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3章 異魔眼と瞬滅
第31話 強者
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「何を……暗殺者に何をした!?」
先程まで立ち尽くしていたバジュスが一転、大声で怒鳴った。
「答えろ、ミアス!」
「……貴方に命令される筋合いなどありませんよ。」
「貴様…!!」
「落ち着きなさい。私が説明してあげましょう。」
落ち着いた声音で私は言った。
「貴方がこの応接室に来た時、それと同時に5つの生命反応が侵入した事を感じ取ったわ。その者達は全て、気配の消し方が手練の者だった。」
「初めから気付いていただとッッ!?」
「そうよ。そしてこの部屋を囲むような位置へと動いた事と、貴方が来ているという事実によりその正体は直ぐに分かったわ。」
「何だと……。」
「この部屋に近付いた時、ミアスもその者達に気が付いた。だから私はミアスが部屋から出ていく口実を作り、その者達の捕縛を任せたのよ。
ミアスは私の意図を読んで動いてくれたわ。そして今に至るということ。」
私は嘘偽りなく全てをバジュスに伝えた。
バジュスは何やら呟いている。
だが声が小さ過ぎて聞き取れなかった。
「まさか…そんなこと……。気付いていただと?だが事実、奴らは気絶させられた上に捕縛され、もう身動きは取れない…。」
この状況でどう動くのかと思い、私はバジュスを見ていた。
(既に極刑は決まったも同然。王族暗殺未遂なんてことをしたら、どんなに地位が高くてもその権力は無と化す。当然よね。)
そんなことを考えていると、バジュスが口を開いた。
「はは……ははは!!そうですか、そうですか。ですが、この第三王女邸は我が手中も当然なのですよ。捕縛した奴らは牢獄になど送られない。初めからここの者達を引き込んでおいて正解でした。」
「つまり、この屋敷にいる騎士やメイド達はほぼ全て、既に貴方の手の内だった……そして今私が貴方に逆らえば、私を裏切っていた者達によって殺される、という事ね。」
「察しが良くて助かりますねぇ。今頃、奴らはもう逃げている頃だろう。」
その時、部屋に1人の騎士が入って来たかと思うと、私に耳打ちをした。
報告を聞いて、私は笑う。
「報告ご苦労様。戻っていいわよ。」
「はっ!失礼致します。」
私に一礼をし、報告に来た騎士は戻って行った。
それを見送ってから、口を開く。
「どうやら、貴方の思い通りにはならなかったようね。」
「何を言っている……?」
「あら?察しが悪いわね。貴方が送り込んできた刺客は全て、きちんと投獄されたそうよ。残念だったわね。」
「はっ!そんなハッタリは通じませんよ。確かに、ここの連中は我が手中に落ちているのですから!!」
「その思い込みから直す事ね。この第三王女邸にいる限り、私を裏切るような者は不要だわ。」
私はバジュスに向かって言い切った。
その意味を、直ぐに理解したようだ。
「そんなはずはない!私は……この第三王女邸の全てを……」
「手に入れていたとでも?笑えるわね。本当に笑えるわ。簡単に相手を仲間にした、なんて思わない事ね。」
告げられた言葉に、バジュスは青白い顔をしていた。
「くそっ!一体お前は何者なんだ……。まだ7歳の、ただの子供じゃないのか?」
その問いに対し、私ははっきりと答える。
「私はフィールア王国第三王女、リアラ・フィールア。この国と家族を守りたいだけの、ごく普通の王女よ。」
(まぁ国を守るのはついでなのだけれど。魔法を極めたいのに衣食住が無いのは不便だし、魔導書とかも必要になるのよね。)
と、心の中で付け足しておく。
私はバジュスを拘束しようと、魔法を発動させた。
「《束縛の茨》。そのまま大人しく捕まりなさい。」
「ッッ!」
その瞬間、部屋に高密度の魔力を感知した。
何者かがこの部屋に《瞬間移動》をしてきたようだ。
「何者だ!」
ミアスが叫ぶと同時に、剣を構える。
「お初にお目にかかります。リアラ第三王女殿下。」
「貴方……何者かしら?この部屋に《瞬間移動》してくるなんて。」
「失礼ながら、それにはお答え出来ません。では失礼させていただきますね。」
そう言うと、私がバジュスにかけた束縛魔法をあっさりと解除し、《瞬間移動》で姿を消した。
「またいずれ会いましょう。その時は、改めて自己紹介致しますよ…。」
そう、言い残して──
先程まで立ち尽くしていたバジュスが一転、大声で怒鳴った。
「答えろ、ミアス!」
「……貴方に命令される筋合いなどありませんよ。」
「貴様…!!」
「落ち着きなさい。私が説明してあげましょう。」
落ち着いた声音で私は言った。
「貴方がこの応接室に来た時、それと同時に5つの生命反応が侵入した事を感じ取ったわ。その者達は全て、気配の消し方が手練の者だった。」
「初めから気付いていただとッッ!?」
「そうよ。そしてこの部屋を囲むような位置へと動いた事と、貴方が来ているという事実によりその正体は直ぐに分かったわ。」
「何だと……。」
「この部屋に近付いた時、ミアスもその者達に気が付いた。だから私はミアスが部屋から出ていく口実を作り、その者達の捕縛を任せたのよ。
ミアスは私の意図を読んで動いてくれたわ。そして今に至るということ。」
私は嘘偽りなく全てをバジュスに伝えた。
バジュスは何やら呟いている。
だが声が小さ過ぎて聞き取れなかった。
「まさか…そんなこと……。気付いていただと?だが事実、奴らは気絶させられた上に捕縛され、もう身動きは取れない…。」
この状況でどう動くのかと思い、私はバジュスを見ていた。
(既に極刑は決まったも同然。王族暗殺未遂なんてことをしたら、どんなに地位が高くてもその権力は無と化す。当然よね。)
そんなことを考えていると、バジュスが口を開いた。
「はは……ははは!!そうですか、そうですか。ですが、この第三王女邸は我が手中も当然なのですよ。捕縛した奴らは牢獄になど送られない。初めからここの者達を引き込んでおいて正解でした。」
「つまり、この屋敷にいる騎士やメイド達はほぼ全て、既に貴方の手の内だった……そして今私が貴方に逆らえば、私を裏切っていた者達によって殺される、という事ね。」
「察しが良くて助かりますねぇ。今頃、奴らはもう逃げている頃だろう。」
その時、部屋に1人の騎士が入って来たかと思うと、私に耳打ちをした。
報告を聞いて、私は笑う。
「報告ご苦労様。戻っていいわよ。」
「はっ!失礼致します。」
私に一礼をし、報告に来た騎士は戻って行った。
それを見送ってから、口を開く。
「どうやら、貴方の思い通りにはならなかったようね。」
「何を言っている……?」
「あら?察しが悪いわね。貴方が送り込んできた刺客は全て、きちんと投獄されたそうよ。残念だったわね。」
「はっ!そんなハッタリは通じませんよ。確かに、ここの連中は我が手中に落ちているのですから!!」
「その思い込みから直す事ね。この第三王女邸にいる限り、私を裏切るような者は不要だわ。」
私はバジュスに向かって言い切った。
その意味を、直ぐに理解したようだ。
「そんなはずはない!私は……この第三王女邸の全てを……」
「手に入れていたとでも?笑えるわね。本当に笑えるわ。簡単に相手を仲間にした、なんて思わない事ね。」
告げられた言葉に、バジュスは青白い顔をしていた。
「くそっ!一体お前は何者なんだ……。まだ7歳の、ただの子供じゃないのか?」
その問いに対し、私ははっきりと答える。
「私はフィールア王国第三王女、リアラ・フィールア。この国と家族を守りたいだけの、ごく普通の王女よ。」
(まぁ国を守るのはついでなのだけれど。魔法を極めたいのに衣食住が無いのは不便だし、魔導書とかも必要になるのよね。)
と、心の中で付け足しておく。
私はバジュスを拘束しようと、魔法を発動させた。
「《束縛の茨》。そのまま大人しく捕まりなさい。」
「ッッ!」
その瞬間、部屋に高密度の魔力を感知した。
何者かがこの部屋に《瞬間移動》をしてきたようだ。
「何者だ!」
ミアスが叫ぶと同時に、剣を構える。
「お初にお目にかかります。リアラ第三王女殿下。」
「貴方……何者かしら?この部屋に《瞬間移動》してくるなんて。」
「失礼ながら、それにはお答え出来ません。では失礼させていただきますね。」
そう言うと、私がバジュスにかけた束縛魔法をあっさりと解除し、《瞬間移動》で姿を消した。
「またいずれ会いましょう。その時は、改めて自己紹介致しますよ…。」
そう、言い残して──
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