上 下
129 / 140

第129話 てめえ誰だよ

しおりを挟む
突然リカの家に入ってきた男に動揺を隠せない祐輝はただその場で困惑していた。


シクシクと泣いているリカの隣でタバコを吸っている男が口を開いた。


「てめえ誰だよ」と睨みつける男に対して祐輝は「てめえこそ誰だよ」と言い返した。




「こいつは俺の女だ。」
「え、リカ?」
「・・・・・・」




どう見ても親子ほど年齢の離れている2人だったが俺の女だと言い張る男にリカは黙っていた。


やがて出血が止まると「今日の所は帰るわ」と男性は家を出ていった。


去り際に男は「こいつと関わると後悔するぞ」と言い残して去っていった。


沈黙の中で祐輝は「あいつ何?」と口を開いた。




「昔お金を借りちゃったんだよね・・・」
「返したの?」
「うん・・・でもそれ以来ちょっとね・・・」




シクシクと泣いているリカは震えながら「助けて・・・」と祐輝を見ていた。


困惑する祐輝は男とリカの関係について詳しく聞き始めた。


高校生であるリカは既に一人暮らしをしていた。


年齢を言っていなかったリカの事を大学生ぐらいと勝手に思っていたが、実は祐輝と同い年の18歳だった。


まだ在学中のリカが家を借りられた理由こそがあの男だった。




「どうして実家にいないの?」
「私親に虐待されてるの・・・」



そういってリカは服を少しだけ脱ぐと大きなアザを見せた。


思わず絶句する祐輝は家出の果てにここで一人暮らしをしているのだと察した。


そして家を未成年が借りる事はできずにあの男の力を借りた。




「そういう事か・・・」
「もうどうしよう・・・」
「東京来る? 俺の家にしばらくいればいいよ。」




祐輝はアザを擦るリカを見てはいられなかった。


このまま、長野にいてもあの男はリカを我が物にしようと永遠に近づいてくる。


どう見てもあの男はまともな社会人の見た目ではなかった。


確実に反社会の世界の人間だった。



「いきなり行っていいの? 祐輝は実家なんでしょ・・・」
「母ちゃんに話してみるわ・・・」




そう言って祐輝はリカを連れて直ぐに長野を出た。


リカの暮らす家の名義はあの男だった。


何もかも放置してもリカの責任にはならなかった。


夜逃げでもするかの様に必要なものだけを持って2人で東京へと逃げ帰った。


新宿の家に戻ると祐輝は真美に相談をした。



「あんたその子とどれぐらい一緒なの?」
「まだ会ったの2回目・・・」
「いやあ・・・女の子は信用できないよ?」
「あいつはそんな事ないと思う・・・だって肩にデカいアザもあったし・・・可愛そうだよ・・・」




とりあえずリカを連れてくると真美は気まずそうな表情で会釈した。


しかしリカは非常に礼儀正しく「ご迷惑おかけします」と深々と頭を下げていた。


真美も「しばらくはここにいなさい」とリカを受け入れた。


そしてリカを風呂場に案内して入浴させている間に真美は真剣な眼差しで「どうするつもり?」と話していた。




「付き合おうかな。」
「あんたあの娘を全然知らないんでしょ。」
「これから知っていくよ。 あんな可愛そうな同い年は放っておけないもん。」




こうしてリカは夜逃げをする形で祐輝の家に入った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

家庭菜園物語

コンビニ
ファンタジー
お人好しで動物好きな最上 悠(さいじょう ゆう)は肉親であった祖父が亡くなり、最後の家族であり姉のような存在でもある黒猫の杏(あんず)も静かに息を引き取ろうとする中で、助けたいなら異世界に来てくれないかと、少し残念な神様に提案される。 その転移先で秋田犬の大福を助けたことで、能力を失いそのままスローライフをおくることとなってしまう。 異世界で新しい家族や友人を作り、本人としてはほのぼのと家庭菜園を営んでいるが、小さな畑が世界には大きな影響を与えることになっていく。

【ショートショート】雨のおはなし

樹(いつき)@作品使用時は作者名明記必須
青春
◆こちらは声劇、朗読用台本になりますが普通に読んで頂ける作品になっています。 声劇用だと1分半ほど、黙読だと1分ほどで読みきれる作品です。 ⚠動画・音声投稿サイトにご使用になる場合⚠ ・使用許可は不要ですが、自作発言や転載はもちろん禁止です。著作権は放棄しておりません。必ず作者名の樹(いつき)を記載して下さい。(何度注意しても作者名の記載が無い場合には台本使用を禁止します) ・語尾変更や方言などの多少のアレンジはokですが、大幅なアレンジや台本の世界観をぶち壊すようなアレンジやエフェクトなどはご遠慮願います。 その他の詳細は【作品を使用する際の注意点】をご覧下さい。

KAKIDAMISHI -The Ultimate Karate Battle-

ジェド
歴史・時代
1894年、東洋の島国・琉球王国が沖縄県となった明治時代―― 後の世で「空手」や「琉球古武術」と呼ばれることとなる武術は、琉球語で「ティー(手)」と呼ばれていた。 ティーの修業者たちにとって腕試しの場となるのは、自由組手形式の野試合「カキダミシ(掛け試し)」。 誇り高き武人たちは、時代に翻弄されながらも戦い続ける。 拳と思いが交錯する空手アクション歴史小説、ここに誕生! ・検索キーワード 空手道、琉球空手、沖縄空手、琉球古武道、剛柔流、上地流、小林流、少林寺流、少林流、松林流、和道流、松濤館流、糸東流、東恩流、劉衛流、極真会館、大山道場、芦原会館、正道会館、白蓮会館、国際FSA拳真館、大道塾空道

初恋

藍沢咲良
青春
高校3年生。 制服が着られる最後の年に、私達は出会った。 思った通りにはなかなかできない。 もどかしいことばかり。 それでも、愛おしい日々。 ※素敵な表紙をポリン先生に描いて頂きました。ポリン先生の作品↓ https://www.comico.jp/articleList.nhn?titleNo=31039&f=a ※この作品は「小説家になろう」「エブリスタ」でも連載しています。 8/28公開分で完結となります。 最後まで御愛読頂けると嬉しいです。 ※エブリスタにてスター特典「初恋〜それから〜」「同窓会」を公開しております。「初恋」の続編です。

クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル

諏訪錦
青春
アルファポリスから書籍版が発売中です。皆様よろしくお願いいたします! 6月中旬予定で、『クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル』のタイトルで文庫化いたします。よろしくお願いいたします! 間久辺比佐志(まくべひさし)。自他共に認めるオタク。ひょんなことから不良たちに目をつけられた主人公は、オタクが高じて身に付いた絵のスキルを用いて、グラフィティライターとして不良界に関わりを持つようになる。 グラフィティとは、街中にスプレーインクなどで描かれた落書きのことを指し、不良文化の一つとしての認識が強いグラフィティに最初は戸惑いながらも、主人公はその魅力にとりつかれていく。 グラフィティを通じてアンダーグラウンドな世界に身を投じることになる主人公は、やがて夜の街の代名詞とまで言われる存在になっていく。主人公の身に、果たしてこの先なにが待ち構えているのだろうか。 書籍化に伴い設定をいくつか変更しております。 一例 チーム『スペクター』       ↓    チーム『マサムネ』 ※イラスト頂きました。夕凪様より。 http://15452.mitemin.net/i192768/

「無題日記。」

青春
ある高校で密かに行われている日記交換。 年齢・学年問わずに参加できるこの交換日記は人に知られてはならない。

【本編完結】五人のイケメン薔薇騎士団団長に溺愛されて200年の眠りから覚めた聖女王女は困惑するばかりです!

七海美桜
恋愛
フーゲンベルク大陸で、長く大陸の大半を治めていたバッハシュタイン王国で、最後の古龍への生贄となった第三王女のヴェンデルガルト。しかしそれ以降古龍が亡くなり王国は滅びバルシュミーデ皇国の治世になり二百年後。封印されていたヴェンデルガルトが目覚めると、魔法は滅びた世で「治癒魔法」を使えるのは彼女だけ。亡き王国の王女という事で城に客人として滞在する事になるのだが、治癒魔法を使える上「金髪」である事から「黄金の魔女」と恐れられてしまう。しかしそんな中。五人の美青年騎士団長たちに溺愛されて、愛され過ぎて困惑する毎日。彼女を生涯の伴侶として愛する古龍・コンスタンティンは生まれ変わり彼女と出逢う事が出来るのか。龍と薔薇に愛されたヴェンデルガルトは、誰と結ばれるのか。 この作品は、小説家になろうにも掲載しています。

下弦に冴える月

和之
青春
恋に友情は何処まで寛容なのか・・・。

処理中です...