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第101話 もう1人の気になるあの子

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ミクに連れられて連絡先を交換したはいいが、要件が済むと走り去っていった事に不信感を覚えながら1人で仲間と帰るはずだった道を歩いていた。


これから3年間、毎日歩く帰り道だ。


仲間と歩くはずの道も1人だと静かでどこか寂しかった。


やがて最寄り駅に着くと電車を待った。


何気なく右を向いてみるとそこにはスタイルがとても良い、女子が同じ制服を着て立っていた。


入学して直ぐに見かけた彼女は同じ1年生だ。




(前もいたな。)




最寄り駅は小さな駅だった。


新宿方面と清瀬という街への方面に向かう列車しかなかった。


けんせーを含むほとんどの生徒が清瀬方面の電車に乗るために、駅に着くとそこで仲間と別れ新宿まで帰った。


新宿方面の電車では珍しい同じ制服を着る生徒という事や、スタイルが良く綺麗な雰囲気を出しているという事もあり、彼女は祐輝にとって印象的だった。


何か本を読みながら電車に乗る彼女を思わず凝視しているとふと顔を上げた彼女は祐輝と目が合った。


少し離れた距離にいるお互いは会話をする事はなかった。


だが少しだけ微笑んで会釈をする彼女を見て祐輝も会釈したが顔は強張っていた。




(こういう時はどんな表情するんだ・・・キモいとか思われたか・・・)




表情は硬いままだったが心の内で色々と考えていると彼女は新宿の手前で降りていった。


降りる時に彼女は祐輝を見なかった。


すると祐輝は「キモいか」と小声でつぶやいた。


思春期の男子ともなると女子の仕草に敏感なものだ。


何より、自分自身がイヤらしい事を考えてしまうものだから余計に女子の仕草が気になってしまう。


実際の所スタイルの良い彼女は何も気にしていなかっただろう。


だが、異性が気にある祐輝は家に帰っても鏡で自分の顔を見つめていた。





「どんな表情するべきだったんだ。 笑顔で会釈すれば、降りる時も会釈してくれたのかな。」





1人で鏡に向かってぶつぶつと話す祐輝は母の真美が冷ややかな視線で見ているが本人は気づいてもいない。


そして出された夕飯を大量に食べるとテレビゲームを始めた。


思春期の高校生がやるとは思えない歴史のゲームを真剣にプレイしている。


するとけんせーからメールが来ていた。




「今度みんなでFPSやろうぜ!」
「なにそれ?」
「戦争ゲームみたいなやつ!」
「おけ!」




今では世界的にプレイヤーが多いFPSゲームだが、高校生の彼らにはまだ新鮮なゲームだった。


祐輝は新しいゲームを買うために真美から貰っていたお小遣いを確認していた。


基本的に野球ばかりの人生だった祐輝はお年玉やお小遣いがたくさん貯まっていた。




「面白そうだなあ。」




携帯で調べると激しい銃撃戦を自分の操作で戦うゲームだった。


ボイスチャットで友達とも会話をしながらプレイできるこのゲームはまるで野球の様なチームプレイだ。


戦略を立てたり攻撃のタイミングを合わせたりと動画を見れば見るほど早くプレイしたくなった。


けんせーからのメールを更に見ると「俺についてこいな!」と偉そうな事を言っていた。




「違う俺が援護してやる!」
「イキるな!」
「それはお前だろ!」




部活に恋愛、そしてみんなでゲーム。


二度と帰らない青春はこれからだ。
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