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第113話 電車で会うあの娘
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夏も終わり、次第に肌寒くなる季節は訪れた。
野球部は走り込みを始めている。
日が沈むのも早くなった。
暗い夜道を駅に向かっていつもの様に仲間と歩いては未来の話や女子の話しをして騒ぎながら帰っていた。
駅前の牛丼屋で特盛を食べては隣の唐揚げ屋で誰が奢るのかじゃんけんをしては唐揚げを食べる。
しかしそれでも家に帰ると親が作る食事が用意されていて、大量に食べてしまう。
過酷な練習を日頃からしているおかげでまるで太らない球児達は食欲を爆発させていた。
練習後に仲間と食べに行くラーメン屋に牛丼屋に唐揚げ屋。
そのどれもが幸せな日常で楽しみでもあった。
しかし祐輝にはもう一つ楽しみがあった。
仲間と騒いだ帰りの電車はいつも1人だ。
皆と帰る方向が逆だからだ。
1人で電車に揺られていると見かけるスタイルの良い女子生徒。
「またいる。 声かけるぞ。」
何度も見かけてきたが一度も声をかけられなかった。
今日こそはと大きく深呼吸をすると女子生徒の元へ向かった。
降りる駅も覚えてしまった祐輝は今なら話す時間があると駅を確認して近づいていった。
「あ、あのよ。」
おどおどしながら声をかけると女子生徒は読んでいた本を閉じて祐輝の顔を見ていた。
「よく会いますね」と女子生徒は微笑んでいた。
祐輝は「あ、ええ・・・」と言葉に詰まっていると女子生徒はクスクスと笑っていた。
「野球部ですよね?」と聞かれているのに祐輝は返答に困っていた。
「え、えっと・・・」
「ふふ。 なんか変ですね。 クラスは違いますけどよろしくです。 あ、名前はアヤノって言います。」
「お、俺は祐輝。」
アヤノはぎこちない祐輝を見て笑っていると最寄り駅に着いて「じゃあまた」と爽やかに降りていった。
呼吸を荒くしている祐輝は座席に腰掛けると「よく会いますねって・・・」と興奮していた。
自分を認識していたのかと嬉しい感情を抑えようとしていたが会話を上手くできずに混乱してしまった。
「いつも本読んでたのに・・・俺に気がついていたのかな・・・マジかよ・・・」
アヤノが何を考えていたのか。
自分が好意を持っている気持ちが気づかれていたのか。
気持ち悪いと思われてしまったか。
もしそうならあんな笑顔で「じゃあまた」なんて言うはずない。
祐輝は考えれば考えるほどわからなくなっていった。
「よく考えればミズキとは幼馴染だったからなあ。」
恋愛感情が芽生えるよりも前から共に育ってきたミズキに対して考える事はなかった。
一緒にいる事が当たり前で考えている事だって理解できた。
それが当たり前で高校生まできた祐輝はアヤノの言動や表情が理解できず、混乱していた。
もうすぐ17歳になる少年は電車に揺られながら頭を抱えているのだった。
野球部は走り込みを始めている。
日が沈むのも早くなった。
暗い夜道を駅に向かっていつもの様に仲間と歩いては未来の話や女子の話しをして騒ぎながら帰っていた。
駅前の牛丼屋で特盛を食べては隣の唐揚げ屋で誰が奢るのかじゃんけんをしては唐揚げを食べる。
しかしそれでも家に帰ると親が作る食事が用意されていて、大量に食べてしまう。
過酷な練習を日頃からしているおかげでまるで太らない球児達は食欲を爆発させていた。
練習後に仲間と食べに行くラーメン屋に牛丼屋に唐揚げ屋。
そのどれもが幸せな日常で楽しみでもあった。
しかし祐輝にはもう一つ楽しみがあった。
仲間と騒いだ帰りの電車はいつも1人だ。
皆と帰る方向が逆だからだ。
1人で電車に揺られていると見かけるスタイルの良い女子生徒。
「またいる。 声かけるぞ。」
何度も見かけてきたが一度も声をかけられなかった。
今日こそはと大きく深呼吸をすると女子生徒の元へ向かった。
降りる駅も覚えてしまった祐輝は今なら話す時間があると駅を確認して近づいていった。
「あ、あのよ。」
おどおどしながら声をかけると女子生徒は読んでいた本を閉じて祐輝の顔を見ていた。
「よく会いますね」と女子生徒は微笑んでいた。
祐輝は「あ、ええ・・・」と言葉に詰まっていると女子生徒はクスクスと笑っていた。
「野球部ですよね?」と聞かれているのに祐輝は返答に困っていた。
「え、えっと・・・」
「ふふ。 なんか変ですね。 クラスは違いますけどよろしくです。 あ、名前はアヤノって言います。」
「お、俺は祐輝。」
アヤノはぎこちない祐輝を見て笑っていると最寄り駅に着いて「じゃあまた」と爽やかに降りていった。
呼吸を荒くしている祐輝は座席に腰掛けると「よく会いますねって・・・」と興奮していた。
自分を認識していたのかと嬉しい感情を抑えようとしていたが会話を上手くできずに混乱してしまった。
「いつも本読んでたのに・・・俺に気がついていたのかな・・・マジかよ・・・」
アヤノが何を考えていたのか。
自分が好意を持っている気持ちが気づかれていたのか。
気持ち悪いと思われてしまったか。
もしそうならあんな笑顔で「じゃあまた」なんて言うはずない。
祐輝は考えれば考えるほどわからなくなっていった。
「よく考えればミズキとは幼馴染だったからなあ。」
恋愛感情が芽生えるよりも前から共に育ってきたミズキに対して考える事はなかった。
一緒にいる事が当たり前で考えている事だって理解できた。
それが当たり前で高校生まできた祐輝はアヤノの言動や表情が理解できず、混乱していた。
もうすぐ17歳になる少年は電車に揺られながら頭を抱えているのだった。
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