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3章 異魔眼と瞬滅
第27話 側近と噂
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翌日の朝になった。
いつものように支度をし、朝食を取りながらミアスから1日の予定を聞く。
メイド達には、支度を終えると部屋から去るように命令する為、朝食時はいつもリアラとミアスのみとなる。
「おはよぅ。」
「おはよう、リアラ。今日の予定だけど、メインは監視だな。あとは時々授業があるくらいかな。」
「そう。授業は受けないといけないのよね…。出来れば監視に集中したいのだけれど、彼の取り巻きに怪しまれる訳にもいかないし。」
「ああ。何処に奴の息がかかっている者がいるか分からないしな。怪しまれるような行為は極力避けないといけない。」
1日の予定報告は、普通ならば15歳以上の者が行う。
そういった管理は難しいからだ。
だが、ミアスはこれまでの学業成績・護衛訓練共に、6歳にして教える事が無いと言われたほど優秀だった。
その為、7歳となった日に特例として、側近の役目を全てミアスに任せる事となったのだ。
もちろん、貴族達から反対の声が相次いだ。
まだ子供の身であるミアスに、側近としての役目を全てこなせる訳が無いと。
しかし、私の父でもある国王ヴィライユが許可を出した為、貴族達は認める他なくなった。
一度、私はミアスに聞いたことがあった。
『ミアス、疲れていないかしら?側近としての仕事は大変でしょう。様々な事の管理を、全てこなさなければならないし。』
『いや、問題ないさ。退屈な授業を受けるより、動き回っている方が良い。』
本気でこう思っていると分かった。
大人でも難しい内容を、退屈だと感じていた様子。
傍から見れば当然、異常である。
ミアスの1日はこうなっている。
朝起きてから、昼食までは私と行動を共にする。
昼からは3時間程度、側近の仕事を行う。
予定決めや、会議、その他諸々だ。
その後は私の護衛を兼ねて、朝と同様、行動を共にする。
会議などは特に、大人達の中に場違いな子供が紛れているというような感じになっていた。
初めの1ヶ月ほどは、皆がミアスを訝しげな目で見ていた。
だが今では、その全員がミアスを認めていた。
「さて、今日も1日頑張ろう。」
「そうね。お互い、頑張りましょう。」
──そして、1日が何事もなく終了した。
「今日の収穫は無しね。」
「ああ。普通に休暇を満喫しているようだったな。だが裏では動きがあったみたいだぞ?」
「何ですって?」
「実は、王族の側近が集まる会議で妙な噂を聞いてな。」
「妙な噂?」
「近頃、気配を全く感じさせずに行動をする何者かが、この王城内を走り回っているそうだ。唯一、その姿を見た者が居てな。」
「どんな人なの?」
「黒いマントを羽織っており、顔が見られないようにフードを目深く被っていた…と。奴らは何かの準備をしているかのように、同じ場所を行き来しているようだ。」
「服装だけで言えば、暗殺者みたいね…。」
「確かにな。だが、あまりにも気配が無さすぎて、追うことが出来ないらしい。側近達が知っている情報はこれくらいだ。」
「……教えてくれてありがとう。」
「……どうした?浮かない顔して。」
「気のせいじゃないかしら?」
「そうか?ならいいが。」
本当は、この噂に心当たりがあった。
実はこの黒服の者達を、私は見た事があった。
私が使用する探知魔法は生命探知だ。
気配を感じさせずに動いていても、生命が発している鼓動は隠せない。
だからこそ、王城を警戒していた時に気付いたのだ。
特定の場所を行き来しているのも知っていた。
だが、周囲の者達は気付かない。
魔法使いで、ある程度の実力があるものだったとしても、気のせい程度にしか気付くことが出来ない。
(気配を隠すのが上手い…か。まさか暗殺者……では無いのよね。あれは確か、)
──黒魔法の儀式者──
いつものように支度をし、朝食を取りながらミアスから1日の予定を聞く。
メイド達には、支度を終えると部屋から去るように命令する為、朝食時はいつもリアラとミアスのみとなる。
「おはよぅ。」
「おはよう、リアラ。今日の予定だけど、メインは監視だな。あとは時々授業があるくらいかな。」
「そう。授業は受けないといけないのよね…。出来れば監視に集中したいのだけれど、彼の取り巻きに怪しまれる訳にもいかないし。」
「ああ。何処に奴の息がかかっている者がいるか分からないしな。怪しまれるような行為は極力避けないといけない。」
1日の予定報告は、普通ならば15歳以上の者が行う。
そういった管理は難しいからだ。
だが、ミアスはこれまでの学業成績・護衛訓練共に、6歳にして教える事が無いと言われたほど優秀だった。
その為、7歳となった日に特例として、側近の役目を全てミアスに任せる事となったのだ。
もちろん、貴族達から反対の声が相次いだ。
まだ子供の身であるミアスに、側近としての役目を全てこなせる訳が無いと。
しかし、私の父でもある国王ヴィライユが許可を出した為、貴族達は認める他なくなった。
一度、私はミアスに聞いたことがあった。
『ミアス、疲れていないかしら?側近としての仕事は大変でしょう。様々な事の管理を、全てこなさなければならないし。』
『いや、問題ないさ。退屈な授業を受けるより、動き回っている方が良い。』
本気でこう思っていると分かった。
大人でも難しい内容を、退屈だと感じていた様子。
傍から見れば当然、異常である。
ミアスの1日はこうなっている。
朝起きてから、昼食までは私と行動を共にする。
昼からは3時間程度、側近の仕事を行う。
予定決めや、会議、その他諸々だ。
その後は私の護衛を兼ねて、朝と同様、行動を共にする。
会議などは特に、大人達の中に場違いな子供が紛れているというような感じになっていた。
初めの1ヶ月ほどは、皆がミアスを訝しげな目で見ていた。
だが今では、その全員がミアスを認めていた。
「さて、今日も1日頑張ろう。」
「そうね。お互い、頑張りましょう。」
──そして、1日が何事もなく終了した。
「今日の収穫は無しね。」
「ああ。普通に休暇を満喫しているようだったな。だが裏では動きがあったみたいだぞ?」
「何ですって?」
「実は、王族の側近が集まる会議で妙な噂を聞いてな。」
「妙な噂?」
「近頃、気配を全く感じさせずに行動をする何者かが、この王城内を走り回っているそうだ。唯一、その姿を見た者が居てな。」
「どんな人なの?」
「黒いマントを羽織っており、顔が見られないようにフードを目深く被っていた…と。奴らは何かの準備をしているかのように、同じ場所を行き来しているようだ。」
「服装だけで言えば、暗殺者みたいね…。」
「確かにな。だが、あまりにも気配が無さすぎて、追うことが出来ないらしい。側近達が知っている情報はこれくらいだ。」
「……教えてくれてありがとう。」
「……どうした?浮かない顔して。」
「気のせいじゃないかしら?」
「そうか?ならいいが。」
本当は、この噂に心当たりがあった。
実はこの黒服の者達を、私は見た事があった。
私が使用する探知魔法は生命探知だ。
気配を感じさせずに動いていても、生命が発している鼓動は隠せない。
だからこそ、王城を警戒していた時に気付いたのだ。
特定の場所を行き来しているのも知っていた。
だが、周囲の者達は気付かない。
魔法使いで、ある程度の実力があるものだったとしても、気のせい程度にしか気付くことが出来ない。
(気配を隠すのが上手い…か。まさか暗殺者……では無いのよね。あれは確か、)
──黒魔法の儀式者──
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