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2章 王と陰謀
第8話 王女の策
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レヴィーアは王城の外を見ていた。
リアラの馬車が行ったことを確認する為だ。
だが、馬車は1つたりとも出て行かなかった。
「何故だ?何故馬車が来ない!?まさかリアラは、僕を騙したのか?」
レヴィーアが怒りを感じながら外を見つめていると、後ろにあるドアがノックされた。
「レヴィーア様。ご報告があります。」
「入れ。」
「はっ。失礼致します。」
入ってきたのは、レヴィーアの側近であるギルザディだった。
忠誠を誓った側近だからこそ、今回の計画の全てを話していた。
「報告を聞く前に、1つ問いたい。」
「なんでしょうか?」
「リアラの馬車が出立しないのだが。」
レヴィーアは思っていた事を、そのまま口にした。
「その事について、ご報告に参ったのです。リアラ様は馬車を使わず、走って例の場所へ行かれました。」
「なんだって…?」
レヴィーアは驚愕した。
馬車で1日ほどかかる場所に、走って向かっただと?
「それは真か?」
「はっ。この目で見届けました故、間違いございません。側近であるミアスと共に、魔法の訓練になるからと、ご自身に強化魔法をかけながら走り去って行きました。」
なんという自殺行為だ…とレヴィーアは思った。
だが、それはそれで好都合。
とても時間がかかるだろうからだ。
「たった2人で行ったのか?」
「はっ。誰も付いてこられないだろうから、従者は不要だと言っておられました。」
「そうか。まぁ行ってくれたならいいよ。僕は決行時間まで部屋でいるから、何かあったらまた来てくれ。」
「御意。失礼致します。」
(これで邪魔者はいなくなった。走って行くとは、何を考えているのやら。だが後は計画を成功させるだけになった。)
レヴィーアは笑みを浮かべたのだった──
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
花畑へと続く道を、私とミアスは自身に強化魔法をかけ、走っていた。
「ミアス!分かっていると思うけれど、花畑に行く理由なんて無いから、適当な所で戻るわよ。」
「分かっているよ。『黄金の花』なんて存在しないのに、魔騎士の相手をするなんてごめんだね。」
「ええ。あれは酷かったわね。」
以前私とミアスは夜に王城を抜け出して、噂の真相を確かめに行った。
そこに花畑は確かに存在した。
そして魔騎士も100体出てきたので、嬉嬉として殲滅した。
だが、肝心の『黄金の花』はどこにもなかったのである。
噂は所詮、噂でしかないのだと2人は思った。
魔騎士100体程度、2人にとっては造作もない数だが、相手をするのは時間の無駄であり面倒なのだ。
「ついてきている生命反応は……無いみたいね。」
「そうだな。そもそもついて来れないだろう。」
「それもそうね。だからこそ従者を拒否した訳だし。」
「ああ。だが警戒するに超したことはない。戻る時は不可視化をつかうのだろう?」
「ええ。気付かれては厄介だもの。」
「そうだな。」
走りながら話をしていると、気が付けば花畑の手前にある街に来ていた。
「少し寄っていくか?」
「ええ、そうしましょうか。その後は、来た道を引き返しましょう。丁度いい時間になるでしょうから。」
私の作戦はこうだった。
『黄金の花』を採りに行って来て欲しいと頼まれるのは、想定済みだった。
だからこそ『黄金の花』を採りに行く際、従者がついてこないように、走って行くと言ったのだ。
「信頼のおけるミアスを連れていくから、心配は無用。それに、誰もついてこれないわ。」とリアラ言い、従者を拒否した。
そして途中の街まで行き、昼頃には王城へと戻る事にしていた。
もちろん、魔法を使って夜の計画実行の時間までは、誰にも見つからないようにする。
「さて、そろそろ戻りましょうか。」
「ああ。」
私達は魔法を使い、気配と姿を完全に消したのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
お昼過ぎ──
私とミアスは、誰にも気付かれずに王城へと戻ってきていた。
瞬間移動を使い、私の自室へと戻っていたのだ。
そして王である父に報告をしに行くことにした。
王城の中を移動するのは危険だった為、私の自室へと戻ってきた時のように、瞬間移動で王室まで行くことにした。
「失礼します。突然王室へと入ってしまい、申し訳ありません、陛下。」
「気にするな。そうでもしなければ、気付かれるだろう。」
「お心遣い、感謝致します。」
突然王室に現れたにも関わらず、広い心で許すヴィライユ。
そんな父に、私は心の底から感謝を述べた。
「それにしても、もう戻ってきていたのか。」
「はい。30分ほど前に戻ってきておりました。夜までは、気配や姿を完全消したままにするつもりです。」
「今見えているが大丈夫か?王室には何も仕掛けられぬが。」
「それは大丈夫です。消音の結界を部屋全体に張っております。それに、私とミアスの姿が見えているのは、陛下とマーリルクさんだけですので。」
「そうか。それならば安心だな。」
「はい。」
父である国王ヴィライユには、事前に作戦について話していた。
王城へと戻った時には、父様へ報告を入れると言うことも。
だからこそ、私が突然王室へ来ても驚かなかったのだ。
「作戦は順調のようだね。」
「はい。失敗は許されませんから。」
「大丈夫だよ。きっとリアラなら上手くいく。」
「ありがとうございます、陛下。では私はこれで失礼致します。」
「ああ。全て任せてしまって申し訳ないね。手伝えることがあればと思ったのだが、必要ないみたいだしな…。」
「お気になさらないでくださいっ!私が自分で決めたことですから…。」
「それでも…。リアラ……本当にありがとう。」
「陛下、お礼なら全てが終わった後にしてください。」
そう言って、私は微笑んだ。
すると、父様は苦笑いを浮かべながら頷いた。
そして私は、瞬間移動でその場を後にするのだった──
リアラの馬車が行ったことを確認する為だ。
だが、馬車は1つたりとも出て行かなかった。
「何故だ?何故馬車が来ない!?まさかリアラは、僕を騙したのか?」
レヴィーアが怒りを感じながら外を見つめていると、後ろにあるドアがノックされた。
「レヴィーア様。ご報告があります。」
「入れ。」
「はっ。失礼致します。」
入ってきたのは、レヴィーアの側近であるギルザディだった。
忠誠を誓った側近だからこそ、今回の計画の全てを話していた。
「報告を聞く前に、1つ問いたい。」
「なんでしょうか?」
「リアラの馬車が出立しないのだが。」
レヴィーアは思っていた事を、そのまま口にした。
「その事について、ご報告に参ったのです。リアラ様は馬車を使わず、走って例の場所へ行かれました。」
「なんだって…?」
レヴィーアは驚愕した。
馬車で1日ほどかかる場所に、走って向かっただと?
「それは真か?」
「はっ。この目で見届けました故、間違いございません。側近であるミアスと共に、魔法の訓練になるからと、ご自身に強化魔法をかけながら走り去って行きました。」
なんという自殺行為だ…とレヴィーアは思った。
だが、それはそれで好都合。
とても時間がかかるだろうからだ。
「たった2人で行ったのか?」
「はっ。誰も付いてこられないだろうから、従者は不要だと言っておられました。」
「そうか。まぁ行ってくれたならいいよ。僕は決行時間まで部屋でいるから、何かあったらまた来てくれ。」
「御意。失礼致します。」
(これで邪魔者はいなくなった。走って行くとは、何を考えているのやら。だが後は計画を成功させるだけになった。)
レヴィーアは笑みを浮かべたのだった──
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花畑へと続く道を、私とミアスは自身に強化魔法をかけ、走っていた。
「ミアス!分かっていると思うけれど、花畑に行く理由なんて無いから、適当な所で戻るわよ。」
「分かっているよ。『黄金の花』なんて存在しないのに、魔騎士の相手をするなんてごめんだね。」
「ええ。あれは酷かったわね。」
以前私とミアスは夜に王城を抜け出して、噂の真相を確かめに行った。
そこに花畑は確かに存在した。
そして魔騎士も100体出てきたので、嬉嬉として殲滅した。
だが、肝心の『黄金の花』はどこにもなかったのである。
噂は所詮、噂でしかないのだと2人は思った。
魔騎士100体程度、2人にとっては造作もない数だが、相手をするのは時間の無駄であり面倒なのだ。
「ついてきている生命反応は……無いみたいね。」
「そうだな。そもそもついて来れないだろう。」
「それもそうね。だからこそ従者を拒否した訳だし。」
「ああ。だが警戒するに超したことはない。戻る時は不可視化をつかうのだろう?」
「ええ。気付かれては厄介だもの。」
「そうだな。」
走りながら話をしていると、気が付けば花畑の手前にある街に来ていた。
「少し寄っていくか?」
「ええ、そうしましょうか。その後は、来た道を引き返しましょう。丁度いい時間になるでしょうから。」
私の作戦はこうだった。
『黄金の花』を採りに行って来て欲しいと頼まれるのは、想定済みだった。
だからこそ『黄金の花』を採りに行く際、従者がついてこないように、走って行くと言ったのだ。
「信頼のおけるミアスを連れていくから、心配は無用。それに、誰もついてこれないわ。」とリアラ言い、従者を拒否した。
そして途中の街まで行き、昼頃には王城へと戻る事にしていた。
もちろん、魔法を使って夜の計画実行の時間までは、誰にも見つからないようにする。
「さて、そろそろ戻りましょうか。」
「ああ。」
私達は魔法を使い、気配と姿を完全に消したのだった。
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お昼過ぎ──
私とミアスは、誰にも気付かれずに王城へと戻ってきていた。
瞬間移動を使い、私の自室へと戻っていたのだ。
そして王である父に報告をしに行くことにした。
王城の中を移動するのは危険だった為、私の自室へと戻ってきた時のように、瞬間移動で王室まで行くことにした。
「失礼します。突然王室へと入ってしまい、申し訳ありません、陛下。」
「気にするな。そうでもしなければ、気付かれるだろう。」
「お心遣い、感謝致します。」
突然王室に現れたにも関わらず、広い心で許すヴィライユ。
そんな父に、私は心の底から感謝を述べた。
「それにしても、もう戻ってきていたのか。」
「はい。30分ほど前に戻ってきておりました。夜までは、気配や姿を完全消したままにするつもりです。」
「今見えているが大丈夫か?王室には何も仕掛けられぬが。」
「それは大丈夫です。消音の結界を部屋全体に張っております。それに、私とミアスの姿が見えているのは、陛下とマーリルクさんだけですので。」
「そうか。それならば安心だな。」
「はい。」
父である国王ヴィライユには、事前に作戦について話していた。
王城へと戻った時には、父様へ報告を入れると言うことも。
だからこそ、私が突然王室へ来ても驚かなかったのだ。
「作戦は順調のようだね。」
「はい。失敗は許されませんから。」
「大丈夫だよ。きっとリアラなら上手くいく。」
「ありがとうございます、陛下。では私はこれで失礼致します。」
「ああ。全て任せてしまって申し訳ないね。手伝えることがあればと思ったのだが、必要ないみたいだしな…。」
「お気になさらないでくださいっ!私が自分で決めたことですから…。」
「それでも…。リアラ……本当にありがとう。」
「陛下、お礼なら全てが終わった後にしてください。」
そう言って、私は微笑んだ。
すると、父様は苦笑いを浮かべながら頷いた。
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