青春聖戦 24年の思い出

くらまゆうき

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第111話 定番トーク

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大浴場へ飛び込んで疲れを癒やす仲間達は互いの裸を見て笑っていた。


日焼けをしてこんがりと黒くなっている肌は脱ぐと実にいびつで滑稽だった。


上半身は腕と顔だけ日焼けして腹部や背中は真っ白だ。


下半身も同様に真っ白で腕と顔だけ黒く日焼けしている。


全員が同じ様に日焼けしているのにお互いに「気持ち悪いなあ」と笑い合ってはお湯を顔にかけていた。


まるで温水プールの様になっている大浴場は球児達の宴会場だ。


練習の疲れが吹き飛んだかの様に大はしゃぎしている。


すると監督が入ってきた。


大浴場は一瞬にして静まり返り、老人の集まる銭湯の様になっていた。


無言のまま、風呂に浸かる球児達に混ざって監督も気持ちよさそうにしている。


けんせーがそっと風呂から出て逃げていくと大熊達もそれに続いた。


祐輝は体を洗っていた事で逃げ遅れた。


気がつけば監督と祐輝だけになっていた。




「お、おお!? あいつら・・・」
「祐輝か?」
「は、はい!? あ、熱いな・・・そろそろ出ようかな・・・」
「まあ入ってけよ。」




監督に手招きされて気まずそうに風呂に入ると沈黙が続いた。


気まずさと暑さで顔がどんどんと赤くなっていく。


すると監督は「千野が好きか?」と尋ねてきた。




「もちろんです。」
「あいつはお前に似ていたよ。 悪さしては誰かを助けたがる性格でな。」
「へえ。 え? 俺悪さしてません!!」




監督は高笑いすると「何十年も子供の顔を見てきた」と自慢げにしている。


祐輝が普通の高校生と違う雰囲気を出しているのは監督にはよくわかった。


「不良の顔をしているな」と監督は祐輝の日焼けした顔を見ては頭をガシガシとなでていた。




「嫌いじゃないぞお。 男の子はそれぐらいじゃないとな。」
「そうなんですか?」
「先生がこんな事言っちゃダメかもしれないけどな。 男の子は喧嘩しているぐらい不器用な方がいいさ。」





風呂に浸かる監督の太った体を見ている祐輝は男について考えていた。


今までは気ままに喧嘩をしていたが、監督は男ならそれぐらいがいいと笑っている。


千野も同じく暴れる事が好きな男だった。




「あいつは入学してきて直ぐに3年生をぶちのめしたなあ。」
「へえ。 すげえなあ。」
「男の子は時に心でわかっていても体が逆に動きたがる事もある。 そうなったら体に従えばいいさ!!」




高笑いをする監督を見て祐輝も思わず笑ってしまった。


「だが退学になるなよ?」とまたも頭をガシガシとなでていた。


本来なら父親に教わるはずの美学だったのかもしれない。


だが中学時代に続いて高校時代も祐輝の人間性を築くのは監督だった。




「増田監督。」
「おお?」
「俺監督が親父に見えてきました。」




増田監督は不思議そうにしていたが祐輝の顔をしばらく見ると何かわかったかの様に高笑いをした。


「構わねえさ」と頭をガシガシとなでると風呂から出ていった。


祐輝と監督との出会いはこれからの祐輝の人間性に影響を与えるのだった。
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