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3章 異魔眼と瞬滅
第35話 過去
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──第二王女レイアネスの誕生祭前夜──
「準備は順調か?」
「ああ。滞りなく進んでるよ。」
夜空の下、バジュスと黒服の男が作戦の最終確認をしていた。
「それは何より。作戦を実行する前に、一つ聞きたいことがある。」
「何だ?ルドゥーリズ侯。」
「何故私の味方をする?お前に何の利点がある。」
「そういえば、まだ理由を言ってなかったな。」
一呼吸置いてから、男は話出した。
「かつてこのフィールア王国と、海を挟んでの隣国である、リースデル帝国との間で大戦があったのは知っているよな?」
「知っているぞ。お互いが大陸に侵攻する為に行った戦の事だな。その大戦の影響で、フィールア王国側の戦場となった村が一つ無くなった……と聞いているが。」
「その通りだ。そして私は、今は亡きその村の出身なんだ。」
「ほう…そうだったのか。」
「ああ。更に、フィールア王国は戦場となるからと言って村を出ろと言ってきた。
前もって言ってくれたのは良かったが、村人達の衣食住全てが奪われた。食べ物は軍に取られ、衣類は持って出る時間も与えられず、住む場所も奪われた。」
「……。」
「全てを奪えるだけ奪い、その先の事は放置。村人総出で訴えたさ。だが余裕が無いと言い、相手にして貰えなかった。
元々貧しく、近くにも住む者達は居ない様な場所にある村だ。
ある者は飢餓で衰弱して死に、またある者は自ら命を絶つ。まさに地獄絵図さ。」
「私は大戦が理由で滅んだのだと、リースデル帝国がしたのかと思っていたぞ……。」
「表向きのはそうさ。だが、事実は違う。王国と軍により、書き換えられた。」
男の話は続いた。
『デルフィー大戦』と呼ばれているこの大戦は、フィールア王国の勝利で終わっていた。
しかし、お互いにこれ以上関与しないという、不可侵条約により終結していただけだった。
大戦の5年後、不可侵条約は撤廃され新たな条約が結ばれた。
手を取り合い、過去の過ちを繰り返さぬよう、互いに良い国を築けるように協力し合うという内容のものだ。
故に、現在は友好的な関係となっている。
「私には妹が居た。名はディルナ。妹は、どうしても家に取りに行きたい物があると言って村に戻った。
だが、フィールア軍が既に占拠していた。5分だけで良いと言ったが、受け入れて貰えず、それでもディルナは頼み続けた。」
「……。」
バジュスは押し黙る事しか出来なかった。
ただひたすらに、男の話を聞いている。
「そんな時だった。一人の男が言ったんだ。
『まさか貴様は、リースデル帝国の者か?内側に潜り、情報を流すつもりなんだろう!?』と。
その言葉に他の兵達も一斉に振り向いた。恐怖を感じたディルナは逃げ出した。だがその行動が、奴の言葉を裏付ける様なものに見えてしまった。
そしてディルナは……殺されたんだ。
味方の兵の手によってな。」
「そんな…。」
「男の言っていた事はもっともだ。だが奴はわざとやったのさ。子供の気持ちも考えずに、ただ面倒だと思ってな。」
「何故わざとだと分かったんだ?」
「そんなの簡単さ。私には生まれつき人の心が読める。《魔眼》と言うのか?相手がどう思っているのか、頭に流れ込んでくるんだよ。」
「ほう。ではその時、妹と一緒に居たのか?」
「ディルナは足が私より遥かに早くてな。一人で行ったから、遠くからのやり取りを魔眼を使って聞く事しか出来なかった…。とても後悔している……。」
「つまり、妹を殺したフィールア王国の軍に復讐したい訳か。」
「そうさ。特に、妹を殺させた奴と殺した者にね。それに、王国にも村の事を含めて責任を取ってもらわないと。」
「ふははは!それで私と組んだ訳か。そうとなれば、最後まで付き合ってもらうぞ、ジルディガー」
「当たり前だ。目的の為には、手段を選んでなんかいられない。」
そうして、刻々と時間は過ぎていったのだった──
「準備は順調か?」
「ああ。滞りなく進んでるよ。」
夜空の下、バジュスと黒服の男が作戦の最終確認をしていた。
「それは何より。作戦を実行する前に、一つ聞きたいことがある。」
「何だ?ルドゥーリズ侯。」
「何故私の味方をする?お前に何の利点がある。」
「そういえば、まだ理由を言ってなかったな。」
一呼吸置いてから、男は話出した。
「かつてこのフィールア王国と、海を挟んでの隣国である、リースデル帝国との間で大戦があったのは知っているよな?」
「知っているぞ。お互いが大陸に侵攻する為に行った戦の事だな。その大戦の影響で、フィールア王国側の戦場となった村が一つ無くなった……と聞いているが。」
「その通りだ。そして私は、今は亡きその村の出身なんだ。」
「ほう…そうだったのか。」
「ああ。更に、フィールア王国は戦場となるからと言って村を出ろと言ってきた。
前もって言ってくれたのは良かったが、村人達の衣食住全てが奪われた。食べ物は軍に取られ、衣類は持って出る時間も与えられず、住む場所も奪われた。」
「……。」
「全てを奪えるだけ奪い、その先の事は放置。村人総出で訴えたさ。だが余裕が無いと言い、相手にして貰えなかった。
元々貧しく、近くにも住む者達は居ない様な場所にある村だ。
ある者は飢餓で衰弱して死に、またある者は自ら命を絶つ。まさに地獄絵図さ。」
「私は大戦が理由で滅んだのだと、リースデル帝国がしたのかと思っていたぞ……。」
「表向きのはそうさ。だが、事実は違う。王国と軍により、書き換えられた。」
男の話は続いた。
『デルフィー大戦』と呼ばれているこの大戦は、フィールア王国の勝利で終わっていた。
しかし、お互いにこれ以上関与しないという、不可侵条約により終結していただけだった。
大戦の5年後、不可侵条約は撤廃され新たな条約が結ばれた。
手を取り合い、過去の過ちを繰り返さぬよう、互いに良い国を築けるように協力し合うという内容のものだ。
故に、現在は友好的な関係となっている。
「私には妹が居た。名はディルナ。妹は、どうしても家に取りに行きたい物があると言って村に戻った。
だが、フィールア軍が既に占拠していた。5分だけで良いと言ったが、受け入れて貰えず、それでもディルナは頼み続けた。」
「……。」
バジュスは押し黙る事しか出来なかった。
ただひたすらに、男の話を聞いている。
「そんな時だった。一人の男が言ったんだ。
『まさか貴様は、リースデル帝国の者か?内側に潜り、情報を流すつもりなんだろう!?』と。
その言葉に他の兵達も一斉に振り向いた。恐怖を感じたディルナは逃げ出した。だがその行動が、奴の言葉を裏付ける様なものに見えてしまった。
そしてディルナは……殺されたんだ。
味方の兵の手によってな。」
「そんな…。」
「男の言っていた事はもっともだ。だが奴はわざとやったのさ。子供の気持ちも考えずに、ただ面倒だと思ってな。」
「何故わざとだと分かったんだ?」
「そんなの簡単さ。私には生まれつき人の心が読める。《魔眼》と言うのか?相手がどう思っているのか、頭に流れ込んでくるんだよ。」
「ほう。ではその時、妹と一緒に居たのか?」
「ディルナは足が私より遥かに早くてな。一人で行ったから、遠くからのやり取りを魔眼を使って聞く事しか出来なかった…。とても後悔している……。」
「つまり、妹を殺したフィールア王国の軍に復讐したい訳か。」
「そうさ。特に、妹を殺させた奴と殺した者にね。それに、王国にも村の事を含めて責任を取ってもらわないと。」
「ふははは!それで私と組んだ訳か。そうとなれば、最後まで付き合ってもらうぞ、ジルディガー」
「当たり前だ。目的の為には、手段を選んでなんかいられない。」
そうして、刻々と時間は過ぎていったのだった──
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