらは私の側近ミアス。」
私の紹介に、ミアスはお辞儀をする。
私のステータスを見て、一瞬で冷静になる様子は、流石はギルドマスターということなのだろう。
「リアラ様、それで……」
「ガイジス殿。私に『王女』も『様』も必要ありません。冒険者となるのですから、ギルドにいる間は貴方より下位になります。ですから、呼び捨てでも結構です。勿論、敬語など要りませんよ。」
「……そうおっしゃるのならば…。では俺のことも呼び捨てで、軽い感じで話してくれ。冒険者とは、そういう連中の集まりだからな。」
「権力というしがらみが無い場所……ということね。」
「その通り。」
「分かったわ。」
「案外すんなりと受け入れるんだな…。貴族で冒険者をやってるやつのほとんどが、権力を振りかざすことが多い。面倒な場合は、即刻冒険者の資格を剥奪するんだがな。はははっ!」
「それが正しいでしょうね。登録時に、『権力は意味をなさない』と言われるというのに。でも私はこの場所が好きよ。権力が意味なさないということは、皆が平等に接してくれるもの。」
「「……。」」
「……あはは…。」
私の言葉にガイジスとリリィは固まり、ミアスは少し呆れた様子になった。
王族が故に、私はミアス以外に対等に接してくれる人がいない。
だからこそ、冒険者なら普通に接してくれるのではと思った。
私が困惑の表情を浮かべていると、ガイジスが口を開いた。
「まさか、王女であるリアラからそんな言葉が聞けるとはな……。」
「え…?何か変なこと言ったかしら……。」
「いや…王族の君が、平民が多い冒険者とやっていけるのか心配していたが……どうやら杞憂だったようだ。」
「どういうこと?」
「こう言っては失礼だろうが……、王族らしくない王族。それがリアラなのだろうな。」
「……そうかもしれないわね。お兄様やお姉様達と価値観が違ったりするし……。ここでの話は私達だけにしておいてほしいわ。」
「分かった。確かに、広まれば面倒そうだ。」
王族の発言は、小さなことでも問題になったりする。
私の今の発言は、貴族からの反感を買う可能性がある。
王族が平民と平等など、到底ありえないことなのだから。
「さて、話を戻そうか。この測定結果だが……。リリィ、最高ランクのSSとしておけ。」
「えっ……あ、はいっ!」
「次は俺の番だな。」
そう言うと、ミアスは水晶に手を触れた。
能力値が浮かび上がる。
《ミアス・コーリトラント 15歳》
魔力 SS
体力 A
筋力 A
敏捷性 S
精神力 S
私が鍛えただけあって、魔力はSSとなっていた。
それはそうと、魔力を除けば私よりチート級のステータスだ。
当然、ガイジスとリリィは驚き固まっていた。
「2人揃って……規格外だな…。リリィ…、記録してくれ……。」
「あ……はい…。」
魂が抜けているのかと言いたくなる表情で、リリィは記録をする。
ここまでの高能力値が出たことはないのだろう。
私とミアスですら少し驚いたので、仕方がない……。
「ガイジス……私達の測定結果について、決して口外しないようにね…。」
「分かっている…。こんなことが公になれば、大変なことになりそうだ。2人を狙おうとする奴らも現れるかもしれんしな……。」
「ええ…。くれぐれも、頼むわよ。」
「ああ。リリィ、その記録は機密事項と理解しておけよ!」
「はいっ!」
その後、私とミアスはギルドの仕組みや依頼、ランクについて詳しい説明を受けた。
2人揃ってEランクからの始まりだが、倒した魔物の強さによっては、一気にランクを上げることも可能らしい。
1ヶ月でAランクにまで上り詰めた人もいたとのこと。
魔物にもランク付けがされており、E~S級と、呼び方は違えど冒険者と同じような感じだ。
S級ともなると、国…さらには世界が滅ぶ程の力を保有しているのだとか。
出来れば現れてほしくないが、見てみたい・戦ってみたいという気持ちは少しある……とは誰にも言えない。
「これで私達も冒険者ね。」
「登録する前から色々あったけどな。」
「そのことは…忘れましょう……ええ忘れましょう。」
「あはは……そうだな…。」
この時の私は、知りもしなかった。
王国に危機が迫っていることに──
ーーーーーーーーーーーーーーーー
時は遡り──
リアラが冒険者ギルドを訪れる数日前。
「はぁ……もう8年も前になるのか…。せっかく協力したっていうのに、まさかあっさり捕まるとは。刑が執行され、もう二度と会えることはない……会うつもりもないんだけど。
それにしても、『黒魔法の儀式者』を4人も失うとは。」
「……。」
「……あの2人は厄介過ぎる。国王には、『禁忌術者』に2人で挑んでも良くて互角と言っていたと聞いたが、圧勝だったらしいじゃないか…。」
「……。」
「ザージュには悪かったが、途中で逃げておいて正解だったな。まぁ過去のことは忘れようか。どうせ期待していなかったし。2人の実力が知れただけ良かったとしよう…。今はどれ程強くなってるんだか。」
「……。」
「強さなんて、今さら関係ないか。……もうすぐだ…。もうすぐ、お前を殺した奴らに復讐出来るよ……ディルナ──」
無表情で何の反応もしない、『ディルナ』と呼ばれた少女に向かって話しかける男。
この男の名は──
その他は見ての通りだ。
「……。」
リリィは表示されたステータスを見て、驚きのあまり固まっていた。
私は面倒なことになりそうだと思い、ミアスを見た。
ミアスは苦笑いを返してきた。
「お疲れ様です」とでも言うような顔だ。
「えっと…リリィ?記録しなくて大丈夫なのかしら?」
「…っは!申し訳ございませんっ。」
我に返ったリリィは、慌てて記録用紙に書き始めた。
しかしすぐに困惑の表情となる。
「どうしたの?」
「その……魔力の場所が…。これは測定不能ということでしょうか……。どうすれば良いのかと…。」
確かに魔力の能力値が表示されるはずの場所がノイズのようになり、能力値が分からなくなっていた。
リリィが困るのも納得だ。
私もどういう意味なのか分からない。
「どうしたんだ?」
「あっ、ギルドマスター!」
測定の部屋へと入ってきた40代くらいの男性。
強そうな雰囲気を感じる。
リリィがギルドマスターと言っているので、おそらくこの支部のトップ、ギルドマスターなのだろう。
王都にはギルドが2つある。
今回の『王都支部』と、世界中の全てのギルドを統括している『ギルド本部』だ。
本部でも冒険者登録や依頼を受けることが出来るが、『本部』とだけあって人もかなり多い。
「リアラ王女様とミアス様がいらしたと冒険者達が騒いでいたから来てみたが……リリィ、何を慌てている?」
「あの、えぇっと……これを…。」
「なっ…!?……っと、申し遅れました。俺…私は王都支部のギルドマスター、ガイジスです。」
「フィールア王国第三王女、リアラ・フィールアです。こちらは私の側近ミアス。」
私の紹介に、ミアスはお辞儀をする。
私のステータスを見て、一瞬で冷静になる様子は、流石はギルドマスターということなのだろう。
「リアラ様、それで……」
「ガイジス殿。私に『王女』も『様』も必要ありません。冒険者となるのですから、ギルドにいる間は貴方より下位になります。ですから、呼び捨てでも結構です。勿論、敬語など要りませんよ。」
「……そうおっしゃるのならば…。では俺のことも呼び捨てで、軽い感じで話してくれ。冒険者とは、そういう連中の集まりだからな。」
「権力というしがらみが無い場所……ということね。」
「その通り。」
「分かったわ。」
「案外すんなりと受け入れるんだな…。貴族で冒険者をやってるやつのほとんどが、権力を振りかざすことが多い。面倒な場合は、即刻冒険者の資格を剥奪するんだがな。はははっ!」
「それが正しいでしょうね。登録時に、『権力は意味をなさない』と言われるというのに。でも私はこの場所が好きよ。権力が意味なさないということは、皆が平等に接してくれるもの。」
「「……。」」
「……あはは…。」
私の言葉にガイジスとリリィは固まり、ミアスは少し呆れた様子になった。
王族が故に、私はミアス以外に対等に接してくれる人がいない。
だからこそ、冒険者なら普通に接してくれるのではと思った。
私が困惑の表情を浮かべていると、ガイジスが口を開いた。
「まさか、王女であるリアラからそんな言葉が聞けるとはな……。」
「え…?何か変なこと言ったかしら……。」
「いや…王族の君が、平民が多い冒険者とやっていけるのか心配していたが……どうやら杞憂だったようだ。」
「どういうこと?」
「こう言っては失礼だろうが……、王族らしくない王族。それがリアラなのだろうな。」
「……そうかもしれないわね。お兄様やお姉様達と価値観が違ったりするし……。ここでの話は私達だけにしておいてほしいわ。」
「分かった。確かに、広まれば面倒そうだ。」
王族の発言は、小さなことでも問題になったりする。
私の今の発言は、貴族からの反感を買う可能性がある。
王族が平民と平等など、到底ありえないことなのだから。
「さて、話を戻そうか。この測定結果だが……。リリィ、最高ランクのSSとしておけ。」
「えっ……あ、はいっ!」
「次は俺の番だな。」
そう言うと、ミアスは水晶に手を触れた。
能力値が浮かび上がる。
《ミアス・コーリトラント 15歳》
魔力 SS
体力 A
筋力 A
敏捷性 S
精神力 S
私が鍛えただけあって、魔力はSSとなっていた。
それはそうと、魔力を除けば私よりチート級のステータスだ。
当然、ガイジスとリリィは驚き固まっていた。
「2人揃って……規格外だな…。リリィ…、記録してくれ……。」
「あ……はい…。」
魂が抜けているのかと言いたくなる表情で、リリィは記録をする。
ここまでの高能力値が出たことはないのだろう。
私とミアスですら少し驚いたので、仕方がない……。
「ガイジス……私達の測定結果について、決して口外しないようにね…。」
「分かっている…。こんなことが公になれば、大変なことになりそうだ。2人を狙おうとする奴らも現れるかもしれんしな……。」
「ええ…。くれぐれも、頼むわよ。」
「ああ。リリィ、その記録は機密事項と理解しておけよ!」
「はいっ!」
その後、私とミアスはギルドの仕組みや依頼、ランクについて詳しい説明を受けた。
2人揃ってEランクからの始まりだが、倒した魔物の強さによっては、一気にランクを上げることも可能らしい。
1ヶ月でAランクにまで上り詰めた人もいたとのこと。
魔物にもランク付けがされており、E~S級と、呼び方は違えど冒険者と同じような感じだ。
S級ともなると、国…さらには世界が滅ぶ程の力を保有しているのだとか。
出来れば現れてほしくないが、見てみたい・戦ってみたいという気持ちは少しある……とは誰にも言えない。
「これで私達も冒険者ね。」
「登録する前から色々あったけどな。」
「そのことは…忘れましょう……ええ忘れましょう。」
「あはは……そうだな…。」
この時の私は、知りもしなかった。
王国に危機が迫っていることに──
ーーーーーーーーーーーーーーーー
時は遡り──
リアラが冒険者ギルドを訪れる数日前。
「はぁ……もう8年も前になるのか…。せっかく協力したっていうのに、まさかあっさり捕まるとは。刑が執行され、もう二度と会えることはない……会うつもりもないんだけど。
それにしても、『黒魔法の儀式者』を4人も失うとは。」
「……。」
「……あの2人は厄介過ぎる。国王には、『禁忌術者』に2人で挑んでも良くて互角と言っていたと聞いたが、圧勝だったらしいじゃないか…。」
「……。」
「ザージュには悪かったが、途中で逃げておいて正解だったな。まぁ過去のことは忘れようか。どうせ期待していなかったし。2人の実力が知れただけ良かったとしよう…。今はどれ程強くなってるんだか。」
「……。」
「強さなんて、今さら関係ないか。……もうすぐだ…。もうすぐ、お前を殺した奴らに復讐出来るよ……ディルナ──」
無表情で何の反応もしない、『ディルナ』と呼ばれた少女に向かって話しかける男。
この男の名は──
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