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第93話 入部希望者
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入学式を終えた祐輝はクラスに向かった。
大熊や京介、鉄平とは異なるクラスになったが坊主頭の少年が数人席についていた。
自己紹介を始めると希望する部活を述べた。
クラスの割り振りと自己紹介をして担任から説明を受けるとその日は授業をする事なく、終わったが野球部に入部する者達は早速部活が行われた。
席を立って部室へ向かおうとしていると同じクラスの坊主頭の少年が話しかけてきた。
「よろしくなー! 俺はけんせー!」
「けんせい?」
「違う。 けんせーだよ。」
変わった名前だが彼の名前には「ー」がついていた。
子供っぽさが抜けないけんせーはクラスの人気者になれそうな社交性で他にも席に座る坊主頭の少年を呼んできた。
「みんなよろしくう!!」と楽しげに話している。
祐輝はこの時ある感情に苦しんでいた。
(考えてみればチームメイトなんて今までいなかったなあ・・・一緒に野球やりたい・・・)
小学校は言うまでもなくナインズ時代もチームメイトといえるほどの仲間はいなかった。
ここでは既に大熊、京介、鉄平、けんせーに同じクラスの少年が5人はいる。
祐輝にとって初めての野球ができる人数のチームメイトだった。
だがしかし祐輝は既に投げる事はできなかった。
例え投げられたとしても東京選抜時代の快速球は投げられない。
それを考えると複雑な気分になり、虚しさを感じていた。
目の前で目を輝かせて話しているけんせーはこれからの野球人生を存分に新たな仲間と生きようとしていた。
祐輝の大きな体を見たけんせーは「ピッチャーでしょ?」とはしゃぎながら聞いてきた。
「肩怪我して投げられない。」
「マジか!? 治療すれば余裕っしょ! 絶対エースになるやつやん!!」
「いやいや。 みんなの手伝いするよ。」
「マネージャーのガタイじゃないって!!」
けんせーはまだ精神年齢も幼く、言いたい事はなんでも遠慮せずに話していた。
祐輝が歩んできた16年とけんせーの16年はあまりにもかけ離れていた。
だがどこか憎めないのもけんせーの魅力なのか。
祐輝は席を立つと教室を出た。
すると学ランのボタンを2つだけ外している坊主頭の少年が立っていた。
「俺は2年の富岡だ。 お前らついてこい。」
ぽっちゃりした体つきは高校生とは思えない。
まるで中年男性の様なだらしない体を左右にフラフラとさせながらも偉そうに祐輝達に顎をぷいっと向けて歩いていた。
隣を見るとけんせーが富田の歩き方を真似してバカにしていた。
祐輝は吹き出して笑った。
すると富田が顔を強張らせて「何笑ってんの?」と威圧してきたが祐輝は表情一つ変える事なくじっと見ていた。
「何笑ってんのって聞いてんだよ!!」
「先輩には関係ありませんよ。 それとも笑われる要素があると自覚して苛立ちを覚えましたか?」
「お前1年のくせに調子乗るなよ?」
「3年生にチクりますか?」
それも当然かもしれないが新宿という地域でもっと危険な人間を見てきた祐輝からすれば富田なんて男はただの小男でしかなかった。
例え喧嘩になっても万に一つも負けないという自信があり、平然としていた。
祐輝の静かなる威圧感に臆したのか富田は部室へと歩き始めた。
「祐輝はヤンキー?」
「さあね。」
「地元新宿だっけ?」
「そうだよ。」
「ヤンキーやん!」
最初の友人はけんせーのようだ。
そして祐輝の人生でも最高の時間といえる高校生活が今始まろうとしていた。
大熊や京介、鉄平とは異なるクラスになったが坊主頭の少年が数人席についていた。
自己紹介を始めると希望する部活を述べた。
クラスの割り振りと自己紹介をして担任から説明を受けるとその日は授業をする事なく、終わったが野球部に入部する者達は早速部活が行われた。
席を立って部室へ向かおうとしていると同じクラスの坊主頭の少年が話しかけてきた。
「よろしくなー! 俺はけんせー!」
「けんせい?」
「違う。 けんせーだよ。」
変わった名前だが彼の名前には「ー」がついていた。
子供っぽさが抜けないけんせーはクラスの人気者になれそうな社交性で他にも席に座る坊主頭の少年を呼んできた。
「みんなよろしくう!!」と楽しげに話している。
祐輝はこの時ある感情に苦しんでいた。
(考えてみればチームメイトなんて今までいなかったなあ・・・一緒に野球やりたい・・・)
小学校は言うまでもなくナインズ時代もチームメイトといえるほどの仲間はいなかった。
ここでは既に大熊、京介、鉄平、けんせーに同じクラスの少年が5人はいる。
祐輝にとって初めての野球ができる人数のチームメイトだった。
だがしかし祐輝は既に投げる事はできなかった。
例え投げられたとしても東京選抜時代の快速球は投げられない。
それを考えると複雑な気分になり、虚しさを感じていた。
目の前で目を輝かせて話しているけんせーはこれからの野球人生を存分に新たな仲間と生きようとしていた。
祐輝の大きな体を見たけんせーは「ピッチャーでしょ?」とはしゃぎながら聞いてきた。
「肩怪我して投げられない。」
「マジか!? 治療すれば余裕っしょ! 絶対エースになるやつやん!!」
「いやいや。 みんなの手伝いするよ。」
「マネージャーのガタイじゃないって!!」
けんせーはまだ精神年齢も幼く、言いたい事はなんでも遠慮せずに話していた。
祐輝が歩んできた16年とけんせーの16年はあまりにもかけ離れていた。
だがどこか憎めないのもけんせーの魅力なのか。
祐輝は席を立つと教室を出た。
すると学ランのボタンを2つだけ外している坊主頭の少年が立っていた。
「俺は2年の富岡だ。 お前らついてこい。」
ぽっちゃりした体つきは高校生とは思えない。
まるで中年男性の様なだらしない体を左右にフラフラとさせながらも偉そうに祐輝達に顎をぷいっと向けて歩いていた。
隣を見るとけんせーが富田の歩き方を真似してバカにしていた。
祐輝は吹き出して笑った。
すると富田が顔を強張らせて「何笑ってんの?」と威圧してきたが祐輝は表情一つ変える事なくじっと見ていた。
「何笑ってんのって聞いてんだよ!!」
「先輩には関係ありませんよ。 それとも笑われる要素があると自覚して苛立ちを覚えましたか?」
「お前1年のくせに調子乗るなよ?」
「3年生にチクりますか?」
それも当然かもしれないが新宿という地域でもっと危険な人間を見てきた祐輝からすれば富田なんて男はただの小男でしかなかった。
例え喧嘩になっても万に一つも負けないという自信があり、平然としていた。
祐輝の静かなる威圧感に臆したのか富田は部室へと歩き始めた。
「祐輝はヤンキー?」
「さあね。」
「地元新宿だっけ?」
「そうだよ。」
「ヤンキーやん!」
最初の友人はけんせーのようだ。
そして祐輝の人生でも最高の時間といえる高校生活が今始まろうとしていた。
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