転生魔法伝記〜魔法を極めたいと思いますが、それを邪魔する者は排除しておきます〜

凛 伊緒

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3章 異魔眼と瞬滅

第37話 始まり

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急に明るく感じ頭上を見上げると、王都を包み込む程の巨大な魔法陣が、空に浮かび上がっていた。



「嘘……よね。私の《魔力感知ディテクション》に反応させる事なく、魔法陣を構築していたなんて…。」

「それにあの魔法陣は……まさか…!」

「今すぐ止めに行かないと!《生命探知サーチ》──反応は3人ね。」

「行こう!」

「ええ!」



そう言い、私は魔法で動きやすい服装に着替える。
転移しようとしたが、時は既に遅かった。

魔法陣が不気味な光を放ち、魔法が発動してしまったのだ。
そしてどこからともなく、3人の男の声が聞こえてくる。



「ここに百人の供物を捧げる。」

「この都市に死を撒き散らせ!」

「いでよ魔物!」



「「「召喚魔法、《魔物召喚サモン》!」」」



その瞬間、王国の中心部である王都が光に包まれた。

光が収まったと同時に、魔法陣から大量の魔物が召喚される。



「くそっ!遅かったか!」

「……。」

「リアラ?」

「…今回ばかりは、使わなければならないわね。」

「……あれを使うのか?」

「それしか方法は無いでしょう?切り札として取っておきたかったのだけれど…仕方ないわ。」

「そう……だな。俺も全力を尽くすとしよう。」

「ここからは、自分の好きなように動いていいわよ。出来るだけ多くの命を救えるようにね。」

「承知した。また後で。」

「ええ。」



2人は別々の方向へと分かれた。



ーーーーーーーーーーーーーー



「きゃぁぁぁぁぁ!」

「誰か!助けてくれ!」



空から次々と降ってくる魔物に、王都は混乱へと陥った。
家は破壊されていく。
個々が強力な魔物だった為、警備兵では5人がかりで一体がやっとの状況だった。



「やだ、来ないで!」



貴族の令嬢らしき女性が魔物に襲われる寸前、光が一線したかと思うと、次の瞬間には魔物は倒されていた。



「大丈夫ですか?」

「え、ええ。助けて下さり、ありがとうございます。」

「当然の事をしたまでです。」



そこに立っていたのは、ミアスだった。
魔物を倒した瞬間を目撃した兵士達は、唖然となる。



「たった一太刀で、あの魔物を…。」

「これが噂に名高い、リアラ殿下の側近ミアス殿か…。」

「流石、の一言だな。」



そう感想を口にしていた。



「呆けている暇があるのなら、少しでも魔物を倒せるよう協力して下さいませんか?」

「「「はっ、はい!」」」



ミアスは魔法と剣の両方を上手く使いながら、魔物を瞬殺していくのだった。



ーーーーーーーーーーーーーー



私は《不可視化インビジブル》を自身にかけ、気配を消していた。
向かった先は、『黒魔法の儀式者』であろう三人組がいる場所である。



(遠距離からの魔法で、束縛しておいた方が良いわね。簡単に捕まってくれるとは思わないから、少し手を打っておきましょうか。)



以前第一王子であるレヴィーアが使った《魔の大軍デモンズアーミー》は、魔物召喚とは違う。
《魔の大軍》は伏せられていた魔法だった。
この魔法の存在を知るのは、一部の貴族だけだ。
戦争に、囮のようにして用いられる事もある。
数は多いが、初級魔法や剣で一撃を入れればすぐに死んでしまうような、弱い魔物が召喚されるのだ。
供物を必要とせず、強力な魔物は出現しない為、禁忌とはされていない国もある。

しかし魔物召喚は、供物が必要であり、強力な魔物を多く召喚する魔法だ。
禁忌とされるのは当然だった。

私はそんな魔法を使う三人の者達を、気付かれぬように束縛しようと考えた。



(《束縛の茨インクリフトバインド》……魔法が発動前に見破られないように──《魔力隠蔽ハイディング》。)



男達の真下に魔法が設置された。
後は発動するだけだ。



(彼らが居る場所の近くに、転移しましょうか。)



瞬間移動テレポート》と同時に、《束縛の茨》を発動させた。



「なっ!何だこれは!」

「動けば茨が刺さるぞ!」

「束縛系の魔法か!一体誰が!」



男達は混乱した。
しかし、近付いてくる少女を見て、納得した。



「その目は……色違いの目オッドアイ!」

「第三王女リアラ……!」

「一番危険視すべきは第三王女きさまだったのか。」



そんな男達に、私は少し圧をかけて言葉を放つ。



「そこで大人しくしていなさい。」

(本来ならすぐに殺すべきだけれど、それは私の役目じゃない。子供が人を殺した……というのは周りから見て良くないわ。ここは大人達に任せましょう。)



そう判断した。
しかし男達は余裕がある表情だった。



「何かあるのしら?」

「俺達を捕らえた所で、状況は何も変わらないぞ?既に魔法は発動しているんだ。」

「その通りだな。俺達が捕まろうと、この王国が滅ぶ事に変わりはない。」

「さぁ、王女サマ?どうするんだぁ?」

(如何にも雑魚っぽい台詞を言うのねぇ。策もなしに突っ込む訳ないでしょうに。)



そんな事を考えながら、もう1つの魔法を発動させた。


「《棘華の捕捉ソーンシーズ》。」

「何っ!」

「私がここに来た理由は、貴方達を逃がさない為よ。私が魔物の殲滅を始めれば、必ず負けだと悟って逃げるでしょうから。」

「意気がるなよ子供ガキが!お前如き簡単に……」

「はぁ~。自分の置かれている状況が理解出来ないのかしら?
貴方達は今魔法を使えない。束縛魔法には追加で《魔法使用不可アンチマジック》をかけておいた。転移は不可能よ。それに、その茨には毒がある。無理に動いて刺されば…ね?それに、植物の生命力を舐めない事よ。」

「くそっ!」

「もう一度言うわ。大人しくしていなさい。苦しみたくないのならね。」



棘華の捕捉ソーンシーズ》とは、棘を持つ紫の花で範囲内を半球で覆い、相手を捕らえる魔法だ。
その棘は、《茨の束縛》と同じ効果を持っている。
つまり、毒&毒という事だ。
更に、2種は魔法で作られているとはいえ植物だ。
生命力が強く、例え切られたとしても再生する。



「《連絡蝶フーライ》。国王ヴィライユ陛下に伝言を。『黒魔法の儀式者三名を捕捉したので、処刑出来る者を頼みます。位置は連絡蝶を調べて下さい。返信は不要です。』と。」



《連絡蝶》はふわりと飛んで行った。
連絡蝶は伝言を伝えた後、20秒ほど残る。
実力者ならば、連絡蝶が飛んで来た場所を特定する事が出来る。



(恐らく、暗部の方達が来るでしょうね…。)



私の予想は的中した。
暗部が近付いてくるのを確認し、その場を離れる。



「さて、次に対処すべきなのは……言うまでもなく、あれね。」



空を見上げ、浮かんでいる魔法陣を睨みつけたのだった──
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