上 下
115 / 140

第115話 アヤノの事情

しおりを挟む
日常生活を満喫している祐輝は部活もそれなりに過ごしていた。


もう野球ができなくなった祐輝だったが、自分なりの楽しみを見つけて乗り越えていた。


オンラインゲームで朝まで騒ぐ夜や部活後に仲間と牛丼を食べて騒ぐ夜も。


帰りの電車でアヤノと一緒になればぎこちない会話をしては家に帰って会話を振り返る事も楽しかった。


そんな祐輝の日常も順調に過ぎていって間もなく夏になるという時だった。


野球部の仲間達は夏大会に向けてピリピリとした空気が流れている。


ベンチに入る事ができない祐輝は仲間の練習を手伝うと帰りの準備をしていた。


すると校舎から校庭に繋がる渡り廊下からアヤノがグラウンドに顔を出していた。


驚いた表情のまま、道具を片付けているとアヤノが手を振っていた。



「まだ帰ってなかったの?」
「ちょっと課題があってねー。 もう終わる?」
「そうだねー。」



祐輝はその先の言葉が言えずにもどかしい気分になっていた。


「一緒に帰ろう」と何故言えないのか。


「頑張ってねー」と手を振りながら歩いていくアヤノの細い後ろ姿を見てため息をついている。


やがて練習を終えると仲間と騒ぎながら駅へ向かっていった。




「俺ら大人になったらこんな楽しい日々もう来ないんだろうなあー。」




仲間の1人がそう口にして歩いていた。


後ろで歩いている祐輝は暗い高校の帰り道をぼんやりと下を向いていた。


大人になったらと考えると祐輝は未来に何がしたいのかと考えていた。


野球と共にずっと一緒に生きていきたかった。


しかしそれができない今、自分には何ができるのか。


そう考えながら駅に向かって歩いているとけんせーが肩を組んできた。




「俺ら大人になったらなんか有名になってそうじゃね!?」
「お前はわいせつ罪で捕まって有名になってそう。」
「はははははー!!!! それお前な!!」




高笑いするけんせーを横目に未来の自分がどうなっているのかと考えていた。


ただ一つだけ思う事があった。


それはけんせー達の様な仲間と未来になっても一緒にいたいという事だった。




「まあお前らとはずっと関わっていきたいなあ。」
「無理だよ俺有名になってお前に会えなくなるからな!!」




呑気に話しているけんせーを見て少し笑うと駅に着いた。


いつもの様に駅に着くと牛丼屋で特盛を食べるとじゃんけんをして唐揚げを食べていた。


これはもはや日課だ。


しばらく駅前で騒いだ後に電車に乗る。


仲間と別れて新宿行きの電車に乗ろうとした時だった。


祐輝は崩れ落ちる様なものを目にしてしまった。


アヤノが男と一緒に電車に乗っていた。



「なんだって!?」



驚いた祐輝は愕然としていた。


いつもは祐輝と同じ車両に乗っているのに今日は隣の車両に乗った。


落ち着きのない祐輝はつり革を掴んでは席に座ってと繰り返して車内をウロウロとしていた。


しばらく電車に揺られてアヤノがいつも降りる駅に着くと祐輝は扉から顔を覗かせてアヤノを見ると更に驚いた。


アヤノは泣きながら1人で階段を登っていった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

野球部の女の子

S.H.L
青春
中学に入り野球部に入ることを決意した美咲、それと同時に坊主になった。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

♡蜜壺に指を滑り込ませて蜜をクチュクチュ♡

x頭金x
大衆娯楽
♡ちょっとHなショートショート♡年末まで毎日5本投稿中!!

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

夏の決意

S.H.L
青春
主人公の遥(はるか)は高校3年生の女子バスケットボール部のキャプテン。部員たちとともに全国大会出場を目指して練習に励んでいたが、ある日、突然のアクシデントによりチームは崩壊の危機に瀕する。そんな中、遥は自らの決意を示すため、坊主頭になることを決意する。この決意はチームを再び一つにまとめるきっかけとなり、仲間たちとの絆を深め、成長していく青春ストーリー。

バッサリ〜由紀子の決意

S.H.L
青春
バレー部に入部した由紀子が自慢のロングヘアをバッサリ刈り上げる物語

処理中です...