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第77話 球児達の成長

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守備を難なく切り抜けた祐輝と越田チームは攻撃に入った。


桜木から1点取れた前回は素晴らしかったと越田は自慢げに話している。


今回も同様に祐輝と越田で1点を取るつもりだった。



「今回もツーストライクから振るなよ。」
「わかった。 また桜木から打ってやろうぜ!」



越田とグータッチをして先頭打者の攻撃を見守っている。


独特のフォームから投げられたストレートに先頭打者は手が出ない。


バックネットの速度計には142キロと表示が出てまたしても球場がどよめいた。


祐輝に並ぶ快速を見せつけた桜木は何とも涼しい表情をしていた。


その表情はまるで「祐輝が出せるなら俺だって。」という様な敵意すら感じる様な表情だった。


2球目もストレートを投げるが先頭打者は何とかバットに当てるのがやっとだ。


そして3球目。


桜木はやはりフォークを投げた。


バッターは空振り三振に倒れた。


そして2番打者もあっという間にツーストライクに追い込まれ自慢のフォークで三振を取った。


3番打者には祐輝が立った。


前回同様にストレートには手を出さずにツーストライク。


桜木の自慢のフォークはキレはいいが、必ずストライクゾーンから外れるという弱点があった。


スイングさえしなければフォークは危険ではなかった。


そして独特のフォームから投げられる3球目。


真ん中高めに浮いたボールを見た祐輝はストライクゾーンから外れたと思いスイングする気すら起きなかった。


しかしフワッと浮いたボールはそこからすとんっと落ちてど真ん中に決まった。



「ストライクッ! バッターアウトッ!」



祐輝は唖然としてベンチへ戻ってきた。


驚きが隠せないベンチ陣の中で越田だけは真剣な表情で黙り込んでいた。


祐輝は越田に「悪い。」と言うとキャッチーレガースを付け始めた越田は「成長したのは俺達だけじゃねえな。」と小さい声で話すと守備へついた。


桜木は自慢のフォークがストライクゾーンから外れる弱点を克服してコントロールできる様になってきた。


東京中から集まったのは才能ある球児達はお互いに強敵と出会い成長してきていた。


イニングは2回になり4番打者には桜木と同じチームから来たスラッガーの春川だ。


彼もまた桜木同様に高校から注目されているスラッガーであり、越田のライバルでもあった。


東京都大会でのホームラン数は越田が15本で春川が14本だ。


祐輝はゆったりとしたフォームから投げたボールは何と初球からフォークだった。


しかし春川は手を出さなかった。


2球目もフォークを投げたがやはり春川は手を出さなかった。


ノーストライクツーボールとなったカウントで越田が出したサインはインコース低めのストレートだ。


3球目も投げるためにゆったりと投球動作に入った。


投げられた140キロの快速を春川はバットに当てたがファール。


そして4球目。


越田からのサインはまたしてもフォークだった。


速いストレートを見せてからのフォークボールは効果的だ。


しかし春川はバットを振らずにボールとなった。


カウントはワンストライクスリーボールだ。


祐輝と越田との間でのサインはストレートでカウントを取る事だった。


そして5球目はストレートが決まりフルカウントだ。


6球目のサインはカーブだった。


祐輝はインコースからアウトコース低めに決まる素晴らしいカーブを投げたが春川はバットに当ててファールにした。


そして7球目はストレートだ。


落ち着いた表情で投げ込んだ140キロ台のストレートはアウトコース低めに決まった。



「ストライクッバッターアウトッ!」



越田に次ぐスラッガー春川を三振に取った祐輝に対してどよめきが消えなかった。


今まで都大会にすら出場しなかった弱小チームのエースがまさか春川を三振に取るなんて。


しかも速度計には145キロと表示が出た。


ここ数年の中学生で最速を記録した。


だが春川を三振に取って一番嬉しそうだったのは越田だった。



「お前は必ず日本一のエースになるぞ祐輝。」
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