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4章 災厄日
第56話 負傷者の元へ
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負傷者達が集められた場所に着いた私は、当たりを見渡す。
死者こそいないものの、被害はかなりあった。
それも物的被害ではなく、人的被害のみ。
慌ただしくしている現場では、私の存在に気付く者もほぼいなかった。
なので私から声をかける。
「状況は?」
「リアラ殿下!何故このような場所に……」
「そんなことより、状況を伝えなさい。」
「は、はっ!失礼いたしました!」
魔物の討伐を行っていた私がこの場にいることに驚きつつも、治療班の班員が状況を報告してくれた。
「死者はいませんが、重傷者10名、軽傷者100数名となっております。こちらが重傷者達です。」
「討伐隊の人数は把握していなかったけれど、数千人はいたわよね。その中でたったこれだけの被害で抑えられて良かったわ。」
「これら全ては、リアラ王女殿下とヴィルガ王太子殿下のおかげです。国が滅んでもおかしくない厄災なのですから。」
「そうね……。」
「ですがリアラ殿下がこちらにいらしたということは…」
「ええ、『厄災日』は無事乗り切ることができたわ。」
「おお…!それはなんと嬉しい知らせでしょう。ここにいる皆にも知らせなければなりません!」
そう言うと、彼は声を張り上げる。
「皆の者!『厄災日』を乗り切ることが出来たそうだぞ!死者もいない!」
「「おお!」」
「「「良かったです!」」」
「「死者無しとは!」」
歓喜の声が上がる。
重傷者として寝かせられている者も、この時ばかりは笑顔になった。
「喜ぶのはまだ早いわよ。怪我人の治療優先。手を止めてはならないわ。」
「「はっ!」」
私がそう言うと、止めていた手を一斉に動かし出す。
先程よりも皆の顔は明るく、治療を行うペースも早くなっているように感じる。
やはり、現場の空気は大切だと思った瞬間だった。
「リアラ殿下、この者を診ては頂けませんか?!」
「見せて頂戴。──なるほどね。骨折と腹部の損傷があるのね。…順に治していくイメージをして……『上位治癒魔法』。」
パァっと光り、癒しの魔法がかけられる。
次の瞬間には治っていた。
「ありがとうございますっ!」と言って頭を下げ、討伐隊の仲間達の元へと走っていった。
その後も重傷者を優先に癒し、残りは軽傷者となった。
1人ずつ魔法をかけるのは面倒なので、一気に行うことにした。
「皆さん、少し中央へ寄って下さい。」
「「??」」
「いいからリアラ殿下の言うことを聞け!」
「「「はっ、はい!」」」
「──ありがとう。この方が早いと思ってね。……《広範囲治癒魔法》。」
「「なっ!?」」
「「「傷が…癒えていく……。」」」
「「「さすがは殿下だ!!」」」
全員の傷が癒えた様子。
大いに盛り上がり、そして一斉に……
「「「リアラ殿下、ありがとうございますっ!」」」
「そんな大層なことはしていないわ。皆さんこそ、共に戦ってくれてありがとう。そして、お疲れ様でした。」
「「「ありがたきお言葉!!!」」」
練習でもしていたかのように、息の合った言葉だった。
ここまで揃うのかと驚きつつ、後ろから近づいてくる生命反応に目を向ける。
そこにはヴェルガやミアスがいた──
死者こそいないものの、被害はかなりあった。
それも物的被害ではなく、人的被害のみ。
慌ただしくしている現場では、私の存在に気付く者もほぼいなかった。
なので私から声をかける。
「状況は?」
「リアラ殿下!何故このような場所に……」
「そんなことより、状況を伝えなさい。」
「は、はっ!失礼いたしました!」
魔物の討伐を行っていた私がこの場にいることに驚きつつも、治療班の班員が状況を報告してくれた。
「死者はいませんが、重傷者10名、軽傷者100数名となっております。こちらが重傷者達です。」
「討伐隊の人数は把握していなかったけれど、数千人はいたわよね。その中でたったこれだけの被害で抑えられて良かったわ。」
「これら全ては、リアラ王女殿下とヴィルガ王太子殿下のおかげです。国が滅んでもおかしくない厄災なのですから。」
「そうね……。」
「ですがリアラ殿下がこちらにいらしたということは…」
「ええ、『厄災日』は無事乗り切ることができたわ。」
「おお…!それはなんと嬉しい知らせでしょう。ここにいる皆にも知らせなければなりません!」
そう言うと、彼は声を張り上げる。
「皆の者!『厄災日』を乗り切ることが出来たそうだぞ!死者もいない!」
「「おお!」」
「「「良かったです!」」」
「「死者無しとは!」」
歓喜の声が上がる。
重傷者として寝かせられている者も、この時ばかりは笑顔になった。
「喜ぶのはまだ早いわよ。怪我人の治療優先。手を止めてはならないわ。」
「「はっ!」」
私がそう言うと、止めていた手を一斉に動かし出す。
先程よりも皆の顔は明るく、治療を行うペースも早くなっているように感じる。
やはり、現場の空気は大切だと思った瞬間だった。
「リアラ殿下、この者を診ては頂けませんか?!」
「見せて頂戴。──なるほどね。骨折と腹部の損傷があるのね。…順に治していくイメージをして……『上位治癒魔法』。」
パァっと光り、癒しの魔法がかけられる。
次の瞬間には治っていた。
「ありがとうございますっ!」と言って頭を下げ、討伐隊の仲間達の元へと走っていった。
その後も重傷者を優先に癒し、残りは軽傷者となった。
1人ずつ魔法をかけるのは面倒なので、一気に行うことにした。
「皆さん、少し中央へ寄って下さい。」
「「??」」
「いいからリアラ殿下の言うことを聞け!」
「「「はっ、はい!」」」
「──ありがとう。この方が早いと思ってね。……《広範囲治癒魔法》。」
「「なっ!?」」
「「「傷が…癒えていく……。」」」
「「「さすがは殿下だ!!」」」
全員の傷が癒えた様子。
大いに盛り上がり、そして一斉に……
「「「リアラ殿下、ありがとうございますっ!」」」
「そんな大層なことはしていないわ。皆さんこそ、共に戦ってくれてありがとう。そして、お疲れ様でした。」
「「「ありがたきお言葉!!!」」」
練習でもしていたかのように、息の合った言葉だった。
ここまで揃うのかと驚きつつ、後ろから近づいてくる生命反応に目を向ける。
そこにはヴェルガやミアスがいた──
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