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2章 王と陰謀
第5話 2つの計画
しおりを挟む「……と言う訳で、少し行ってくるわね、ミアス。」
「了解した。くれぐれも気を付けるんだぞ。」
「分かってるわよ。そっちこそね。」
「ああ。」
録音した魔法具を持って、私はとある場所へと行った。
かなり広いく、日が沈んで真っ暗な王城の中、最上階へと続く道を、音もなく駆ける。
やがて、1つの部屋の前に辿り着いた。
扉をノックし、中にいる人物に声をかける。
「陛下。まだ起きていらっしゃいますか?」
「ああ。入りたまえ、リアラ。」
「失礼します。」と言いながら、私は中へと入った。
「夜分遅く、申し訳ございません。」
「気にしなくていい。こんな時間でなければ行けない案件なのだろう?」
私は全てを見透かされているような気がした。
(私が言わなくても、知っているのでは?でも…)
声が漏れないよう、防音魔法を部屋にかけておいた。
「回りくどい事は好まないので、単刀直入に。先ずはこの魔法具に録音された音声を聞いてください。」
その場で、昨夜レヴィーアと男が話していた内容を、録音された魔法具を使い、父であるヴィライユ国王と、その側近であり国王の幼なじみであるマーリルクに聞かせる。
「──!陛下、これは!」
「とうとう掴めてしまったか…。」
「どうなされるのですか?」
「そうだね。我が子を罰するのは気が引けるね。でもまさか、リアラが…。」
聞き終えた時、2人は何かを話していたが、私には聞こえていなかった。
だが前世の知識を持つ私は、何となく話している内容がわかった。
(私がすべき事は…。)
「あの…、少しいいですか?お父さ……陛下。」
「お父様でも構わないよ。今いるのは私を含めて3人だからね。」
「ありがとうございます、お父様。」
「気にしなくていいよ。それで、何を言おうとしたんだい?」
「その…、今回のレヴィーア兄様の事、私に任せてくれませんか?」
「ほう?」
「私の魔法の腕は、国王であるお父様なら知っておられるでしょう?決して自惚れている訳ではありませんが、決行する前に止める事が可能かと。」
そう、私は提案した。
だが素直に受け入れてくれるとは思っていない。
「それは…」
「危険ではありませんか?殿下の魔法の腕は知っておりますが、さすがにこれは…」
マーリルクは特に否定的な反応だが、まだ迷いがある。
(あと一押しかしら?)
「大丈夫ですよお父様、マーリルクさん。私はレヴィーア兄様と仲が良いですし。何故か兄様も私を色々な事に誘ってくれて、とてもよくしてくれています。ここは私を信じて頂けないでしょうか?」
「そうだね…。リアラほどの魔法士を、私は見た事がない。でも余りにも危険が伴う。その覚悟を、リアラは持っているかい?」
かなり重い覚悟が必要だと、父は目で訴えてくる。
最悪、人を殺さなければ行けないかもしれないからだ。
そこで私は、にっこりと微笑んで言った。
「もちろんです。元々そうなる事はわかっていて、ここへ来たのですから。その覚悟がなければ、私は今ここにはいません。ですからそんなに心配されなくても大丈夫ですよ、お父様。」
「そう…か。ありがとう。」
「お礼には及びません。私は家族のため、民のためになる事をしたいだけですから。」
そう、私ははっきりと父の目を見て言った。
父は少し驚いていたが、私には驚く理由が分からなかった。
当然の事を言ったまでなのだから。
「ではお父様。私はこれにて、失礼させて頂きます。早速明日から、取り掛かろうと思いますので。ですが父様も十分に気を付けてくださいね。」
「ああ。だが自分の身くらいは自分で守るよ。それに、マーリルクもいる事だしね。」
「そうですね。ですが何かあれば、直ぐに知らせてくださいね。」
「わかった。リアラも気を付けて、慎重に行動するんだぞ。」
「はい。ありがとうございます。」
「では失礼します。」と出ていくリアラの背中を、ヴィライユは笑顔で見送ってから、口を開いた。
「まさかリアラが来るとはね。」
「私も予想外だったよ、ヴィユ。それに、部屋に入ってきた時、何の予備動作なく防音系の魔法を使って、外から聞こえないようにしていたみたいだ。」
「それは気付かなかったな。」
「ああ。これには驚いたよ。もしかすると、この国で1番強い魔法士はリアラじゃないか?」
「それは有り得るかもな。剣術に武術も、相当なものだと聞いているよ。」
「それは凄いな。レヴィーアが手中に収めておきたいのも納得だ。」
既にヴィライユとマーリルクは、レヴィーアかリアラと親しくする理由を知っていた。
国王だからこそ、様々な情報が入ってくる。
そしてその側近であるマーリルクも知っていて当然だった。
「そう言えば、リアラの側近であるミアスも、中々の子らしいよ。」
「ミアスが?それは面白いじゃないか、ヴィユ」
「ああ。何でも、リアラの魔法訓練について行っているらしい。それに頭も良くて、大人達が何処まで行けるのかと言って、毎日更なる知識と知恵を教えてるらしいよ。」
「まさに『神童』という言葉がお似合いの2人だな。」
「本当に、嬉しいのやら恐ろしいのやら。」
そう、苦笑を漏らす2人だった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
リアラとヴィライユ達が話していた頃。
リアラの自室には、レヴィーアが来ていた。
「夜遅くに済まないね。リアラの顔が見たくなってしまって。」
「構いませんよ。ですがリアラ様は、つい先程ご就寝されました。」
「そっか。じゃあ何故ここに君が?」
「私はリアラ様から『寝るまでここにいて』と言われましたので。今から自室に戻ろうとしていたところです。」
「そうか。リアラのところに行ってもいいかい?」
「どうぞ。」
そう言って、ミアスはレヴィーアをリアラの分身体が眠る場所まで案内した。
熟睡しているリアラを、レヴィーアはまじまじと見る。
そして何かを確認して頷くと、リアラから離れ、部屋を出るべくドアの方へと向かった。
「リアラの可愛い寝顔だけでも、見られて良かったよ。何かあったら困るからね。」
「この私がいる限り、誰が来ようと何もさせませんよ。」
「それは何とも心強いね。ぜひリアラの護衛を頼むよ。」
「もちろんです。それが私がここにいる理由ですから。」
それを聞いて、レヴィーアは苦笑してから部屋を出ていった。
(特に変なところはなかったな。分身体という訳ではなく、ちゃんと本体だったようだ。まぁ5歳児が超級魔法並みの分身魔法を扱える訳がないか。)
そう、まんまと騙されるレヴィーアであった。
もちろん、見破られないように、リアラは自分の分身体に、その他様々な魔法を仕掛けていたために、気付かれなかっただけなのだが。
1人リアラの部屋に残ったミアスは薄く笑った。
(本当に、まんまと騙されたね。リアラの最高傑作の分身体は、やはり見破られる事はなかったよ。)
そうして、リアラの計画と、レヴィーアの計画はお互いに順調に進んでいたのだった。
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