上 下
123 / 140

第123話 ヤバいだろ・・・

しおりを挟む
夏の大会が迫るある時の事だった。


いつもの様に仲間と牛丼を食べて家に帰るために電車に乗るとアヤノと遭遇した。


何かを言いたそうに黙り込んでいるアヤノに尋ねると驚く事を話し始めた。



「あ、あのね・・・実は私けんせーと付き合ってるんだよね・・・」
「はあ!?」
「ごめん言えなくて。 もう2ヶ月になるの・・・」
「ヤバいだろ・・・」




今日まで知らなかった祐輝は驚いて言葉を失った。


祐輝はずっとアヤノと付き合えるのではないかと考えていたが勘違いだったのかと愕然としていた。


何よりもけんせーに教えてもらえなかった事に衝撃を隠せずにいた。


突然の事だったが祐輝は「よかったね」と絞り出す様な声は口にしたがアヤノは元気がなかった。



「どうしたの?」
「あ、あのね・・・なんか最近冷たいって言うか・・・」
「夏の大会が近いからなー。」
「そうなのかなー。」



けんせーの様子がおかしいと不安げなアヤノを見ているが心の整理がついていない祐輝は困惑していた。


まさかあの呑気なけんせーが知らぬ間にアヤノと付き合っていたとは。


きっとけんせーは夏の大会に向けて真剣だからアヤノを構えないのだろうと話すと駅に着いて降りていく細身の後ろ姿を見ていた。




「はあ・・・マジかよ・・・」



家に帰るとアヤノからメールが来ていた。


「突然でごめんね・・・この事はけんせーには言わないで」と付き合っている事を隠してほしいと頼まれた。


携帯電話をベッドに投げ捨てると家の屋上に行って夜の新宿の街を見ていた。


眠らぬ街で欲望が渦めき合う。


そんな街を見て祐輝は純粋な心を痛めていた。



「なんで2人とも言ってくれなかったんだよ・・・」



付き合った事の衝撃もあったが、それ以上に教えてくれなかった事へ悲しさを感じていた。


そして部屋に戻って一夜明けると学校へ向かった。


高校に向かって歩いているとけんせーがいつもの様に「おはよー!!」と抱きついてきた。




「おお・・・」
「元気ないやん?」
「ちょっと具合悪くてね・・・」




親友だと思っていた。


だがそんな事はなかったのかと困惑している。


会話がないまま、学校へ入っていくと教室の席でアヤノがシクシクと泣いていた。


驚いた祐輝は「どうした?」と話すとけんせーは何食わぬ顔をして男子生徒とプロレスをして遊んでいた。




「なんでもないよ・・・」
「けんせーだろ・・・」
「・・・・・・」




祐輝はけんせーに話すべきかと考えたが、付き合っている事を隠している2人の事を祐輝が知っていればアヤノが話したと気づかれてしまう。


言いたいのに言えないもどかしさを必死に押し殺して授業を受けた。


呑気にクラスメイトと騒いでいるけんせーを無意識にも睨みつけていた。


その間もアヤノは下を向いているだけだった。



「いやあこれはヤバい・・・けんせーあいつ何してんだよ・・・知らないふりするしかないのかよ・・・」



祐輝は考えたが知らないふりをするならこのまま、アヤノとは一緒に帰ればいい。


寄り添う事しかできないが、アヤノの話しを聞く事ならできた。


それしかできなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

野球部の女の子

S.H.L
青春
中学に入り野球部に入ることを決意した美咲、それと同時に坊主になった。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

夏の決意

S.H.L
青春
主人公の遥(はるか)は高校3年生の女子バスケットボール部のキャプテン。部員たちとともに全国大会出場を目指して練習に励んでいたが、ある日、突然のアクシデントによりチームは崩壊の危機に瀕する。そんな中、遥は自らの決意を示すため、坊主頭になることを決意する。この決意はチームを再び一つにまとめるきっかけとなり、仲間たちとの絆を深め、成長していく青春ストーリー。

バッサリ〜由紀子の決意

S.H.L
青春
バレー部に入部した由紀子が自慢のロングヘアをバッサリ刈り上げる物語

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

処理中です...