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2章

第30話

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「なぁへレア。これどう思う?」
「十中八九、ライラでしょうね。」
「やっぱりか。」


ドーフェンが見せてきた手紙。そこには一言だけ書かれていたわ。
『大事な話があるので放課後に1人で校舎裏に来て欲しい』…と。手紙を不審に思ったドーフェンが、放課後私に相談してきたといった状況ね。
筆跡からライラだと直ぐに分かったわ。どれだけ隠そうとしても、彼女の字の書き方は少し癖があるもの。
それに『1人で』と強調して書かれているところを見ると、今度はドーフェンを狙っているのだと分かる。2人以上での行動という手段は間違っていなかったようね。


「渡してきた人が彼女ではなかったが、そういう事なんだろう。」
「ええ。確実に貴方を1人にする為でしょう。そうと分かっていて、貴方は行くのかしら?」
「行くわけがない。魅了魔法なんて、かけられたくないからな。」


ドーフェンならあえて行くかもしれないと思ったけれど、さすがに危険は冒さないようね。


「だが確かめに行かないか?」
「確かめる?」
「校舎裏が見える場所から、誰が来るか確認するのさ。」


ドーフェンが直に確認したいのでしょう。想定外の事が起きる可能性もあるから、付き合ってあげた方がいいわね。
本当はライラの位置を常に把握できるよう闇魔法をかけたかったのだけれど、光魔法の使い手である彼女の魔力に弾かれてしまうのよね…。

闇には光が効き、光には闇が効かない、一方通行のような関係。とはいえ光魔法は治癒や結界が主なので、こちらが不利になるということはない。
そして私に魅了魔法が意味をなさないように、闇に闇は通じない。それどころか、魔力は闇魔法の使い手の方が多い。つまりは力ずくならば多少弾かれようとも、光に通ずるということ。
けれどそこまでの力を使ってしまえば、ライラに『闇魔法が使えます』と言っているようなもの。闇魔法で創造した小型の動物ですら弾かれてしまうので、監視は直に行うしかなかった。


「そうね…、行ってみましょうか。」
「決まりだな。」


ドーフェンと共に、校舎裏が見える位置に移動する。普段授業をしている校舎とは別の建物から見下ろす形ね。
メリーア様にも事情を説明し、同行して頂いたわ。1人でいる時間を作らない為ね。
クレスディア殿下とゼルヴィーサ様は2人で寮に向かわれたから、心配事は今のところ無いわね。

午後の授業が終わってから十数分経っているからか、既に誰かが待っている様子。
よく見てみると、ライラとよく居る女子生徒ね。


「彼女が?」
「ああ。手紙を渡してきた生徒に間違いない。」
「ドーフェン…、彼女1人よ?」
「うっ…。見た限りでは1人だが、レアが筆跡を見て判断したんだ。俺の所為じゃないだろう?」


メリーア様の仰る通り、裏で待っていたのは女子生徒1人だった。本物の告白だった可能性が出てきたわね…。
とはいえ、ドーフェンが責任を押し付けてくるとは。
ドーフェンは私達といる時、あまり商人としての顔を見せない。常に警戒の意識があるのかポーカーフェイスだけは崩さないけれど、今のように口達者な彼とは思えない言葉を口にすることがあるのよね。心を許してもらえている証でもあるから、悪い気はしないけれど。
ふと辺りを見渡すと、彼女以外に人影が見えた。


「レディに責任転嫁とは酷いわね。行かないと決めたのはドーフェンじゃない。しかしメリーア様、彼女の左奥、建物に隠れている者がいますよ。」


3人で窓を覗きながら、私が指差した方向を見る。そこには、見慣れた人の姿があった。


「……行かなくて正解だった。」
「そのようね…。」


建物の影に隠れていたのは、他でもないライラだった。
これで確定ね。けれどメリーア様の時と同じで、行かなければあらぬ噂を広められる可能性がある。
私たちは顔を見合せて、頷く。考えていることは同じようね。
そうと分かれば、即座に動かなくては。向かう場所は当然──
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