60 / 94
4章 災厄日
第58話 報告
しおりを挟む
「皆!今回の戦いで負傷し、治癒魔法を受けた者はこちらに集まってくれ!」
「「「はっ!」」」
ヴィルガがそう一声かけると、一部の討伐隊の兵達がこちらに来た。
何の話かと、ざわついている。
「リアラが『広範囲治癒魔法』を使ったことを知っているのは、ここにいる者達だけか?他の兵達に話したというのならば、その者達も連れてきてくれ。」
そう言うと、一部の者は動いた。
話した人を呼びに行ったのだろう。
数分経って、ようやく落ち着いた。
「さて、集まってもらったのは他でもない。リアラの治癒魔法についてだ。リアラが治癒魔法を使えることは、他言無用に願おう。親しき者にさえ言ってはならない。これは命令だ。分かったな。」
「「「はっ!」」」
「くれぐれも、よろしく頼むぞ。」
そして討伐隊はもう一度全員が集う。
隊列を組み、ヴェルガの一声で動ける状態だ。
「皆の者、今回はご苦労だった。死者なく、全員が無事に王都へと帰還出来ることを嬉しく思う。皆の頑張りがあってこその勝利だ。さあ、凱旋だ!」
「「「おおぉぉぉっっ!!!」」」
全員が笑顔で、王都に向けて歩き出す。
私はヴィルガの隣、一歩後ろを歩く。
ヴィルガと一部の者のみが、馬にまたがっていた。
私の後ろにミアスが控えている。
「リアラ、改めて礼を言わせてくれ。ありがとう。」
「いえ、お礼を言われるほどのことはしていませんよ。」
「だがリアラがいなければ、確実に多くの犠牲か出ていただろう。それにしても、徒歩で大丈夫なのか?兵に言えば代わってもらえるぞ。」
「問題ありません。最後まで歩いて帰るつもりはありませんから。」
「…え?それはどういう……。」
「そのままの意味です。私は一足先に、国王陛下に報告に行きます。陛下に頼まれていますので。ではお兄様、お先に失礼致しますね。」
「えぇ!?」
「ミアス、行くわよ。」
「かしこまりました。ヴィルガ殿下、失礼致します。」
「あ、ああ…。」
戸惑うヴェルガを置き去りに、私とミアスは王城へと転移した。
事実、出来るだけ早く知らせてほしいと頼まれていたのだ。
私が直接動く方が、暗部よりも早いだろうとのことだった。
一直線に国王の書斎へと歩いていき、扉を叩く。
「国王陛下!リアラ・フィールア、ただいま戻りました!」
「入りたまえ。」
「失礼致します。」
中へ入ると、安堵の表情を浮かべる、国王であり父のヴィライユがいた。
一礼し、近くまで歩いていき、跪く。
「『災厄日』の報告に参りました。」
「ああ。リアラもミアスも無事で良かった。」
「ご心配ありがとうございます。ヴィルガお兄様も無事です。」
「そうか!本当に良かった…。」
「報告ですが、死者はいません。並びに負傷者については、現地での回復系魔法の使用により、無傷の状態です。建物の被害もありません。」
「まさか被害なしとは…。リアラ、そしてミアス。感謝する 。2人のおかげで被害が無い状態で済んだ。」
「私達だけではありません。ヴィルガお兄様の指揮、そして現地での討伐隊の人達のおかげです。彼らがいなければ、ここまで上手くいくことはありませんでした。」
「それでも、だ。何か欲しいものはあるか?出来る限りのことはしよう。」
「…私は王族として民を守るという当然のことをしただけです。褒美を頂くほどのことはしておりません。」
「しかし…。」
「でしたら、私の分も全てヴィルガお兄様にお渡ししていただけませんか?」
「……それで良いのか?」
「構いません。私は自由に魔法の研究が出来れば、あとは何も望まないので。」
「そ、そうか…。」
私の真っ直ぐな瞳を見て、ヴィライユの方が引いてくれた。
実際欲しいものがないので、褒美と言われても困るだけだった。
「ミアスはどうだ?」
「私も褒美は望みません。リアラ殿下にお仕えすることこそが、私の一番の喜びですので。」
「分かった…。今回の件、大儀であった。改めて感謝しよう。」
「もったいなきお言葉。」
「また何かあれば、その時は頼む。では行って良い。」
「失礼致します。」
私に続き、ミアスも書斎を退出する。
そして2人で私の部屋へと戻るのだった。
「「「はっ!」」」
ヴィルガがそう一声かけると、一部の討伐隊の兵達がこちらに来た。
何の話かと、ざわついている。
「リアラが『広範囲治癒魔法』を使ったことを知っているのは、ここにいる者達だけか?他の兵達に話したというのならば、その者達も連れてきてくれ。」
そう言うと、一部の者は動いた。
話した人を呼びに行ったのだろう。
数分経って、ようやく落ち着いた。
「さて、集まってもらったのは他でもない。リアラの治癒魔法についてだ。リアラが治癒魔法を使えることは、他言無用に願おう。親しき者にさえ言ってはならない。これは命令だ。分かったな。」
「「「はっ!」」」
「くれぐれも、よろしく頼むぞ。」
そして討伐隊はもう一度全員が集う。
隊列を組み、ヴェルガの一声で動ける状態だ。
「皆の者、今回はご苦労だった。死者なく、全員が無事に王都へと帰還出来ることを嬉しく思う。皆の頑張りがあってこその勝利だ。さあ、凱旋だ!」
「「「おおぉぉぉっっ!!!」」」
全員が笑顔で、王都に向けて歩き出す。
私はヴィルガの隣、一歩後ろを歩く。
ヴィルガと一部の者のみが、馬にまたがっていた。
私の後ろにミアスが控えている。
「リアラ、改めて礼を言わせてくれ。ありがとう。」
「いえ、お礼を言われるほどのことはしていませんよ。」
「だがリアラがいなければ、確実に多くの犠牲か出ていただろう。それにしても、徒歩で大丈夫なのか?兵に言えば代わってもらえるぞ。」
「問題ありません。最後まで歩いて帰るつもりはありませんから。」
「…え?それはどういう……。」
「そのままの意味です。私は一足先に、国王陛下に報告に行きます。陛下に頼まれていますので。ではお兄様、お先に失礼致しますね。」
「えぇ!?」
「ミアス、行くわよ。」
「かしこまりました。ヴィルガ殿下、失礼致します。」
「あ、ああ…。」
戸惑うヴェルガを置き去りに、私とミアスは王城へと転移した。
事実、出来るだけ早く知らせてほしいと頼まれていたのだ。
私が直接動く方が、暗部よりも早いだろうとのことだった。
一直線に国王の書斎へと歩いていき、扉を叩く。
「国王陛下!リアラ・フィールア、ただいま戻りました!」
「入りたまえ。」
「失礼致します。」
中へ入ると、安堵の表情を浮かべる、国王であり父のヴィライユがいた。
一礼し、近くまで歩いていき、跪く。
「『災厄日』の報告に参りました。」
「ああ。リアラもミアスも無事で良かった。」
「ご心配ありがとうございます。ヴィルガお兄様も無事です。」
「そうか!本当に良かった…。」
「報告ですが、死者はいません。並びに負傷者については、現地での回復系魔法の使用により、無傷の状態です。建物の被害もありません。」
「まさか被害なしとは…。リアラ、そしてミアス。感謝する 。2人のおかげで被害が無い状態で済んだ。」
「私達だけではありません。ヴィルガお兄様の指揮、そして現地での討伐隊の人達のおかげです。彼らがいなければ、ここまで上手くいくことはありませんでした。」
「それでも、だ。何か欲しいものはあるか?出来る限りのことはしよう。」
「…私は王族として民を守るという当然のことをしただけです。褒美を頂くほどのことはしておりません。」
「しかし…。」
「でしたら、私の分も全てヴィルガお兄様にお渡ししていただけませんか?」
「……それで良いのか?」
「構いません。私は自由に魔法の研究が出来れば、あとは何も望まないので。」
「そ、そうか…。」
私の真っ直ぐな瞳を見て、ヴィライユの方が引いてくれた。
実際欲しいものがないので、褒美と言われても困るだけだった。
「ミアスはどうだ?」
「私も褒美は望みません。リアラ殿下にお仕えすることこそが、私の一番の喜びですので。」
「分かった…。今回の件、大儀であった。改めて感謝しよう。」
「もったいなきお言葉。」
「また何かあれば、その時は頼む。では行って良い。」
「失礼致します。」
私に続き、ミアスも書斎を退出する。
そして2人で私の部屋へと戻るのだった。
1
お気に入りに追加
212
あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

野草から始まる異世界スローライフ
深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。
私ーーエルバはスクスク育ち。
ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。
(このスキル使える)
エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。
エブリスタ様にて掲載中です。
表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。
プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。
物語は変わっておりません。
一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。
よろしくお願いします。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる