転生魔法伝記〜魔法を極めたいと思いますが、それを邪魔する者は排除しておきます〜

凛 伊緒

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2章 王と陰謀

第4話 側近と迫り来る影

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「──というわけなの。あなたはどう思う?ミアス。」


昨夜の事を、事細かにミアスに話した。

ミアスとは、4歳になった時に私の側近として来た少年だ。
年齢に不相応なほどしっかりしており、頭も良く、魔法訓練にも付き合ってくれている。
その為、ミアスの魔法技術も周りから見れば常識外れなものになっていた。
私に対して敬語や敬称を使っていたが、1週間ほど経った頃に「これからずっと一緒なんだから、そんな堅苦しいのはやめて。」と却下した。
ミアスは当時渋々それを受け入れたが、今では普通となっていた。
もちろん、他人が居る時は、上下関係をはっきりさせている。



「…少し調べる必要はあると思う。だが向こうも危険視してるはずだ。慎重に動くべきだな。」

「そうね。でも呑気にもしていられないわ。」

「そもそもだが、夜に城内を歩き回るなっつーの。」

「いいじゃない。したかったんだもの。」

「あのなぁ?いくら城内とは言え、何があるか分からない。お前に何かあったら、俺の存在意義が無くなるんだぞ。」

「分かってるって。万一にも何も起こらないように気を付けてます~。」

「本当に分かっているんだか。俺の苦労も考えてくれよな。」



私は、気を抜くと元の喋り方に戻る。
彼の前では気を許している為、こういう風になるのは常だ。
そんな私を見ながら、「はぁ~」とため息を吐くミアスだった。
5歳児同士がこんな話をして、お互いに理解している事自体、周りから見れば異様なのだが。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ミアスに全てを話したその日の夜。
私はまた城内散策をしていた。
不可視化インビジブル》と《消音サイレント》を使用している為、誰にも気付かれることはない。
さらに言えば、分身体を部屋に寝かせておいた。


「ここまで用心深くすれば、問題ないでしょ。」


消音サイレント》を使用している為、どんなに騒いでも、動いてもバレる事はない。
だが、物音は消せない。
そこだけが、この魔法の弱点だった。

しばらく歩くと、怪しげな2人が話しているのが見えた。
「ビンゴ!」と思いながら、かなり近くまで行く。 
私は、計画の詳細を男がレヴィーアに伝えに来るだろうと踏んで、予め《生命探知サーチ》を使いながら素早く歩く生命反応を追っていた。



「さて殿下、誰にもバレていませんでしょうね?」

「もちろんだ。誰にも気付かれないよう、慎重に動いてきたからね。」

「それはそれは。では、計画の全容をお教え致します。」

「ああ。頼むよ。」



黒のフード付きコートを羽織った2人の男が、怪しげな会話を始めたところだった。
その内の「殿下」と呼ばれた人物は、他でもないレヴィーアだった。


(やっぱりね。全てこの録音魔法具に記録させてやるんだから。)


私は握り締めた円盤型の魔法具を、静かに起動させた。



「計画は1週間後に決行致します。」

「中々早いんだね。それで上手く行くのかい?」

「計画内容を聞いて頂ければ納得されるかと。」

「そっか、わかったよ。じゃあよろしく。」

「はい。まず──」



私は全てを聞いて、驚愕した。
そして、1週間後に備えて、この計画を阻止しようと動き出したのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「結局、また行ったのか。ここまで念入りにされちゃあ、ダメ出しする場所もないな。後は無事に戻って来るのを待つしかないか。」


リアラの部屋に、あえて様子を見に来たミアスは、そこで寝ているのが分身体だと解った。
リアラに日々魔法を鍛えられ、大人達からは様々な知識や知恵を、常人より教えられる。
それを全てミアスは吸収しているのだから、大人達が何処まで出来るのか見たくなるのは、当然と言えた。
そしてリアラに鍛えられた彼だからこそ、寝ているのが分身体だと解ることが出来た。


「何か確かな証拠を掴んでくれるといいけど。」


そう思い、ミアスは自室に戻ったのだった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


レヴィーアはリアラを警戒していた。
この2年、魔法を教えてから、更に好印象を与える為に、様々な事をリアラに教えてきた。
だが、リアラの魔法はイメージが独特で、5歳なのに創造オリジナル魔法とも言える魔法を使っていた。
そしてその威力は、超級魔法にも届きそうな程である。
そして警戒する理由はもう1つ。


(リアラって、妙に聡い部分があるんだよな…。まだたったの5歳なのに、難しい言葉も理解しているし。)


何度か試す意図もあって、普通5歳児が理解出来ない様な言葉を使ってみたのだが、その全てをリアラは理解していた。


(今回の計画が成功したら、彼女の行動範囲を制限しよう。僕の計画を邪魔されては、たまったもんじゃない。)


そう思い、レヴィーアはリアラに少しずつ、だが確実に、その手を伸ばし始めたのだった。
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