転生魔法伝記〜魔法を極めたいと思いますが、それを邪魔する者は排除しておきます〜

凛 伊緒

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3章 異魔眼と瞬滅

第30話 交渉…?

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「内容を聞きましょうか。」



午後7時頃、第三王女邸に訪れたバジュスに向かい、私は言った。
その声音は普段の彼女とは違い、深みのあるものだった。
空気が変わったことを、その場に居た全員が感じ取った。



(ふむ、ここまで雰囲気を変えられるとは…。これは何としてでも手に入れておきたいな。)



バジュスはそう考え、改めて気を引き締める。



「単刀直入に言いましょう。リアラ殿下、我々と手を組んで頂けないでしょうか。」

「……何に関して、手を組むのかしら?」



バジュスが出す提案の内容によっては、逆に利用出来ると思ったのだ。
味方に付く振りをする事もできる。
聞くだけなら損はないと考えての問だった。
だが、返ってきたのは情報通りのものだった。



「何に関してか、ですか。それはとても単純ですよ。私の下で、少し手を貸して頂ければ良いのです。」

「そう。貴方の下で動くのは気が進まないのだけれど。でも、私が聞いているのはそういう事じゃないわ。はっきりして下さらない?」

「誤魔化そうと思ったのですが、さすがに無理がありますか。……私の真の目的は、『国王』になる事なのですよ。」

「国王…だと?」



知ってはいたが、直接聞くと改めてバジュスが危険だと思えてくる。
だからこそ、冷静にこの場の対処をしなければならないのだが。



「それならなぜ、この私を必要とするのかしら。確かに私は第三王女。故に国王陛下との繋がりもあるけれど、それは貴方も同じ事でしょう?陛下の信頼を得ている臣下なのだから。それに、私よりも姉様や兄様達を頼るのが1番良いと思うのだけれど?」

「ええ。ですが、私には政治に関しての力しかありません。その意味は、お分かりですね?」

「……私に、魔法や剣技などの力を求めると?」

「その通りでございます。この点に関しては、リアラ殿下が1番適任だと思いましたので。それに、私はその見返りも用意致します。」



想定していた通りの返答だった。
しかし、私はその程度で動くような人間ではない。
1人の臣下の為に、家族を差し出すなど考えられなかった。
それに……



「1つ、いいかしら?」

「ええ、何なりと。」

「貴方の今の発言は、反逆罪に問われると思うのだけれど。」

「反逆罪など!私は国王陛下が病弱になった際、まだお若い殿下達がご立派な方になられるまでの、国王代役の権利を得られるようにと考えているのです。」

「本当かしら?」

「無論です。王国を乗っ取ろうなど、考える方が馬鹿馬鹿しいというものです。それに、私は王国の為だけを想っているのですよ。」

「そう……。」



今はそういう事にして、流すのが最適だと思った。




(っ!これは……対処しておきましょうか。)



リアラは何かに気付き、ミアスに合図を送る。
寄ってきたミアスも、勘づいていたようだ。



「リアラ様。紅茶、入れてきましょうか?」

「ええ。お願いするわ。」

「承知致しました。」



他のメイドが変わろうとしたが、ミアスはそれを断って部屋を退室した。



「王女を守る騎士が居なければ、少し危険では?」

「いいえ、問題ないわ。それと、今回の提案だけれど…、」



少し悩むふりをして、私ははっきりと答える。
話を持ちかけられた時から、すでに答えは決まっていた。



「お断りするわ。私は、自身や他人の私利私欲の為だけに、家族を捧げるような真似はしない。」

「そうですか。それは……」



バジュスは薄ら笑いを浮かべて大声で叫ぶ。



「とても残念ですね!貴方をここで、始末しておかなくてはいけなくなったのですから!!」



そう言い、指を鳴らした。
……だが、何も起こらなかった。



「何故だ、何故突入してこない?!奴らは何をしているのだ?!」

「さぁ?何故でしょうね。」

「貴様、何をした!」

「私は何も。それに、王女である私に向かって『貴様』とは、大不敬罪だと思うのだけれど。」

「どうでも良い事よ!貴様を殺し、後始末を完璧にしておけば何も問題はあるまい。」

「そう。でも貴方が頼っていた暗殺者達は来ないわよ?」



私は気付いていた。
部屋の周辺に人の気配があった事を。



「リアラ様。」

「おかえりなさい、ミアス。」



戻ってきたミアスの手には、紅茶とは違うものが握られていた。



「捕縛は完了しております。」

「ご苦労様。思っていたより早かったのね。」



バジュスは放心状態になっていた。
何故暗殺者達が部屋に入ってこなかったのか。
その理由を2人のやり取りで理解したからだ。
そしてミアスが握っていたもの、それは……


剣だったのだ──
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