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2章 王と陰謀
第10話 王城の守護人
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レヴィーアは、その場で何が起きたのか分からず、唖然としていた。
膨大な魔力を感じて見上げたレヴィーアを、私は見下ろす。
私が魔法を呟いたのと同時に、召喚したはずの魔物達が消滅していた。
そして、声をかけられた瞬間、レヴィーアは我に返った。
「まさかこんな事をするとは、思いもしませんでした。ねぇ?レヴィーア兄様。」
「リア……ラ…。」
「驚いて声も出ませんか?」
「お前が…魔物達を……?」
「そうですよ。私が大魔法を発動させたのです。《魔殲滅の光弓》は、定めたものにだけその効果を発揮します。今回の場合は、『魔物』ですね。」
「そんな……ありえ…ない……。この数の魔物を一瞬で…?そんなの、伝説級魔法じゃないか…。」
レヴィーアは1人、誰にも聞こえないような音量で、言葉を発していた。
「定めたものにだけその効果を発揮する」とは、その指定を国にしてしまえば、魔力さえあれば国1つ簡単に消滅させることが出来る、ということになる。
それを読み取ったレヴィーアは、私の恐ろしさを理解したようだ。
否、理解してしまったのだ。
リアラの異常さを──
「さて、ヴィア兄様。逃げられると困りますので、拘束させて頂きますね?」
「なっ……なんなんだこれは!?」
私がかけた魔法の名は、《束縛の茨》。
相手を拘束し、解除しようと動いた際には痛みを感じさせる上級魔法だ。
「くっっ…!」
「お許しを、兄様。こうでもしないと、逃げるのでしょう?それに、お話がありますから。」
「話…だとっ!?」
「はい。兄様には必ず聞いておいて欲しいことです。それに、悪い知らせばかりではありませんよ?」
「………聞こう。」
私はにっこりと微笑んだ。
瞬間、レヴィーアの顔が青冷めた気がした。
「今回の件、まだ民たちには知られていません。この場にいる者達だけが知っている状況です。何もなかったことにするのも容易なのですよ。」
「ぁ…ああ。」
「ですが、これだけは言っておきます。陛下は全て知っておられますよ。」
「………っ!!」
レヴィーアは絶望に叩き落とされた様な顔をした。
王位を継げなくなるという事実を、突きつけられたからだ。
王位に拘っていたレヴィーアだからこそ、この事実は受け入れ難かった。
「自業自得ですよ。こんな事をせず、時を待っていれば良かったのです。」
「僕には……しなければいけない事があったんだ…!」
「それは国を……民を脅かす事ですか?」
「そんな程度では無い!もっと…重要な事だ!」
「そうですか。では民を脅かす事もすると。それよりも重要とは、考えたくもありませんね。」
「……っ!。」
(僕が…たった5歳の子供に…誘導された……?)
そう、私は誘導したのだ。
レヴィーアが、何故王位に拘っていたのかを話すように。
平常心を保てなくなれば、人は簡単に弱みを見せる。
私はわざとそうなるように仕向け、答えを聞き出した。
1つは、民たちの税等を上げ、自分がとても裕福な生活をする為。
2つ目は、内容までは分からないが、1つ目よりは恐ろしい事だろう。
売国でもするつもりだろうか?
流石にそれはないか、と私は考え直した。
(さて、そろそろ話をつけましょうか。)
「レヴィーア兄様。私は貴方の考えに同情出来ません。それに、私を利用しようとしていたのでしょう?」
「否定はしない。だが、仲良くなりたかったのは事実だ。」
「家族なのですから、その気持ちは当然です。でも、それを良い事に利用されても迷惑です。相手の気になったことがおありですか?」
レヴィーアは押し黙った。
初めて相手の気持ちを考え、もし自分が利用されたら最悪だろう、と思った。
(僕は……。)
「今更後悔しても無駄ですよ。」
「わかっているよ…。」
相手に同情が出来るくらいの感情は持っているのか、と私は思った。
民を苦しめようとしていたのだ。
そう思うのも無理はない。
「お分かりかと思いますが、王位継承権は第二王子であるヴィルガ兄様へと移ります。今回の事を民達は知りませんから、何故かと思うでしょう。」
「なら──」
「ですが、そこは父様が上手くするはずです。
──こんな事をしておきながら、王城に居られると思うほど、あなたの頭は悪くないでしょう。」
私は纏う雰囲気を変える。
普段の子供のような雰囲気ではなく、しっかりとした大人だと印象付く雰囲気に…。
レヴィーアはそんな私を見て、後退りしてしまった。
(これが……リアラ…?)
「さて、レヴィーアさん?あなたは国外追放となります。この国での禁忌魔法、魔の大軍を使用したという事実があるのです。」
「なっ?!……僕が国外追放?そんなのはい──」
「嫌だ、などとは言わせませんよ。お子様ですか?これはお父様…、つまりは国王陛下に確認済みなのです。それとも、死刑にされたいのでしょうか?」
「………国外追放…か。」
これはヴィライユの優しさだった。
フィールア王国には居られないが、他国で生きて欲しいと願っていた。
「お父様の優しさを、蔑ろにするのですか?お父様は貴方に、生きて欲しいと思っているのですよ。」
「分かっているさ。けど……。」
「いくら兄と言えども、私はあなたを許しません。この国を脅かす存在は、今すぐ消すべきだと思っていますから。
ですが陛下の命令は絶対。私はそれに逆らう気はありません。」
「リアラ…。」
「王族でありながら法を犯すとは、民達への顔向けも出来ませんね。表向きはそれ相応の対処をするでしょうけれど、罪が消えた訳では無いのですからね。」
「ああ……。」
「少しは…感謝しているのですよ。魔法を教えてくれたのですから…。借りはこれで返しましたからね。」
最後の言葉を、レヴィーアは聞き取れなかった。
そして次の瞬間、レヴィーアの視界はどこかも分からない草原になっていた。
拘束していた《束縛の茨》も解除されていた。
(転移したのか…。)
レヴィーアは瞬間移動で移動させられていた。
(そう言えば、王城内で騒ぎが起きなくなったのも、リアラが魔法を使い始めてからだったな。王城を、本当の意味で守護していたのは、リアラだったのか……。)
兵士や近衛兵とは違う意味で、王城を守護していたのはリアラだったのだと、レヴィーアは気が付いた。
(いずれは王国自体を守護するんだろうな。)
そう思い、何も無い草原で1人、仰向けになり空を眺めているのだった──
膨大な魔力を感じて見上げたレヴィーアを、私は見下ろす。
私が魔法を呟いたのと同時に、召喚したはずの魔物達が消滅していた。
そして、声をかけられた瞬間、レヴィーアは我に返った。
「まさかこんな事をするとは、思いもしませんでした。ねぇ?レヴィーア兄様。」
「リア……ラ…。」
「驚いて声も出ませんか?」
「お前が…魔物達を……?」
「そうですよ。私が大魔法を発動させたのです。《魔殲滅の光弓》は、定めたものにだけその効果を発揮します。今回の場合は、『魔物』ですね。」
「そんな……ありえ…ない……。この数の魔物を一瞬で…?そんなの、伝説級魔法じゃないか…。」
レヴィーアは1人、誰にも聞こえないような音量で、言葉を発していた。
「定めたものにだけその効果を発揮する」とは、その指定を国にしてしまえば、魔力さえあれば国1つ簡単に消滅させることが出来る、ということになる。
それを読み取ったレヴィーアは、私の恐ろしさを理解したようだ。
否、理解してしまったのだ。
リアラの異常さを──
「さて、ヴィア兄様。逃げられると困りますので、拘束させて頂きますね?」
「なっ……なんなんだこれは!?」
私がかけた魔法の名は、《束縛の茨》。
相手を拘束し、解除しようと動いた際には痛みを感じさせる上級魔法だ。
「くっっ…!」
「お許しを、兄様。こうでもしないと、逃げるのでしょう?それに、お話がありますから。」
「話…だとっ!?」
「はい。兄様には必ず聞いておいて欲しいことです。それに、悪い知らせばかりではありませんよ?」
「………聞こう。」
私はにっこりと微笑んだ。
瞬間、レヴィーアの顔が青冷めた気がした。
「今回の件、まだ民たちには知られていません。この場にいる者達だけが知っている状況です。何もなかったことにするのも容易なのですよ。」
「ぁ…ああ。」
「ですが、これだけは言っておきます。陛下は全て知っておられますよ。」
「………っ!!」
レヴィーアは絶望に叩き落とされた様な顔をした。
王位を継げなくなるという事実を、突きつけられたからだ。
王位に拘っていたレヴィーアだからこそ、この事実は受け入れ難かった。
「自業自得ですよ。こんな事をせず、時を待っていれば良かったのです。」
「僕には……しなければいけない事があったんだ…!」
「それは国を……民を脅かす事ですか?」
「そんな程度では無い!もっと…重要な事だ!」
「そうですか。では民を脅かす事もすると。それよりも重要とは、考えたくもありませんね。」
「……っ!。」
(僕が…たった5歳の子供に…誘導された……?)
そう、私は誘導したのだ。
レヴィーアが、何故王位に拘っていたのかを話すように。
平常心を保てなくなれば、人は簡単に弱みを見せる。
私はわざとそうなるように仕向け、答えを聞き出した。
1つは、民たちの税等を上げ、自分がとても裕福な生活をする為。
2つ目は、内容までは分からないが、1つ目よりは恐ろしい事だろう。
売国でもするつもりだろうか?
流石にそれはないか、と私は考え直した。
(さて、そろそろ話をつけましょうか。)
「レヴィーア兄様。私は貴方の考えに同情出来ません。それに、私を利用しようとしていたのでしょう?」
「否定はしない。だが、仲良くなりたかったのは事実だ。」
「家族なのですから、その気持ちは当然です。でも、それを良い事に利用されても迷惑です。相手の気になったことがおありですか?」
レヴィーアは押し黙った。
初めて相手の気持ちを考え、もし自分が利用されたら最悪だろう、と思った。
(僕は……。)
「今更後悔しても無駄ですよ。」
「わかっているよ…。」
相手に同情が出来るくらいの感情は持っているのか、と私は思った。
民を苦しめようとしていたのだ。
そう思うのも無理はない。
「お分かりかと思いますが、王位継承権は第二王子であるヴィルガ兄様へと移ります。今回の事を民達は知りませんから、何故かと思うでしょう。」
「なら──」
「ですが、そこは父様が上手くするはずです。
──こんな事をしておきながら、王城に居られると思うほど、あなたの頭は悪くないでしょう。」
私は纏う雰囲気を変える。
普段の子供のような雰囲気ではなく、しっかりとした大人だと印象付く雰囲気に…。
レヴィーアはそんな私を見て、後退りしてしまった。
(これが……リアラ…?)
「さて、レヴィーアさん?あなたは国外追放となります。この国での禁忌魔法、魔の大軍を使用したという事実があるのです。」
「なっ?!……僕が国外追放?そんなのはい──」
「嫌だ、などとは言わせませんよ。お子様ですか?これはお父様…、つまりは国王陛下に確認済みなのです。それとも、死刑にされたいのでしょうか?」
「………国外追放…か。」
これはヴィライユの優しさだった。
フィールア王国には居られないが、他国で生きて欲しいと願っていた。
「お父様の優しさを、蔑ろにするのですか?お父様は貴方に、生きて欲しいと思っているのですよ。」
「分かっているさ。けど……。」
「いくら兄と言えども、私はあなたを許しません。この国を脅かす存在は、今すぐ消すべきだと思っていますから。
ですが陛下の命令は絶対。私はそれに逆らう気はありません。」
「リアラ…。」
「王族でありながら法を犯すとは、民達への顔向けも出来ませんね。表向きはそれ相応の対処をするでしょうけれど、罪が消えた訳では無いのですからね。」
「ああ……。」
「少しは…感謝しているのですよ。魔法を教えてくれたのですから…。借りはこれで返しましたからね。」
最後の言葉を、レヴィーアは聞き取れなかった。
そして次の瞬間、レヴィーアの視界はどこかも分からない草原になっていた。
拘束していた《束縛の茨》も解除されていた。
(転移したのか…。)
レヴィーアは瞬間移動で移動させられていた。
(そう言えば、王城内で騒ぎが起きなくなったのも、リアラが魔法を使い始めてからだったな。王城を、本当の意味で守護していたのは、リアラだったのか……。)
兵士や近衛兵とは違う意味で、王城を守護していたのはリアラだったのだと、レヴィーアは気が付いた。
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