76 / 140
第76話 桜木との再戦
しおりを挟む
2週間がすぎた週末。
祐輝と越田は名門高校のグラウンドで東京選抜の二次選考を行っていた。
名門高校というだけあって高校野球の関係者も見ている中で試合を行う。
一次選考で半数が脱落して今日集まったのは100名ほどだ。
この二次選考でほとんどの選手が脱落する。
ワンミスが命取りになる大切な選考会だった。
幸運な事に祐輝と越田は今日も同じチームとなり桜木は相手チームだ。
最初に守りについたのは祐輝達だ。
いつも通りのゆったりとしたフォームで投球練習をしていると何球か投げた後に越田がマウンドに走って来た。
「桜木は3番打者だ。 あいつが打席立つまでフォークは封印しようぜ。」
「桜木にフォーク投げるの?」
「そうだよ。 挑発の意味も込めてフォークで桜木を三振に取ろうぜ。」
悪そうにニヤリと笑った越田は戻っていく。
祐輝は越田の背中を見つめながら「悪いやつだな。」と呟きながらも何処か嬉しそうに笑っていた。
そして先頭打者が打席に入ると祐輝はゆったりとしたフォームから渾身のストレートを投げ込んだ。
バックネットにある速度計にはなんと143キロと表示が出た。
どよめくグラウンドで高校野球関係者は祐輝をじっと見つめている。
この時誰もが思ったはずだ。
是非うちの高校に来てほしいと。
そして2球目はカーブでツーストライク。
3球目はバッターの顔元に140キロ台のストレートを投げるとあまりの速さにたまらずバットを振ってしまい三球三振でワンナウト。
2番打者にはカーブから入った。
顔元から軌道を変えて真ん中低めに入るカーブに手が出ない。
東京中から集まった球児達でも祐輝のピッチングは通用していた。
しかしその裏には越田の的確なリードがあった。
高校野球関係者は祐輝だけではなく越田の事も当然チェックしていた。
2番打者をあっさりと内野ゴロに打ち取ると打席には桜木が立った。
越田はマスクを外して祐輝の顔を見ながらニヤニヤとしていた。
「あいつ楽しそうだ。 でも不思議と俺も緊張はない。」
東京選抜のメンバー入りがかかる大切な選考会だと言うのに祐輝と越田は初めて投げるフォークで桜木を三振に取れるのかとウキウキしていた。
そして祐輝は初球は渾身のストレートで入った。
中学3年生で140なんて快速が出れば怪童の仲間入り。
地道な努力は既に祐輝を怪童へと進化させていた。
140キロ台のストレートに手が出ない桜木は祐輝を睨んでいた。
しかし臆する事なく2球目もストレート。
桜木はバットを振ったがやはり振り遅れて当たらない。
そして3球目。
越田のサインはフォークだった。
しっかりと頷いた祐輝は2本の指でボールをしっかりと挟むと何処へ飛んで行っても構うもんかという覚悟で思いっきり腕を振った。
「ストライクッ! バッターアウト!」
桜木の手元ですとんっと落ちたフォークは見事に桜木のバットの空を切った。
越田は何食わぬ顔で桜木を見て鼻で笑うとベンチに戻り祐輝とハイタッチした。
「あれは俺も打てねえよ。」と越田が少し引きつった表情で話していた。
「大丈夫。 いつかまたお前と対戦する時は投げないよ。 どうせお前以外誰も捕れないから。」
このフォークボールは東京選抜のみで使える秘密兵器だ。
バッターが打ちづらいという事はキャッチーも捕球する事が難しい。
天才キャッチー越田だから難なく捕れるがナインズの健太では間違いなく捕れなかった。
この選考会が終わり、いつかまた敵として再戦する時には投げられない。
幻の決め球を武器に祐輝と越田は東京選抜入りを目指す。
祐輝と越田は名門高校のグラウンドで東京選抜の二次選考を行っていた。
名門高校というだけあって高校野球の関係者も見ている中で試合を行う。
一次選考で半数が脱落して今日集まったのは100名ほどだ。
この二次選考でほとんどの選手が脱落する。
ワンミスが命取りになる大切な選考会だった。
幸運な事に祐輝と越田は今日も同じチームとなり桜木は相手チームだ。
最初に守りについたのは祐輝達だ。
いつも通りのゆったりとしたフォームで投球練習をしていると何球か投げた後に越田がマウンドに走って来た。
「桜木は3番打者だ。 あいつが打席立つまでフォークは封印しようぜ。」
「桜木にフォーク投げるの?」
「そうだよ。 挑発の意味も込めてフォークで桜木を三振に取ろうぜ。」
悪そうにニヤリと笑った越田は戻っていく。
祐輝は越田の背中を見つめながら「悪いやつだな。」と呟きながらも何処か嬉しそうに笑っていた。
そして先頭打者が打席に入ると祐輝はゆったりとしたフォームから渾身のストレートを投げ込んだ。
バックネットにある速度計にはなんと143キロと表示が出た。
どよめくグラウンドで高校野球関係者は祐輝をじっと見つめている。
この時誰もが思ったはずだ。
是非うちの高校に来てほしいと。
そして2球目はカーブでツーストライク。
3球目はバッターの顔元に140キロ台のストレートを投げるとあまりの速さにたまらずバットを振ってしまい三球三振でワンナウト。
2番打者にはカーブから入った。
顔元から軌道を変えて真ん中低めに入るカーブに手が出ない。
東京中から集まった球児達でも祐輝のピッチングは通用していた。
しかしその裏には越田の的確なリードがあった。
高校野球関係者は祐輝だけではなく越田の事も当然チェックしていた。
2番打者をあっさりと内野ゴロに打ち取ると打席には桜木が立った。
越田はマスクを外して祐輝の顔を見ながらニヤニヤとしていた。
「あいつ楽しそうだ。 でも不思議と俺も緊張はない。」
東京選抜のメンバー入りがかかる大切な選考会だと言うのに祐輝と越田は初めて投げるフォークで桜木を三振に取れるのかとウキウキしていた。
そして祐輝は初球は渾身のストレートで入った。
中学3年生で140なんて快速が出れば怪童の仲間入り。
地道な努力は既に祐輝を怪童へと進化させていた。
140キロ台のストレートに手が出ない桜木は祐輝を睨んでいた。
しかし臆する事なく2球目もストレート。
桜木はバットを振ったがやはり振り遅れて当たらない。
そして3球目。
越田のサインはフォークだった。
しっかりと頷いた祐輝は2本の指でボールをしっかりと挟むと何処へ飛んで行っても構うもんかという覚悟で思いっきり腕を振った。
「ストライクッ! バッターアウト!」
桜木の手元ですとんっと落ちたフォークは見事に桜木のバットの空を切った。
越田は何食わぬ顔で桜木を見て鼻で笑うとベンチに戻り祐輝とハイタッチした。
「あれは俺も打てねえよ。」と越田が少し引きつった表情で話していた。
「大丈夫。 いつかまたお前と対戦する時は投げないよ。 どうせお前以外誰も捕れないから。」
このフォークボールは東京選抜のみで使える秘密兵器だ。
バッターが打ちづらいという事はキャッチーも捕球する事が難しい。
天才キャッチー越田だから難なく捕れるがナインズの健太では間違いなく捕れなかった。
この選考会が終わり、いつかまた敵として再戦する時には投げられない。
幻の決め球を武器に祐輝と越田は東京選抜入りを目指す。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~
kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。
【Vtuberさん向け】1人用フリー台本置き場《ネタ系/5分以内》
小熊井つん
大衆娯楽
Vtuberさん向けフリー台本置き場です
◆使用報告等不要ですのでどなたでもご自由にどうぞ
◆コメントで利用報告していただけた場合は聞きに行きます!
◆クレジット表記は任意です
※クレジット表記しない場合はフリー台本であることを明記してください
【ご利用にあたっての注意事項】
⭕️OK
・収益化済みのチャンネルまたは配信での使用
※ファンボックスや有料会員限定配信等『金銭の支払いをしないと視聴できないコンテンツ』での使用は不可
✖️禁止事項
・二次配布
・自作発言
・大幅なセリフ改変
・こちらの台本を使用したボイスデータの販売
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる